10.王宮セルフ追放
いや、そもそもの元凶は転生者を連れてきた女神フリージアという邪神・大魔王ですよとダメ出しをしたかったが、よそ様の宗教問題に干渉をするのはやめようと我慢した。
悠は、ミール法皇にも神殿に異世界対策課の分室を作るようにお願いをした。
王宮内には、宰相や大法官等の行政官僚が働く執務室がある。王宮は、王達のプライベート空間、官僚や軍人が働く政務機関がある。すべてが王宮内にあった。もちろん、裁判所や軍の司令部は王宮の外にあったが、国の中枢機関は広大な王宮内にあった。王の執務室の側に宰相の執務室があった。大法官は、平民を含む官僚を統率しているので、王宮の離れに執務室があった。その中間に宮廷書記官長の執務室があった。
王宮の中心部が国王や貴族の政務区間、王宮は長方形で北側に大法官を中心に官僚が働く行政機関、東側のエリアは宮廷魔術士が働く宮廷魔法団の拠点に、西側が王国軍の司令部、南側が国賓を呼ぶ迎賓館的な外交区画と王の家族が生活する王族のプライベートゾーンになっていると説明を受けた。
貴族は王宮を中心に別邸を作り貴族街を構成する。貴族街の周辺が裕福な住民が住む高級住宅地と富裕層向けの店がある。その周辺に庶民が住む。そして、大きな円状に城壁があり魔族や他国と戦争になった時の防衛線になっているという。
宰相と宮廷書記官長、宮廷魔法団長と軍事大臣は貴族街の別邸とは別に王宮内に寝室が与えられていた。ただ、仕事がなければ王宮外の別邸に帰るので常時王宮に住んでいるのは王族と侍従と侍女達だけだという。
悠は住む場所がないので、王宮内に部屋を借りることにした。借りる側なので、場所は宰相達に任せた。
悠が泊まっている寝室にはお湯を運んでくるバスタブがあった。入浴習慣はないのだろうか?
宰相に質問してみると、転生者が来る前からお湯に入る入浴文化があり、平民町にも大衆浴場があるという。使用人用や警備兵用の大浴場があり、国王達のプライベートゾーンには、王族用の浴室があるという。
「じゃあ、なんで部屋にバスタブがあるんですか?」
そう質問すると宰相が教えてくれた。
「転生者の方々が、入浴は部屋でするものだし、自宅警備員は入浴を好まないものもいるとお聞きしまして・・・」
耳が痛い。頭も痛い。転生者とフリージアを殴りたい。
会議が終わると、一度、悠は寝室に戻った。それから、猫耳ブルマが悠を呼びに来た。
アルベルト3世と宰相が話し合い、悠の部屋は王族のプライベートエリアの中の一室が与えられた。入浴も、使用人用の大浴場を使いますよと言ったが、王族用の浴室を使わせて貰うことになった。
「もし嫌でなければ、今、世話をしているものをそのまま世話係にしてもらえないか」
アルベルト3世から直々に頼まれた。
王宮内で王族達の世話をする侍女は、貴族達の娘なのだという。猫耳ブルマは、ルベリアといい宮廷魔術師2級、侯爵家の三女で18歳。ウサギ耳メイドは、サルトといい。伯爵家の次女で聖騎士、同じく18歳だという。
貴族に、猫耳やウサギ耳、スクール水着やブルマ文化を普及させているわけか・・・。
異世界対策課で文化汚染を良く調べてから、元に戻そう。
「じゃあ、ご主人様、お部屋にご案内しますにゃん」
「ルベリアさんもサルトさんも、ご主人様という呼び方ではなく、悠さんと呼んで貰えると嬉しいです」
「ご主人様はご主人様にゃん。それとも、旦那様がいいにゃんか?」
「自分のことはサルトと呼んでくださいぴょん」
王宮内の廊下を歩きながら話す。
「私は王族や貴族ではありません。お二人の主人でもない。対等な関係だと考えています」
「だったら、悠にゃんと呼ぶにゃん」
「でしたら、自分は悠ぴょんと」
「好きにしてください」
こうして悠は、ルベリアからは悠にゃん、サルトからは悠ぴょんと呼ばれることになった。ルベリアとサルトは、王宮内の侍女部屋で暮らしているという。
「どんな部屋なんですか」
「夜這いに来るにゃん?」
ルベリア達は貴族なので、侍女部屋と言っても1人1室で、2LDKの部屋が与えられていた。平民の下働きのメイドは、数人部屋で暮らしているという。
猫耳やウサギ耳をつけているのが、貴族出身の侍女。コスプレをしていないのが下働きのメイドということらしい。
悠が最初に与えられた寝室は、隣国の外交使節等が宿泊する部屋だという。ルベリア達に連れて行かれたのは、王族用の客室で退位したアルベルト3世の父親、先王が使っていた部屋だという。最初に泊まっていた寝室の3倍以上の広さである。
「最初の寝室より狭い部屋に変えてもらえませんか?」
アルベルト3世に頼みに行ったが、他の部屋は先王の后が使っていた部屋しかないので、衣裳部屋がある分、もっと広いといわれ諦めた。食事は、アルベルト3世の家族と一緒に食べることになった。
夕方、アルベルト3世の家族に挨拶に行く。
アルベルト3世は、43歳。王后メアリーは35歳、一人娘のシャルロットは15歳。
メアリーは、悠より少し年上である。金髪碧眼の美女でほっそりしている。
シャルロットは、金髪の美少女で15歳。すらりとした体型である。腰がほっそりしているわけではない。コルセットは発達しなかったのだろう。
化粧もナチュラルメイクに近い。そういえば、ルベリア達も薄化粧である。香水の匂いもうっすらとするだけである。
入浴の文化があるから、香水が発達しなかったのかな?
話を聞いてみると、この世界も地球のように鉛の入った白粉ときつい香水が流行していたが、転生者達が厚化粧や香水を嫌がるので、貴族の香水文化や化粧が変化していったらしい。
メアリーは悠が入ってくると怯えたようにシャルロットの手を握りしめた。
「親子同時にハーレムに、親子丼」
メアリーの言葉を遮るように、
「どちらにも手を出しませんから」
悠が答えると、
「では、シャルロットをハーレムに?」
「いれませんよ、メアリー王妃。男性がプライベートエリアに入るのが怖いなら王族エリア外で生活して構いませんよ」
「メアリー。悠殿は大精霊様が異世界から召還した調停者様。とても理知的な方だ、シャルロットも心配しなくていい」
アルベルト3世がメアリーをなだめる。
悠が腕を組む。
「あの、ひょっとして、転生者が王妃や王女に手を出したんじゃないですか?」
アルベルト3世が少し躊躇っていたが、重い口を開く。
「最初の勇者が、シャルロットに乱暴を働こうとしてね。それから、王妃達は転生者に会わせていないのです」
「私がいると転生者のことを思い出すでしょう。王宮を出て暮らします」
アルベルト3世が王宮に留まるように悠に謝罪したが、
「元々、フリージアが日本から連れてきた転生者が悪いのです。気にしないでください」
荷物ははじめからないので、王宮を出て貴族街を歩いていく。近衛兵が3名とルベリアとサルトが着いてきた。




