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21.金の力で成り上がる

 「いい年をしたおっさんが鼻の下を伸ばして、何をやっているにゃん?他の女に手を出す元気があるなら、私達にも手を出せにゃん」

 ルベリアと一緒にサルトとマーレもいる。

 「情報収集です」

 3人は白くブリザードのように冷たい氷の目で悠を見る。

 「ちょうど、町でばったり出くわしたから、悠にゃんも誘ってご飯でも食べに行こうと思って、探していたにゃん」

 「でも、裏切って知らない女の子とレストランで食事をしていたぴょん」

 「ちょっと、どこから見ていたんですか?」

 「秘密ぴょん」

 そう言って3人は、悠とルーリーが食事をしたレストランに入っていった。

 悠は、3人と別れると商業ギルドに向かう。

 受付のエルフは、

 「もう少し、お待ちいただけますか?抜き取り検査をしていますので」

 奥から他の職員がやってきて受付譲に耳打ちする。

 「はい、確認が取れました。万能薬1万本12億ソフィアです。1千本とあわせて13億2千万ソフィアです。金貨でお持ちになりますか?」

 「うん、その前にギルド・ランクを上げたいんですが、A級には10億ソフィアのギルドへの寄附金でランクアップできるんですよね?」

 「お客様は、今C級ですので、B級の寄附金1億ソフィア、A級の寄附金10億ソフィアの合計11億ソフィアが必要です」

 「それなら、ランクアップの手続きをしてください」

 「はい、ありがとうございます」

 悠はエルフが用意した書類に、11億ソフィアの寄附をするという署名をする。

 エルフは、すぐにA級ギルド員の登録証を発行してくれた。すると、ギルドの職員がエルフに耳打ちをする。

 「ギルド長がお話したいそうなので、こちらにお越しください」


 受付譲に案内されて、2階に上がっていく。

 部屋に入ると耳の尖った美しい女性が座っている。ギルド長もエルフらしい。

 「このたびは、たいそうなご寄附をありがとうございます」

 ギルド長が頭を下げる。ギルドへの寄附は、他国のギルド全体の積立金と寄附先のギルドの収入の2つになる。50%がギルド全体に、50%がファンザの商業ギルドの収入になる。

 「こちらこそ、たくさんの万能薬を買っていただきありがとうございます」

 ギルド長は、エメラルド色の目を輝かせる。

 「あなたは、よく働く転生者のようですね」

 「こちらでは、転生前よりはのんびりさせてもらっていますよ」

 「転生者は、食べ物の知識を持っている人が多い。その反面、魔法や機械の知識を持っている人はほとんどいない。不思議ですね」

 「それは、大精霊様に深いお考えがあるのでしょう」

 悠はソファーに座り、ギルド長と笑顔でにらみ合う。

 「他の転生者は、あなたのように巨大な空間収納魔法は使えません。物流の仕事をしてみてはいかがですか?」

 「こちらの世界の物流を壊すようなことはしたくないんですよ」

 「あなたはとても賢明な方ですね」

 「意外とバカかもしれませんよ。それよりもファンザでは、勇者ジュンのグッズが多いようですね」

 「観光客の方が喜んでくださいますから。悠も大賢者でしょう?グッズを出しませんか?」

 「こんなおっさんのグッズ、誰も買わないでしょう?」

 「巨大な魔獣を倒した英雄のグッズなら買いますよ。ぜひ、魔獣討伐をなさっては?」

 「この世界には、魔獣と話すことができる人はいないのですか?」

 「あなたは魔獣と話せるのですか?」

 「まさか、魔獣と話せる人間なんていないでしょうね」

 悠は立ち上がる。

 「有意義なお話でした。また、いろいろと勉強させてください」

 悠はそう言うと、丁寧に挨拶をしてギルド長の部屋を出る。悠は、宿屋に戻ることにした。

 悠が町でルーリーと食事をしている頃、ファンザの高級住宅の一室で勇者ジュンは100人を越える美女達に囲まれて食事を取っていた。

 「勇者様、あーん」

 黒髪、金髪、青髪、あらゆる色の髪、巨乳、貧乳、眼鏡、この世界の服を着ているものもいれば、ハイレグ水着やバニーガールのコスプレをしている女性もいる。勇者ジュンは、自分に群がってくる女性達を無視して、無表情でハンバーガーを食べていた。


