4.おっさんの日常
オリオンがうちに来て1ヶ月。
もうすっかり、うちの家族の一員となり、犬ライフを満喫している。
相変わらずオリオンの声は私にしか聞こえないし、家族はオリオンの中身がおっさんだなんて、知る由もない。
「あれお母さん、お父さんは?」
「あれ?さっきまでそこに座って野球見てたけど。自分の部屋で見てるんじゃない?」
「ラッキー。見たいテレビあるんだよねー」
『おい変えるなよ?』
「え、」
『野球見てっから』
「えードラマ見たいのに」
「どうしたのあさひ?変えればいいじゃない」
「う、うん」
チャンネルを変える。
「ワンワンワン」『変えるなってば』
「あら、おっくんどうしたの?何怒ってるの」
チャンネルを戻す。
「あ、大人しくなったわ。テレビじーっと見て、野球好きなのかしら。あさひ、おっくんにテレビ譲ってあげなさい」
母はオリオンに甘い。
娘より可愛がっている気がする。
中身おっさんだぞ。
◇◇◇
「あれ、お母さん、俺の競馬新聞は?」
「えー知らないわよ。競馬新聞なんてお父さんしか読まないんだから、誰も持って行かないでしょ」
「おかしいなー。確かここに置いたはずなんだが。あ、あさひ、新聞知らない?」
「新聞なら、あそこでオリオンが読んでるけど」
「え、ほんとだ。新聞広げて上にお座りしてる。オリオン、新聞返しておくれよ」
『この馬が来るな』
「オリオンこの馬が気になるみたい」
「えーその馬はしょっちゅう最下位になるし、人気もないんだぞ。買っても損するだけだ。さぁオリオン新聞から降りなさい」
一向に退こうとしないオリオン。
「もうわかったわかった。その馬買うから」
と父が言うと、やっと新聞から降りたオリオン。
そして、結果は
「嘘だろ?オリオンが推してた馬が一着でゴールしたぞ!大儲けだ」
「すごいじゃん、なんで分かったの?」
『動物の感かな。前世では全然当てられなかったがな』
父はオリオンに、高級ドッグフードをご馳走してました。
しかし、オリオンの予想が的中したのは、それっきりだった。
◇◇◇
「オリオーン、たまには私とお風呂入ろっかー」
「や、やめといた方がいいよお姉ちゃん」
「なんでよ。そういえばあさひ、最初は自分がお風呂入るついでにオリオン洗ってたのに、最近別に洗ってるのね」
「あーうん、裸で洗ってると寒いしね」
おっさんにJKの裸を見せるわけにはいかない。
「そう?じゃあ一緒に寝よーおオリオン」
「やーそれもやめた方が」
「なんでよ」
「いびきうるさいし」
これはほんとう。
「んーつまんないのー」
とオリオンを撫で回すお姉ちゃん。
オリオンもお腹見せちゃってる。
「じゃあおやすみオリオン」
と部屋を出ていく姉にちゃっかり着いていこうとするおっさんをがっしり捕まえておいた。
舌打ちが聞こえた気がした。




