第七話 能力雪合戦⑥
氷河は正面と背後から大量の雪玉を喰らって雪面に突っ伏した。すぐに学園長――罪人罪人は首から下げた笛を吹いた。みんなが動きを止めたことを確認すると、罪人は雪面を歩き、氷河の元に向かった。
氷河の側まで来ると、罪人はしゃがんで目を確認する。氷河は白目を剥き、完全に気絶していた。
「水刃氷河、気絶によりリタイア! 菫チームは残り九人!」
罪人はそう告げると、氷河を肩に担いでフィールドの外に出た。笛を吹いて再開の合図を出すと、罪人は校庭に座って氷河を自分の体に預けた。その瞬間、男子たちの羨ましそうな視線を感じ取った。
そんな男子たちを可愛いなと思いながら、罪人は氷河の頭を撫でた。隣に座った雪乃は氷河の傷を癒すかのように、お腹と背中に手を当てていた。――ジャージの中に手を入れて。
「……冷たっ!」
氷河は雪乃の両手の冷たさで目を覚ましたようだった。雪乃の両手は雪で覆われていた。雪を直接体に当てられたのだから、氷河がすぐに目覚めたのも当然といえる。
「ってか俺はなんで学園長にもたれかかってたんですか? まさか俺はリタイアしたんですか?」
氷河は罪人の谷間を覗き込みながら言った。
「ああ、氷河はリタイアした。だからリタイアゾーンにいるんだ。終わるまで私にもたれかかっていいからな。なんなら膝のうえに座ってもいいんだぞ」
未だに谷間を覗く氷河を罪人は穏やかな表情で見つめた。氷河は可愛い生徒なのだから、谷間を覗かれたところで嫌な気持ちになるはずがなかった。可愛いと思うのが親心ならぬ学園長心というものだ。
「お言葉に甘えて膝に座らせて……ん?」
「どうしたんだ?」
「いや、なんかお腹が痒いような」
氷河は言いながらジャージを捲った。お腹が赤くなっていた。まさかと思い、罪人は氷河のお腹に触れた。思った通り、お腹は異常に冷たかった。雪乃がお腹を冷やし過ぎたのだ。その結果、お腹が赤くなり、痒みが発生したのだろう。チラリと雪乃を見ると、申し訳なさそうな表情で氷河を見ていた。
「ごめんなさい、氷河君。お腹を冷やし過ぎましたね。ですが、安心してください。ちゃんと温めますから。お腹だけじゃなく、全身も温かくなりますからね。――雪の住居」
リタイアゾーンにブロック状の雪が積み重なったドームが出現した。イグルーとはカナダ北部で暮らすイヌイット族がブロック状の雪を積み重ねて構築した住居のことだ。かまくら式ではなく、イグルー式にしたのは雪乃曰く、『名前がかっこいいからです』だそうだ。
「さあ、氷河君、入ってください」
氷河は雪乃に促されるまま、雪の住居の中に入っていった。雪乃も中に入ると、氷河のジャージを脱がし、上半身裸にさせた。お腹に直接、雪の住居内の熱気を当てて温めようとしているのだろう。
「学園長も入ってください」
「いや、私はいい。中に入ったら、フィールド全体を見れないからな。氷河のことは任せたぞ、雪乃」
「任せてください、氷河君は私がめいいっぱい可愛がりますから」
雪乃はそう言うと、居心地良さそうにしている氷河の頭を撫でた。罪人は微笑むと、雪の住居から目を離し、フィールドへと視線を戻した。
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