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蒼と葵  作者: よしくん
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第二十八話

無事に?ホームルームが終わり、その後は休み時間の度に話しかけられたけど、取りあえず時間が短かったり佐山が毎回五月蝿いぐらい俺に話しかけてくるものだからそれ以外の連中にはさほど騒ぐこともなく。まぁ佐山が邪魔で近寄れなかったとも言うが・・・


午前中の授業まで終わり学校での昼飯は久しぶりだ。また佐山が話しかけてくるかと思ったけど、学食に行くらしく悔しいそうにこちらを見ながら教室を出て行った。俺は、いつもの様に翔太と食べようかと翔太の所に弁当を持って行くと翔太がちょっと困ったような顔をしていた。


「ん?どうした翔太、弁当一緒に食おうぜ。」


「あ、あぁそうだな。」


そういいながらやっぱり困ったような顔をしていた。


「もしかして誰かと食べる約束していたか?それならそっちと食べていいぞ。俺一人で食うから。」


そう言ってその場を離れようとしたら引きとめられた。


「まて蒼、別に誰とも約束してないから大丈夫だ。一緒食べよう。」


翔太の了解を得たので向かい合わせに座る。まだ、困ったような顔をしてこちらを見ようとしない。もしかして怒っているのか?騙すような事したからここはちゃんと謝っておかないといけない思い翔太に謝罪した。


「騙してごめんな。俺がこんな状態で入院していたから誰からも見舞い受け付けてなくて・・・来てくれようとしたんだってな。それにホームルームでのドッキリも住吉の作戦だったんだ。ごめんな。」


そう言うと翔太が慌てて返答してきた。


「あ、蒼・・・別に謝ることない。おれは全然気にしてないから、まぁ突然女の子になって現れたのは驚いたけどな。まさか朝声かけてきたのが蒼だなんて気がつかなかったよ。変な態度で悪かったな。」


「気にしてないよ。俺も声かけた後にしまったと思ったよ。自分の姿のこと忘れてつい翔太に会えたのが嬉しくて声かけちゃったからな」


そう言って照れ笑いをしながら翔太をみた。すると翔太の顔が赤くなっていた。


「翔太どうした?顔が赤かいぞ。熱でもあるんじゃないか?」


「だ、大丈夫だ。なんでもない。気にするな」


「そうか?ならいいんだけど」


翔太が慌てていたようだけどなんでもないならいいか、まぁ翔太は風邪なんか引かないだろうしな。


「とりあえず弁当食べようぜ。」


「あぁそうだな食おう。」


そう言ってお互い弁当の蓋を開けた途端、俺は慌てて弁当の蓋を閉じた。


「蒼どうした?なんでまた弁当の蓋閉めてるんだ?」


「あ・・・いや・・・なんでもない」


「なんでもなくないだろ、もしかして空の弁当でも持ってきたか?見せてみろよ。」


そう言って翔太が俺の隙を突いて弁当箱を奪うと蓋を開けて中身を見てしまった・・・


「・・・は、はは・・・あははっ、凄いだろ俺も開けてびっくりだよ。」


もう笑うしかなかった。今朝やけに張り切って母さんが弁当作っていたのは知っていたけど、まさかこんな弁当になっているなんて・・・


「な、なんだよ。この弁当・・・おばさんが作ったんだよな?」


俺は無言で頷いた・・・


「これってやっぱり蒼が女になってそれに合わせて作ったのか?」


「多分そうかと・・・思うけど、この意味どう受け取ればいいんだ?」


さっきまで腹が減ってどうしょもなかったのに食欲がどっかに言ってしまった・・・

弁当の中身は今までなら弁当箱の半分がご飯で残りに唐揚げやハンバーグ、メンチカツなんかの茶色系のおかずが残りの半分を占め申し訳ない程度にブロッコリーが一欠片入っておしまいだったのに今日の弁当は、ご飯は弁当箱の4割程度で残りの部分に今まで俺の弁当の中に入ることがなかったような色鮮やかにおかずが詰まっていた。


