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22.ハーレム勇者の苦悩。女は面倒だね

 「屋敷にいる女の子達は、どうして誘惑してくるんですか?」

勇者ジュンは、怪訝な顔で尋ねる。

 「だから枕営業だよ。勇者ビジネスは、勇者が町を去ったら成り立たないだろ。屋敷の女の子達は、お前を繋ぎとめるために集めたアイドルの卵だな。お前を誘惑できたら、舞台のスポンサーになって主役をやらせてやるという約束でもあるんじゃないのか?」

 ジュンの顔は曇る。

 「お前は真面目な転生者だよ。転生者はニートか?無気力で働かない奴が多い。働かないだけならいいが、『働いたら負け』とか滅茶苦茶な嘘を教えるだろ」


 ジュンは、「働いたら負け」と日本語で書かれたジャージをフリージアで渡されたのを思い出す。

 「嘘とわかった上で、ニートの相手をしているんですか?」

 「転生者は、女神フリージアが連れてきたんだ。理由はわからないけどな。騙されている奴もいるだろうが、気づいている奴も多いさ。気づいて転生者を利用しようとしているのが、市議会議長殿だな」

 「この町も出て行った方がいいんでしょうか?」

 「お前、行くあてもないだろ。だったら、どこに行っても同じだよ。この町で勇者をやっていればいいんじゃないのか?」

 こうして勇者ジュンは、観光勇者としてファンザから数キロ離れた大きな壁に囲まれた豪邸で勇者として過ごすことになった。そして、月に1、2回開かれる武道大会には優勝者としてヤラセの大会に出た。優勝賞金は500万ソフィアだが、上手くジュンに負ければ1千万ソフィアをロベルトが渡した。


 武道大会には傭兵団からも腕利きを出して、強そうな挑戦者が決勝に上がってこないように細工をしていた。強いフリーの冒険者が参加すると、ロベルトが高給で傭兵団に誘ったり、難癖をつけてファンザから追放していた。

 「また、ヤラセの武道大会か・・・」

 ジュンは憂鬱な気持ちになる。

 

 その頃、ジュンのファンザの豪邸ほど豪華ではない宿屋の一室に、悠とルベリア、サルト、マーレはいた。

 「悠にゃんが可愛い女の子とデートして集めてきた情報を教えて欲しいにゃん」

 「悪意のある言い方をやめてもらえませんか?」

 3人の女性陣の悠を見る目はシベリアに吹くブリザードより冷たい永久凍土である。

 「勇者のことはよくわかりませんでした。ただ、商業ギルドのランクを上げてきたので情報は集めやすくなると思います」

 「大賢者様(笑)が、黒髪の少女とデートをしていた時に、教会に行ってきたぴょん。勇者ジュンは、月に1、2回武道大会に現れて優勝していくぴょん。住んでいるのはファンザから離れた豪邸ぴょん。そこにハーレムを作っているぴょん」

 「悠ぴょんが、黒髪の少女に本物の宝石を貢ごうとしている時に町で集めた情報によると勇者が住んでいるのはファンザの市議会議長ロベルトの別荘だぴょん。あと、武道大会は明後日、開かれるから、黒髪の少女にいい所をみせたいなら参加するといいぴょん。悠君」

 「どうしたの悠君?」

 サルトに続いて、ルベリアもルーリーの真似をして悠君呼びである。

 「悠君って、呼んだ方が嬉しいの?」

 マーレが悠の顔を覗き込む。一瞬、顔を赤くした悠に3人の女性は口をそろえる。

 「最低だにゃん(ぴょん)」

 「ファンザから離れているなら、勇者のハーレムを直接、攻撃してもいいんですが、武道大会に出て様子を見てみますか」

 「それがいいにゃ、悠君が大好きな、あの子もきっと喜んでくれるにゃん」

 「しつこいなあ。明日、4人で武道大会の参加申し込みに行きましょう。出場するのは私だけでいいです」

 「4人で一緒に行動するぴょん?遠慮しなくても、あの子とデートしてきてもいいぴょん」

 「ルーリーとは過ごしませんから」

 名前を言ってから、悠はしまったと後悔するが、3人は鼻で笑う。

 「ふーん、ルーリーという名前だにゃ、可愛い名前だにゃん。ルーリー。」

 

