禁術
「雅様さ、気づいてたんでしょ。アタシのココに刻まれた禁術にさ」
癒麻さんは、自身に刻まれている文字を人差し指でトン、トン、と軽く叩いた。
まさか、ここで癒麻さんが口を開くとは思わなかった。
今の発言は僕にかけられた疑いを晴らすのには、十分だった。
なんでここで僕を助けるような真似を?
「不思議そうな顔してるね。理由は簡単だよ、簡単だよ……簡単?」
先程まで愉快そうに笑みを浮かべていたが、理由を答えようとした途端に、段々と顔が曇っていく。
「理由なんかない、アタシは雅様をお守りするって……」
癒麻さんはその場に、ガクン、と膝から崩れ落ちた。
「あーあ、壊れちゃったかな」
吉田さん、雷さん、金茶、源十さん、童、癒麻さん、ではない声が近くから聞こえてくる。
この声は、奸でもない。声の主の居場所を探そうと首を動かした時、冷たくて硬い物体が、喉仏に触れた。
その物体の正体を知ろうと、顎を引くが見えない。
「動くなよ、簡単に皮切れるからな」
右耳から言葉が入って来た。いつの間にか背後を取られていたみたいだ。
「あの我骸兄弟の弟が、こんなにもあっさりと背後を取られるなんてな、お前本当にあの我骸雅かよ? 大した事ないな、それとも偽物だったりして」
低い声で、愉快そうに笑っている。
こいつは何だ、奸の部下か?
「僕の目的は、この弱っちい奴じゃないから安心してよ、そうピリピリしないで」
アハハ、と低い笑い声が聞こえた瞬間、首に鋭い痛みが走った。
「えッ?」
――ぴちゃ、ぴちゃ
横を向くと、音の正体が刃に付いた僕の血を舐めているものだと分かり、全身に鳥肌が立った。
「うーん、血は美味しいね、ワインみたいに飲みたい」
背中から脳にかけて冷たいものが走った。
「うわ、キッモ!!」
「気色悪いなあ、お前」
「気持ち悪いですね」
「気色悪すぎますニャン」
「ここまで嫌悪感を抱いたのは久しぶりです」
みんな同じことを思っていた。数名の語彙力低下が本気で引いていることを証明している。
「そうそう、この反応! 久しぶりで気持ちいいなあ」
何故か喜んでいる。この男、奸よりも狂っているかもしれない。
「すっかり、何しに来たのか忘れてた」
男は、満面の笑みでゆっくりと癒麻さんの元へと歩いてく。
地面に座り込んでいる癒麻さんのおでこを片手で押し上げ、強制的に目を合わせると、もう片方の手で顔に書かれている文字に手を押し当てた。




