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あなたは誰

 既に外には、僕以外が集まっていた。


「よし、源十、頼んだ」


 雷さんが僕の姿を確認してから、源十さんの方に手をポンと置いて、門の方へ歩き出す。


「雅様、行きましょう」


 金茶が僕の方に飛び乗って来た。

 雷さんに続いて門へと向かった。その直後だった。

 背中に何か熱いものを感じて振り返ると、屋敷が燃えている。

 青白い炎に包まれ、屋根が崩れ落ち、窓のガラスも溶け、火の粉が舞っている。


「え、え、何してるんですか」

「雅、行くぞ」


 源十さんも燃え盛る屋敷に背を向けて歩き出した。

 僕も屋敷から離れ、門の外に出た。


「あのクソ野郎が悠斗の意識を乗っ取れたのは、この屋敷に術を仕掛けておいたからだ、あいつに拠点の場所知られたし、術ごと燃やした方が手っ取り早い」


 確かに、全部燃やしてしまった方が確実に奸の術を消せる。合理的なのか、極端なのか、僕には分かりかねる。

 青白い炎に包まれて崩れ落ちる屋敷を背に、僕たちは歩き出した。

 

「よし、暫く此処とはおさらばだ。目ぇ瞑っておけ!!」


 源十さんが声を張り上げた直後に、眩しい光が僕たちを包み込んだ。


 


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※


 光が消え、目を開けると、辺りには見覚えのある光景が広がっていた。

 川のせせらぎが聞こえるほど静かな森の中に、ポツンと佇む山小屋。

 吉田さんのカフェだ。やっとこっちに戻ってこれた。


「人間の世界に来たのスゲエ久しぶりだ」


 源十さんは遠足に来た、くらいのテンションで、きょろきょろと目を輝かせながら周りを見渡している。


「あたしも、人間界に来たの何時ぶりだろ」

「わたくしも、久しぶりです」

「妖の皆さんは、あまり人間界に来ないものなんですか」

「そうだね、来る必要もあまりないからね」


 癒麻さんが答えてくれた。

 話しているうちに、吉田さんのカフェに辿り着いた。


「どうぞ」


 吉田さんが扉を開けてくれた。

 初めに雷さん、源十さん、僕、金茶、童、がカフェへと入り、癒麻さんが最後にカフェに入ろうとした。が、癒麻さんが何かにぶつかった。まるで、癒麻さんの目の前に見えない壁があるようだった。


「あれ、おかしいな」


 癒麻さんがもう一度入ろうとしたが、また何かにぶつかった。


「癒麻さん……こちらを触ってみてください」


 吉田さんが、癒麻さんに何かを差し出した。それは、人の形をした紙——式神だった。

 癒麻さんは、差し出された式神に明らかに拒否反応を示した。

 

「どうされましたか、触るだけでいいんですよ」


 吉田さんが、式神を癒麻さんに近づけると、癒麻さんが一歩後ろに引いた。


「あ、後ろ」


 吉田さんは、声に反応した癒麻さんが後ろを向いた隙に、式神を癒麻さんの体に投げた。すると、式神があっという間に炎に包まれ、塵となり地面に落ちた。


「おい、どういう事だよ」


 雷さんがカフェの中から、吉田さんに向かって問う。


「癒麻さんの身体に術が仕掛けられているみたいです」


 吉田さんがもう一枚の式神を、癒麻さんに向かって投げた。

 すると、今度は癒麻さんの身体全体が炎に包まれていく。


「はっ、何やってんだよお前!!」


 雷さんが声を荒げ外へ出ようとした。が、見えない壁に阻まれて外に出られない。


「バレたか……勘が良いんだねアンタ」


 炎が消え、現れたのは、顔の左半分だけが焼き爛れ、爛れた部分に文字がビッシリと書き詰められている癒麻さんの姿だった。

 何とも言えない悪臭が鼻を突いた。

 僕の後ろに居た雷さん、源十さん、金茶、童が僕を守るように、前へ出て来た。


「まじかよ……あれって」

 

 源十さんが身震いをした。

 雷さんの額に汗が浮き出ている。

 金茶の毛が逆立ち、童の唾を飲む音が鮮明に聞こえた。


「あなたは……癒麻さんでは、ないですね」



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