19.異世界ファミレス最強、ふざけんな。旨いけどさ。
悠は目が覚めると、食堂に降りて行く。
ルベリアとサルトは、食堂で悠を待っていた。悠も食事を食べ終わると、昨日買ったミスリルのローブに着替える。
「一度、宿を出ますので。また、戻ってきますよ」
受付の少女にお礼を言って宿を出る。
フリージア神殿に行くとマーレが旅支度をして待っていた。
「荷物があれば、預かりますよ」
悠は、マーレの身の回りの荷物の空間収納マーレに入れる。ルベリアとサルトの荷物も空間収納ルベリア、空間収納サルトに入れる。ネルランド諸国連合は、王都の北方にある。なので、悠達は一度、北門から王都の外に出た。
「マーレさんは、空を飛ぶのははじめてでしょうか?」
「えっ?」
悠は、ギルドで買った地図を手にするとルベリア、サルト、マーレを連れて数百メートル上空まで飛び上がった。
初めて空を飛ぶマーレの手を優しく握ると、ネルランドとの国境付近まで飛んでいく。
マーレが慣れてくると飛ぶ速度をあげ、昼頃には国境付近までやってきた。それから、一度、地上に降りると、国境まで歩いていく。
国境には100名ほどの警備兵の詰め所があった。
フリージア側の警備兵は、すでに王宮から連絡が届いていたので、スムーズに通してくれた。しかし、ネルランド諸国連合の警備兵は、悠の身分証を見ると露骨に嫌な顔をした。嫌な顔をしたが、転生者優遇政策をネルランドも採っているので通してくれた。
「ファンザまで歩くと2日はかかるぴょん」
ルベリアに指摘され、一度、国境を出てフリージアの警備兵に馬車を貸してもらった。
「馬車を使える人はいますか?」
全員がうつむく。
「そうだよね、全員、特権階級だよね」
馬車に全員で乗ると、御者台に悠は座る。
「空中浮遊」
馬を1、2センチ浮上させると空中浮遊で街道を進んでいく。人がいない場所では、かなりスピードをあげる。馬も最初は怯えていたが、自分が馬車を引かなくていいとわかると安心してくつろぎはじめた。
馬車や人がいない場所では、数キロ単位で転移を繰り返し、数時間で自由都市ファンザに到着した。ファンザの城門の手前で馬車から降りると、国境に馬車ごと転移して馬車を返してくる。
ファンザの城門には、「ようこそ勇者の町に」と大きな看板が出ている。自由都市ファンザには、貴族がいない。いわば商人達による自治都市である。
悠一行は、都市の入り口で入場税を払う。1人10万ソフィアで1年間のフリーパスが貰えるといわれたので、40万ソフィアを渡し4人分のフリーパスを買った。身分証も登録しておくので、なくしても再発行してもらえるらしい。
「宿を探しましょう」
自由都市ファンザの中心は、商人達の議会がある。そして、中心部に商業ギルドと冒険者ギルドがある。冒険者ギルドに行き、フリージアのギルド長の紹介状を渡して宿を紹介してもらった。
ギルドはフリージアより小さいが、エルフがいる。エセ猫耳やウサギ耳ではなく、男も女も本物の猫耳、ウサギ耳、犬耳がいる。獣人である。
「日本人?」
ファンザはアジア系の顔、黒髪の日本人顔の人が多かった。
「悠にゃんは、黒髪が好みなのにゃ?」
ルベリアが追及してきたが、悠は無言で目をそらした。日本からの転生者がネルランドに移住したがるはずだ。
悠達は、ファンザのギルドで紹介された宿屋に向かう。宿代は1泊1人5万ソフィア、4人で20万ソフィアである。女性用に3人部屋と悠が泊まる1人部屋を借りた。
「1人部屋は、10万ソフィアになります」
笑顔で受付のお姉さんが請求する。
「一緒の部屋で寝るぴょん」
「そうするにゃ」
悠は同行者達の戯言をスルーする。
「とりあえず、10日間お願いします。延長するかもしれませんが・・・」
悠は、250万ソフィアを支払うと、部屋に入った。そこは、ホテルのような巨大なベッド、前の宿 屋の5倍以上の広さである。そして、バスタブもあった。
悠は洗浄魔法をかけると、ベッドに横たわった。
部屋の扉をノックする音がする。
「どうぞ」
「悠にゃんの部屋も豪華だにゃ」
「3人部屋も豪華だぴょん」
ルベリア達が部屋に入ってくる。
「そうだ、洗浄魔法をかけますよ」
ルベリア達にも洗浄魔法をかける。
「お風呂に入ったみたいだぴょん」
「子作りするにゃ?」
部屋にはソファーもある。悠もベッドから降りる。
「今日は、少し町の中を歩いたら休みましょう」
「情報収集にゃん」