 「今後は、ずっと4人で移動します。解散」

 悠が投げやりに告げると、3人は悠のベッドに入る。

 「なんで、ベッドに入っているんですか?」

 「悠にゃんが4人で一緒と言ったから、一緒に寝るにゃ」

 「それとも、ルーリー以外の女の子はベッドに入れないぴょん?」

 「転移魔法」

 悠は3人を彼女達の3人部屋に転移させた。


 翌朝、まだ不機嫌そうな3人と一緒に町の中心部にある闘技場に行く。

 「誰でも参加できるぜ」

 受付のマッチョな男がそう言ったので、悠の名前で参加登録をして参加証を貰った。

 今日はやることがない。ファンザを流れる運河は、ゴンドラで観光が出来る。

 ルーリーとゴンドラに乗りたかったなあと3人を連れて、ゴンドラを借りに行くと、

 「ルーリーと一緒に乗れなくて残念だったにゃ?」

 悠は、ルベリアの目を見ずに、案内人を頼む。女性でも男性でもどちらでもゴンドラをこぐことは出来るという。

 「乗り合いのゴンドラなら1人5千ソフィア。貸切なら4人乗りなら1日10万ソフィアだ」

 悠は10万ソフィアを払う。ファンザは、運河を中心に観光名所が作られている。

 案内人に、一番、高いレストランを聞くと、ゴンドラを止めてもらいルベリア達と入っていく。

 「お客様、当店は冒険者衣装の入店はお断りしておりまして」

 入り口で入店を拒否されるが、悠達のミスリル製の冒険者衣装に目をやると、

 「個室のVIPルームでしたら、そのままの格好でご利用できますが」

 「では、個室でお願いします」

 豪華な内装の個室に通されると思いきや、和室だった。しかも掘り炬燵である。

 「居酒屋のチェーン店じゃん・・・」

 個室内には、掛け軸のかわりに、地球の萌えアニメ風の美少女のポスターや美少女フィギュアが飾られている。悠が、コース料理を4人分頼むと、刺身が出た。

 悠が青ざめるが、刺身を運んできた着物の店員が説明する。

 「川魚ではなく、マグロや鯛の刺身でございます。転生者の方は刺身を見ると驚かれる方が多いので・・・」

 「ファンザは海が近いんですか?」

 「いえ、魔法使いが氷魔法で冷やしながら運んできた超高級魚でございます」

 「これ食べても大丈夫かにゃ?」

 ルベリア達は不安そうな顔をする。

 「生食文化がなければ無理に食べることはないと思います。お腹を壊しても万能薬で治るとは思いますが・・・」

 おそるおそるルベリア達がフォークで刺身を醤油につけて食べる。

 「変わった味にゃ」

 「レバ刺しセットでございます」

 「焼いてください」

 「焼くとただのレバー料理になりますが・・・」

 「ただのレバー料理にしてください。危険なので焼いてください」

  その次は、メインディッシュに河豚鍋を持ってきたが4本の解毒薬がついてきた。悠は、ため息をつくと無言で河豚鍋に手をかざす。

 「完全解毒魔法」

 「普通の魚の鍋料理になりましたから食べても安全ですよ」

 「さっぱりした味にゃん」

 食事を終えると、悠は着物の店員に告げる。

 「経営者の方を呼んでいただけますか?」

 「オーナーは不在ですので私がお話を」

 店長がやってきた。

 「レバーは加熱してください。異世界でも生食は禁止しています。河豚は、皮や内臓に毒があるので捌き方を練習すれば毒の部分を取り除けます。このやり方だとそのうち、死人が出ますよ」

 悠は赤坂の料亭並みの料金を支払うとルベリア達を連れて、店を出た。ゴンドラで運河をめぐる。特に行き先はない。15時頃だろうか、クレープ屋があったので止まって貰い、ゴンドラから降りて、5人分を買うと案内人にもクレープを1個渡す。

 それから、陽が落ちるまで運河を回る。ゆったりとした時間が流れていく。

 昨日、ルーリーと別れた場所でゴンドラを降りる案内人に御礼を言ってチップに10万ソフィアを渡し帰って貰った。それから、悠は花屋に行き、宿屋の3人娘の部屋に店中の花を届けてもらうように頼む。

 「宝石を貢いでもいいにゃ」

 ルベリアが悪戯っぽい顔をする。悠は無言で3人娘を連れて宝石屋に入る。

 ガラスケースには5万ソフィアから100万ソフィアの指輪やネックレス、ブローチが飾られている。

 「200万ソフィアぐらいの指輪やブローチはありますか?」

 店員は悠達の服装を観察してから、お金持ちとわかるとおもむろに告げた。

 「2階にどうぞ」

 1千万ソフィアの真珠のネックレスや数百万円のアクセサリーが飾られている。

 「このネックレスが欲しいにゃ」

 ルベリアが真珠のネックレスを指差す。

 「ネックレスを。サルトとマーレはどうする?」

 店員がネックレスをケースから出すと、ルベリアがうろたえる。

 「本当に買うにゃん?」

 サルトとマーレが困った顔をしている。

 1千万ソフィアのエメラルドのブローチとルビーのブローチを2つずつ買うと5千万ソフィアを収納庫から取り出して支払った。店を出ると、真珠のネックレスをルベリアに、エメラルドのブローチはサルトに、ルビーのブローチをマーレに渡す。そして、エメラルドとルビーのブローチを1個ずつ、マーレに渡す。

 「これは、ミール法皇とメール大神官に差し上げてください」

 「悠にゃんは、女性に振り回されて苦労するにゃん」

 ルベリアが同情した顔で言った。悠は苦笑いをして、3人娘を連れると商業ギルドに入っていく。受付のエルフ娘は悠を見ると、ギルド長を呼びに行った。

 4人はギルド長の部屋に案内される。

 「また、万能薬を買っていただくことは可能ですか?」

 「何十万本でなければ大丈夫ですよ」

 「万能薬の需要があるんですか?」

 「万能薬は他の国に輸出できますから」

 悠は、御礼を言うとギルドの倉庫に行き、1万本追加で万能薬を納品した。代金は、明日、支払ってもらう約束をして、ギルドを出た。夕食は、宿屋で食べると3人娘と別れて部屋に戻った。


 その夜、市議会議長のロベルトはファンザで一番高級な転生者料理の店主から、悠達の話を聞いていた。

 「河豚を捌いて毒がある部分を取り除いたり、レバーを出さない方がいい。なるほどな、新しい転生知識だな」

 明日の武道会に悠らしき人物が出場すると部下から報告があった。

 「転生者は、戦うのはあまり得意ではないはずなんだが・・・」 

 念のためにジュンの剣の師匠の剣豪バルザックを武道大会に出場させることにした。


 翌朝、悠は軽く朝食を取ると昼食のサンドイッチを作ってもらい収納庫に入れた。

 「そういえば武器を持っていませんでしたね」

 4人で宿屋を出ると、悠は武器屋を探し、1千万ソフィアでミスリルの剣を一本買った。


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