再会
景色も変わり、辺りは高く伸びた木で囲まれていてなんだか空が遠く感じた。
「無事だったか、雅」
頭に大きくて暖かい手がぽん、と置かれる。
土の上に落ちる自分の影を大きな影が吞み込んだ。
頭を上げると、そこにはうっすらと涙を浮かべ微笑んでいる大柄な男が僕を見下ろしていた。
「あぁ、俺の事は覚えていないんだったな……」
僕の頭をわしゃわしゃと乱している時の顔は、寂しそうだった。
「でも、俺にとっちゃ記憶が無かろうが、雅が大切って事には変わりないからな、当たり前のことだけど。俺は鬼火って妖怪だ。名前は源十。好きに呼んでくれ」
鬼火、名前を源十というその人はにかっと白い歯を覗かせて笑った。
「源十さん……て呼んでもいいですか、改めてよろしくお願いします」
「勿論だよ、こちらこそ、またよろしくな」
源十さんの目元に、また涙が浮かんでいる。
「雷とそこの……これは酷いな……」
源十さんは、地べたに力なく倒れている雷さんを見た後に、気を失ったまま座っている吉田さんを見て眉を顰めた。
「童は雷を運べ、俺はこいつを運んでく」
小さい体の童に雷さんを運ばせるのは酷じゃないかと、手を貸そうと一歩踏み出した時、童はヒョイと雷さんを背に負ぶって歩き出した。
「あいつを怒らせたら恐いぞ」
源十さんは片目を瞑り微笑んだ。
源十さんと担がれた吉田さんと共に土の道を歩く。
両端に木々が生い茂る森の中。鳥のさえずり、川の流れる音が静かに響く。見渡す限り木、木、木。
先程まで前を歩いていた童と雷さんの姿はすでに見えない。
今僕たちが何処を歩いているのか分からなくなり、ずっと同じ場所を歩いている錯覚に陥る。
「心配するな、もうすぐ着く」
源十さんは僕の不安を読み取ったのか、優しく微笑んでそう言った。
源十さんの言葉通り、前方に大きく聳え立つ石造りの鳥居が見えた。
鳥居の先にも今と変わらないどこまでも木に囲まれている景色しか見えない。まだ歩かなければ、源十さんが目指している場所には着けないのだろうか。
ようやく鳥居をくぐりぬけた。
「着いたぞ、お疲れ様だ」
目の前に広がっていたのは、辺り一面の木、ではなく大きな洋風の屋敷だつた。屋敷の周りには二メートル程の塀が囲むように設置されている。
源十さんと共に屋敷へ入る。
「雅様~!!」
廊下の奥から何か小さい物体が高速でこちらへ向かってくる。僕は咄嗟に腕で頭を守った。
段々と音が近づいてきて、勢いを失わずに僕の頭にぶつかって来た、というより頭頂部に張り付いてきた。
ボフっ――。
「ボフ?」
瞑っていた目を開けるとそこには、ゆらゆらと揺れる尻尾があった。




