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23.悠、観光勇者と闘技場で戦う

 闘技場に着くと、ルベリア達3人娘のためにVIP席のチケットを買い、出場者受付をすませる。悠は控え室に通される。1人部屋らしい。30分ほどすると、悠は係の人間に呼び出される。悠が闘技場に入ると司会が叫ぶ。

 「1回戦は、初出場の悠対剣士ロイド。ロイドは決勝で勇者ジュンとも戦ったことがある狂戦士です。さあ、悠がどんな戦いを見せてくれるのか」

 悠は、小さな声で呪文を唱える。

 「肉体超強化、筋肉増強、防御力増強、スピード増強」

 試合が始まるとロイドは、すばやく悠に切りかかってくる。ロイドの剣を受け止めると、悠はわざと後退する。ロイドとつばぜり合いを繰り返しながら、ジリジリと押されているように演技する。そして、悠が不利になったように見えたところでロイドの剣が飛んでいく姿をイメージした。ロイドの剣が飛ぶ。悠はロイドの喉元に剣を突きつけると、審判が悠の勝ちをつげる。悠はわざとらしく息を切らしながら、控え室に戻っていく。

 2回戦のジョージは、魔剣士だった。ファイアボールを放ってくるジョージから逃げ回るふりをして、ジョージのファイアボールが暴発するイメージをする。観客には、ジョージがファイアボールに失敗して自爆したように見えた。悠は、逃げるように控え室に戻った。

 準決勝では、勇者ジュンの剣の師匠、バルザックが対戦相手だ。

 「さあ、あの伝説の剣士バルザックの登場です。さあ、悠はバルザック相手にビギナーズラックが続くのか?」

 司会がそう紹介して、試合が始まる。

 バルザックの剣さばきは素早い。悠は逃げ回るふりをして、バルザックが転んで剣が吹き飛ぶ姿をイメージする。悠は転んだバルザックに剣をつきつけると、会場からブーイングが起こる。悠は逃げるように、控え室に戻った。すると、悠の控え室に1人の男がやってきた。小太りで初老の男は悠に話しかける。

 「悠様は転生者でしょうか?」

 「転生者はそんなにたくさんいるんですか?」

 悠は質問に、質問で返す。

 「申し送れました、悠様。市議会議長をやっておりますロベルトでございます。昨日は、レストランにお越しくださりありがとうございます」

 「オーナーでしたか。ごあいさつが遅れまして。悠と申します」

 「悠様は、商業ギルドもAランクと聞いております。私どもの商いにお知恵をお借りできませんか?」

 「若輩者が、人生の大先輩のお役に立ちませんよ。恐れ多い」

 「悠様は謙虚ですな。これはご挨拶料です」

 大きな金貨が入った皮袋を悠に渡そうとする。1億ソフィアぐらいだろうか?

 「無知な若造には大金過ぎます。お気持ちだけありがたく頂戴いたします」

 「私どもは、悠様のお役に立ちたいと思っておりますので」

 ロベルトはそう言って金貨の入った袋を持って控え室を出た。

 悠と勇者ジュンの決勝戦が始まる。

 「さあ、不敗の勇者ジュンVSビギナーズラックの悠、どこまで悠の強運が続くのか」

 「アウェーの洗礼ですね」

 悠が闘技場に入るとブーイングが巻き起こる。ジュンが大歓声の中、入ってきて試合が始まる。

 「ソフィアの手」

 悠は小さな声で、ジュンのエクスカリバーの効力を封印した。そして、ジュンと剣を打ち合うと、ジュンの剣が光っている姿をイメージする。ジュンの剣が光る。

 「エアクッション」

 自分の身体を空気の膜で守ると、ジュンの剣が悠の剣に当ったタイミングで闘技場の壁に自分の魔法で飛んで行きぶつかったふりをする。派手に闘技場の壁を壊すと、観客から歓声が起こる。

 「悠、ダウンか?」

 悠はよろめきながら立ちあがると、剣を握ってジュンに向かっていく。

 「エアクッション」

 今度は、ジュンにエアクッションをかけると、悠の剣と打ち合った瞬間、エクスカリバーが飛んでいく姿をイメージする。エクスカリバーを飛ばすと、ジュンに拘束魔法をかけそのまま地面に倒すと喉元に剣をつきつける。