ファンザは、治安の良い町と聞いている。4人で町に出かけることにした。
日が暮れてきたが、魔法灯がいたるところにあり明るい。
観光客用のお土産屋もある。これは転生者のアイデアだろうなあとお土産屋に入っていく。店員は、高校生ぐらいの黒髪の少女である。
着物や浴衣を着ている観光客もいる・・・。
「勇者ジュンのキーホルダー、勇者ジュンの勇者饅頭、勇者ジュンの・・・。勇者グッズだらけですね」
「お客様も転生者ですか?」
店員の少女が話しかけてくる。
「まあ、そんな感じかな」
悠は曖昧に誤魔化した。
一緒に土産物屋に入ってきたルベリアやサルト、マーレを見ると、
「素敵な転生者ハーレムですね」
少女が微笑む。
「そういうのじゃないです」
悠が顔を赤くする。
「おっさん、何照れてるの?キモいよ」
舌打ちをすると小さな声でルベリアが悠に耳打ちした。
「ルべリアさん、あのいつもとキャラが変わってますよ」
ルベリアは、いつもの口調で静かに悠を睨みつける。
「悠にゃんは、やっぱり黒髪少女が好きなんだにゃん?」
「転生者向けの口調をやめて、普通に話せるなら、その口調で話してくださいよ」
「何のことかわからないにゃん」
「他のお店をみてから、また来ますね」
店員さんに告げると悠は、露骨に不機嫌な顔をしているルベリア達を連れて土産屋が並ぶ通りを歩いていく。
「勇者グッズが多いですね」
「そうだぴょん、本物のウサギ耳の獣人やエルフもいるぴょん」
「悠にゃんは、エルフもエロい目で見ているにゃん。悠にゃんもやっぱりただの駄目な転生者だったにゃん」
悠はスルーして無言で歩いていく。
エルフもいるんだなあと、すれ違うエルフをチラッと見る。
自由都市ファンサは、異種族が暮らしている。エルフやドワーフ、獣人、人間が暮らしているのである。
町の中を運河が流れている。観光客が運河を眺めていた。
「諏訪さん?」
悠が小さな声で呟く。
「どうしたにゃ?」
ルべリアは、運河の方に走っていく悠に声をかける。
「気のせいか」
悠に追いついたルベリアが話しかける。
「可愛い子でもいたかにゃ?」
悠は、ルベリア達から目をそらす。
「最低にゃ」
悠はルベリア達と宿屋に帰ることにした。
5階建ての宿屋は、小さなホテルである。ファンザの中では、値段が高い宿屋の1つだという。ギルド長は、ルベリア達が貴族なので高級宿屋に泊まった方が安全と判断して高級ホテルを紹介したのであろう。
宿屋の食堂もレストランのような豪華な雰囲気で、王宮で食べた料理のようなものが出てきた。転生者の文化汚染であろう。何の脈絡もなく、たこ焼きやカレーライスがやはり出てきた。
「マヨネーズをください」
給仕に声をかけると、異世界文化汚染の典型ケースのマヨネーズを持ってきた。
「何にゃ?」
「卵とお酢で作る異世界の調味料ですね」
「酸っぱいピョン」
「まあ、好みがわかれる調味料でしょうね」
スープ皿に入ったカップラーメンが出てきた時は、冷静な悠もキレかかったが、カップラーメンには手をつけなかった。地球では、霞が関では忙しくなると食事はカップラーメンになる。役所に泊まりこみでカップラーメンを食べ続けていると、食べるのが苦痛になってくるのだ。
「デザートは、プリンかアイスクリームですか?」
「違います」
給仕が答えた。
男の転生者が多いと、プリンの作り方はわからないのかな。デザートはショートケーキとパフェがセットで来た。
「文化汚染しまくっていますね」
悠の町での態度に、不機嫌になっていたルベリア達もケーキやパフェの地球料理は喜んで食べていた。この世界では、砂糖だけではなく甜菜の栽培が行われているらしい。砂糖の原料のサトウキビは沖縄のような暖かい場所で栽培される。この世界は、欧州のように少々寒い。ゆえに甘味料の栽培は甜菜だった。
砂糖は、もともと甘すぎる。日本でも甘味料ではなく薬として使われてきた。舌がなれなければ甘すぎる甘味料なのだが、貴族達には砂糖を甘味料として使う文化があったのでケーキやパフェもルベリア達には好評だった。
一行は夕食が終わると、部屋に戻った。
満腹になったのか、ルベリア達もおとなしく部屋に帰っていった。
悠も部屋に戻ると、バスタブに魔法でお湯を入れると服を脱いでつかる。浴衣とバスローブがあったので、バスローブを着ると3、4人で寝られそうな大きなベッドに横たわる。
それにしても、勇者グッズが大量に出回っていたのが気にかかる。




