誰を信じるか
「残念だけれど、アタシは癒麻だよ」
この場に居る全員が息を呑んだ。
「おい、癒麻、どういう事だよ」
癒麻さんの代わりに源十さんが口を開く。
「俺、その文字何処かで見たことある気がするんだけどな……クソ、思い出せねえ」
源十さんの言葉を聞き、改めて癒麻さんの顔の左半分にビッシリと書き詰められている文字を、目を凝らして見た。
あの文字列、僕も何処かで見かけた記憶がある。
最近見かけたような……。
頭を捻り、ようやく思い出せた。今は無き、妖界にあった拠点の自室で見つけた本の中に、似たような文字列を見た気がする。
そして、その本は人間界に来るときに一緒に持ってきていた。
肩に掛けていた大きめの鞄を床に下ろし、中から数冊の本を取り出す。
「雅様、どうしたんですか」
「雅様、何かお探し物ですか」
金茶と童が僕に気づき、僕の手元を覗いている。
「うん、ちょっと思い出したんだ」
三冊の本を一冊一冊開いていく。
そしてようやく、探していたページを見つけた。
幸運な事に、探していたページの角が少し折れられていて、直ぐに見つけられたのだ。
「雅様、これって」
「癒麻様のお顔に書かれた文字に似てます」
金茶と童も気づいたようだった。
「源十さん、もしかして、源十さんが見たのもこれじゃないですか」
源十さんに開いたページを見せる。
「これだ、なんて書いてある」
「まじかよ、これ、対象者の記憶を書き換える禁術じゃ」
雷さんの言葉に、僕以外のみんなの顔が強張った。
「今現在禁術を扱うことが出来るのは、我骸兄弟しかいません」
吉田さんの言葉で、みんなの視線が僕に集まる。
我骸兄弟、つまり、兄の奸と僕の事だ。
「雅、な訳ないよな」
源十さんが、確かめるように僕を見た。
「悠斗さんが都合よく、禁術に関する本を持っていたのは、ただの偶然なのでしょうか」
吉田さんの言葉に再び緊張が走る。
確かに、僕が偶々禁術に関する本を持っていました、なんて都合がよすぎて疑われても仕方がない。
だけれど、本当に僕は何も知らない。
否定しようと口を開きかけた、その時だった。