 勇者ジュンの転生前の名前は、鍋島純である。純は21歳、なんとなく高校に進学し、高校の教師が進めるままに地元の私立大学に進学した。入学してから自分が進学した大学は、ネットで揶揄されているFラン大だと知った。純は目立たない生徒だった。小学校、中学校、高校と目立たない生徒だった。

 だから、親が大学の学費を納入し忘れたことにも本人は気がつかなかった。

ある日、純が大学に行くと学費未納で除籍されていた。大学に親しい友達がいたわけではない。実家に一日中いても、家族でさえ純が大学を除籍になり家にいることに最後まで気がつかなかった。

 「消えてしまいたい」

 純は珍しく弱気になっていた。

 「消えてしまうぐらいなら、異世界においでよ」


 金髪の若い女神が現れた。胸の大きな女神だった。純は最初、フリージア神聖王国に転生した。フリージアに転生したが、金髪だらけの外国のような雰囲気と転生者をあまり歓迎していない様子が伝わってきたので、王都を出た。

 女神フリージアが転生するときに、エクスカリバーという剣をくれた。運動神経が鈍い自分に使えるのか疑問に思ったが、とりあえず貰っておいた。

 「勇者にゃん・・・」

 変な喋り方をする大神官が、フリージア神殿に転生してきた純を見て、ものすごく嫌そうな顔をした。

 王宮に案内されたが、国王アルベルト3世も、

 「勇者殿は歓迎します」

 目をそらして純に言った。

 「ああ、この世界では勇者は歓迎されないのだな」

 純は、ウサギ耳のブルマ少女達や猫耳のメイド達に囲まれ、すこしひいた。

手を出してみたい気持ちや、Hな気持ちも少しあったが、存在感のない自分が王宮にいることはためらわれた。

 「ニート給付金があります」

 貴族のような格好をした男性が事務的に純に説明をする。

 この国にいれば、無条件で年間2千万ソフィアが貰えると言われた。

 「もっとも、他の国の方がニート給付金は高額ですが・・・」

 無表情で純に告げた役人は、この国から純に出て行って欲しいのだと思った。

 2千万ソフィアを受け取ると、国境の町まで乗合馬車に乗って旅をした。だれも純に話しかけてこなかったし、純も話しかけなかった。乗合馬車の目的地は、自由都市ファンザだった。

 「勇者ねえ」

 入場審査の都市の警備兵は、胡散臭い顔で純を見る。

 

 途方にくれていた純に声をかけたのは、警備兵に呼ばれてやってきたファンザの市会議長のロベルトだった。ファンザは商人達の選挙で、都市を運営する議員を選ぶ。ファンザの代表が市会議長のロベルトということらしい。

 「あなた様は、勇者の称号を持っておられるのか?」

 「エクスカリバーという剣をもっているだけなんですが・・・」

 小さな声でロベルトに告げる。

 「わしの家に泊まっていくといい」

 ロベルトは、大きなホテルを経営していた。食事は、フリージアと違って、日本の料理が出た。ハンバーガーやカツ丼、ファミレスで食べられるような料理が高級料理として純に振舞われた。

 「名前はジュン殿でいいのかのう?」

 「はい」

 食事が終わると、1人きりでロベルトの部屋に呼ばれた。

 「ジュンは戦ったことがないだろう?」

 「はい」

 「このファンザには傭兵団がおる。ジュン殿も傭兵団に警護してもらえば、戦わなくても問題はない」

 「はい」

 コミュ力が低いジュンは、話すのが苦手だった。

 「寡黙なところも勇者らしいな。行くあてがないのならファンザで勇者をやってみないかね」

 ジュンは頷いた。少なくとも、ファンザの市議会議のロベルトが自分を必要としてくれていることが ジュンには嬉しかった。ロベルトは、ファンザでも大金持ちとして有名らしく、町から少し離れた場所に勇者の家を建ててくれた。