 「降参です」

 小さな声でジュンが降参を認めると、審判が悠の勝利を告げた。パラパラと拍手が起こるが、だんだん拍手は大きくなる。

 市議会議長のロベルトが闘技場に拍手をしながら降りてくる。

 「新しい英雄悠、そして勇者ジュン。我がファンザの繁栄は栄光です」

 会場からロベルトが仕込んでおいたサクラが叫ぶ。

 「勇者ジュン」

 「英雄、悠!」

 声援は、観客達にも伝播し、皆が「勇者ジュン」、「英雄悠」と叫ぶ。

 悠は照れくさそうに観客席に向かって手を振るとジュンとロベルトに話しかける。

 「お二人に、お話があります」

 悠はルベリア達と合流すると、ロベルトの馬車で勇者ジュンの屋敷に向かった。

 屋敷に帰ると美女達が出迎えてくれる。

 「よくこんなに集めましたね」

 悠は呆れた表情でロベルトに言った。応接室に入ると悠、ルベリア、サルト、マーレの4人とロベルトと勇者ジュン、バルザックの7人がソファに座る。

 「さて、ロベルト議長。あなたは大精霊ソフィアを信仰していますか?」

 悠は問う。

 「もちろんでございます」

 「あの、腹を割って話をしたいので敬語じゃなくていいですよ。私の口調は地の口調ですから」

 「悠様は何者ですか?」

 「女神フリージアが気まぐれに転生させた人間ではなく、大精霊ソフィアに転生者が滅茶苦茶にした異世界を正常化するように頼まれてやってきた官僚です」

 「悠さん、超エリートなんですね・・・」

 「本名は有馬悠。ジュンさんは何と呼べばいいかな?」

 「鍋島純。呼び方はお好きにどうぞ。Fラン大中退です」

 「学歴の話はやめましょう。ジュンさんは、何がしたいの?」

 「消えてしまいたいと思ったら、フリージア様にこの世界に連れてこられました」

 「ジュンさんは、戻れるなら、日本に戻る気はありますか?」

 「戻っても、何をしていいか?」

 「ジュンさんは若いんだからゆっくり考えたらいいですよ」

 悠はロベルトの顔を見る。

 「まず、こちらのお願いです。ハーレムを解散してください。ジュンが目立つのなら、私が万能薬を売ったお金でジュンの生活費を支払うので面倒を見てください。ジュンが希望するなら、フリージアで一緒に生活しましょう」

 「調停者様、よろしいでしょうか?」

 「調停者と呼ばれるのは嫌いなんだけど、何ですか?」

 「調停者様は、何をなさるおつもりですか?」

 「フリージアに転生対策課を作って、転生者を取り締まっています。ハーレムを潰したり、勇者の回収をしています。次は、フリージアの王女のトラウマの元凶を作ったロリコン勇者を討伐します。転生者が伝えた文化も異世界の文化汚染になっているものは修正します。スクール水着やブルマにウサギ耳や猫耳の類の禁止。河豚やレバ刺しのように危険な食べ物の禁止。ハンバーガーやクレープのように広まってしまった食文化は禁止が難しいので黙認します。ただ、卵は食中毒の危険性が高いので生で食べない。卵かけご飯は作らせない。大きなことと小さなことを同時にやっていきます」

 ロベルトは、悠の顔を見る。

 「フリージア教の前法皇、フリージア神聖王国の前国王は悠様ですか?」

ルベリア達が頷く。

 「なぜ、王と法皇になって退位したのですか?」

 「あなたもジュンを勇者にでっち上げた政治家ならわかるでしょう?」

 「反対者を納得させる正当な権威」

 悠は無言で微笑む。

 「転生者とは思えない思慮深さ、悠様は大精霊様が召還した本物の調停者様なのでしょう。わかりました。試合前にお約束したように全力で協力させていただきます」

 「ありがとうございます。でも、試合前はジュンが負けたら私も英雄として商売道具にするつもりだったのでしょう?」

 「調停者様はすべてお見通しですね」

 バルザックが恐る恐る発言する。

 「悠様、どうして試合ではわざと弱そうに振舞ったのでしょうか?」

 「勇者を逃がさないためですよ。勇者が弱いのはわかっていましたから。まあ、逃げていたら屋敷を直接、襲撃しましたけどね」

 「悠さん、どうして僕が狙われたんでしょうか?」

 勇者の問いに悠は丁寧に答える。

 「1点目は、勇者は数名しかいないから。2点目、ハーレムの女の子の人数が一番、多かったからです。たぶん、転生者でもおかしなことをやっている人は1割ぐらいだと思います。目立つ転生者から取り締まれば、あとは楽でしょう?」

 ジュンがなるほどという顔をする。

 「ハーレムもロベルトさんが集めた女の子達だから解散できますよね?。2、3人なら連れてきてもいいですが・・・」

 「そういうの苦手なんで」 

 ジュンが笑った。

 悠は、宿屋に転移してチェックアウトすると、商業ギルドで万能薬の代金を貰って、ルベリア達とフリージアの王都に戻る。

 

 「ただいま」

 そして、悠達は王都のいつもの宿屋に戻ると、いつもの部屋を借りた。


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