 「街の中は目立つからな」

 

 戦えなくてもいいから、エクスカリバーだけでもそれらしく使えるようにして欲しいとロベルトはジュンに剣の指導役のバルザックをつけてくれた。

 ジュンがエクスカリバーを抜くと聖剣は光る。傭兵団が生け捕りにした魔獣の首をはねるように指導役は言った。言われた通りに剣をふると、魔獣の首は簡単に切り落とせた。

 1週間ほどすると、ファンザの闘技場で行われる武道会に呼ばれた。

 「あの、僕は戦ったことがないです」

 「適当に、剣を振り回しておればよい」

 ロベルトのいう通りに剣だけブンブン振り回していると、対戦相手が勝手に降参してくれた。

 「無敵の勇者ジュン、自由都市ファンザに降臨です」

 司会の若い女性が叫ぶと、観客達から大歓声が起こった。屋敷に帰ってから、バルザックにジュンは質問する。

 「なんで勝てたのかわかりません。八百長ですか?」

 「ああ、対戦相手は全員ヤラセだ。観客も議長のサクラが歓声をあげたり、拍手をするように仕込んでおいたんだよ」

 「どうしてそんなことを」

 「知らんよ。議長殿の金儲けか自分の選挙にでもジュンを使うんじゃないのか?」

 翌日、ロベルトは20人ほどの若い女性を連れてきた。エルフや黒髪の女性、獣人も混じっている。胸の大きな女性、眼鏡をかけた少女、貧乳の黒髪娘、16歳から25歳くらいの女性だという。

 

 「勇者殿のお世話係だ、ジュンはどの娘が好みかな」

 「女性はあまり・・・」

 ジュンが顔を赤らめる。ジュンは異性と交際したことはない。黒髪の清楚な少女を綺麗だと思ったが、話しかける勇気はなかった。

 「じゃあ、全員、採用だな」

 ロベルトは、1週間に1,2回、新しい女性を連れてきた。勇者ジュンの家は、若い世話係が100人以上が暮らすようになった。全員が、ジュンを誘惑してこようとする。

ジュンが淡い恋心を抱いていた清楚な少女もジュンの目を見て、

 「私のこと、嫌いですか?」

 瞳をうるうるさせる。

 「まあ、なんだ。枕営業だな」

 バルザックがジュンに教えてくれた。

 「枕営業?」

 「ジュンの世界にも芸能人やアイドルがいるだろう?この世界では、吟遊詩人や歌姫がアイドルみたいなもんなんだよ」

 「吟遊詩人がどうして、枕営業をするんですか?」

 「市議会議長殿は、アイドルグループでも作って儲ける気なんじゃないのか?」

 「異世界でアイドルグループですか?」

 「ジュンの他にも転生してきた異世界人がいる。そいつらから異世界の食べ物や文化の話を聞いて、市議会議長殿や何人かの商人が再現しているんだよ。アイドルグループの話も転生者から聞いたんだろう」

 「それが僕と関係あるんですか?」

 「お前はピュアだな。勇者ジュンをでっち上げてグッズを作って商売にしているんだよ」

 「そんなものは売れないでしょう?」

 バルザックは苦笑する。

 「ああ、お前が言う通り売れないな。だから、武道大会でヤラセで優勝させた。あとは傭兵団が狩って来た魔獣も勇者ジュンが討伐したことになっている」

 「それ、詐欺ですよね・・・」

 「詐欺だよ。詐欺だけど、傭兵団も仕事がなければお金は貰えない。魔獣を討伐したり、武道大会でお前に負けるだけで大金が貰えるならと喜んでいるよ」

 「魔獣討伐の危険はないんですか?」

 「危険はないな。フリージア神聖王国の南に大山脈がある。その向こうが魔王領だ。ネルランド諸国連合はフリージアを盾にしているから、領内に強い魔獣はいない」

 ジュンは黙り込む。



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