中にウインナーが入っていたが、それはタコさんとカニさんに加工されていた。野菜もバランスよく入っているし、極めつけはご飯に書かれた文字・・・

『アイラブユーあおい』とか書いてある。どこの新婚カップルの弁当だよ・・・一体どれくらい手間暇かけて作ったのだろうか今までとあまりにも違いすぎるだろう。勘弁してくれ・・・


「もしかして蒼のおばさんって女になったこと喜んでいるのか?そうでもなきゃお弁当ここまで変わらないよな・・・」


「すげー喜んでいるのかと思うよ。退院してまず洋服買いに一日付き合わされたから・・・着せ替え人形ような一日だったよ。」


「そりゃーたまんねぇな。俺じゃ耐えられない。良く我慢できたな。」


「俺も逃げたかったけど、こんな体になっただろ、着られる服が全く無くて困っていたし、考えても見ろ女物の服なんて、なに買っていいかわかるか?」


「俺には無理だなぁ」


「だろう。だからひたすら我慢だったよ。特に下着はきつかった。ありゃ目の毒だ。どこ見ても店の中が下着だらけてどこ見ていいかわからなかった。」


買い物の日の事を思い出して恥ずかしくなり顔が熱くなった。


「蒼・・・その照れている姿すでに女だな。こっちが恥ずかしくなるこら普通にしてくれ。」


「あ、すまん。思い出して恥ずかしくなった。」


そんなこと言われてさらに恥ずかしくなったがごまかす為に話題を無理やり変えた。


「と、とりあえず食おうぜ。」


「そ、そうだな」


なんか微妙にぎごちない雰囲気が漂ってしまったが無視するかのように弁当に箸を伸ばした。

弁当食べている間、俺も翔太も何を喋っていいかわからず無言で食べてしまった。結局あまり食欲が戻らないままなのに弁当は他の誰かに見られるのが恥ずかしくて手早く平らげてしまった。


「蒼、これからはどうするんだ?」


弁当平らげて片付けていると翔太が沈黙を破って話してきた。無言の雰囲気がやだったのでそれにちょっとホッとして返事をした。


「どうするってこの後の昼休み?」


「ちげーよ。今後の生活だよ。」


「あぁ、そっちね。一応先生達とも話して女子として扱われる事になっている。だから男女別れるような授業は女子と一緒なるかな。体は正真正銘女だからな。」


「そっかぁ、これからは一緒に体育はできなくなるのかぁ。ちょっとさみしいな一緒にやっていた蒼がいなくなると・・・」


「なに言っているんだよ。別に同じクラスなんだから寂しくないだろ。」


「そうなんだげどな。あまりにも容姿が違うからな蒼が違う人になったみたい感じてな。」


「確かに体は、まるっきり変わってしまったけど、中身は今までの俺だよ。」


「いや、わかっているさ。こうして喋っていると声は全然違うから違和感はあるが明らかに蒼の癖や喋り方だしな。」


「だろう。何も変わって無いわけじゃないけど、俺は俺だよ。」


「まぁ慣れるしかないかぁ。」


「そうそう、慣れてくれ。俺もこの体にまだ慣れてないとこもあるけど、慣れる為に頑張ってんだよ。」


「努力するよ。こうして向かい合って見ると確かに面影は残っているよな。」


「俺は俺だからな。」


「こうしてまじまじみるとすげー変化だよな。髪は赤くなってロングになっているし、背も低くなってないか?」


「そうなんだよ。10センチぐらい背が低くなっているんだよ。目の高さが急に変わったから最初はすげー違和感があったんだよ。」


「突然背が低くなったらそうだろうな。」


翔太と最初は何処と無くぎこちない感じだったけどこうして話しているうちに普通に話が出来る様になっていた。

気持ちも落ち着いて入院中の出来事とか話そうかとしていたら、女子生徒が近づいてきて声をかけられた。


「双葉くん・・・いや双葉さんと呼んだ方がいいかな?」


声の主の方を見ると長い髪を三つ編みにして縁の細いシャープな眼鏡をかけた。クラスで一位二位を争う人気の眼鏡美少女その上クラスの委員長の花咲さんだった。


「別にどちらでもいいよ。呼びやすい方で構わないよ。」


急に話しかけられて呼び方を確認されて思わず答えたけど、俺の頭にハテナマークが浮かんでいた。


「そしたら双葉さんって呼ばせてもらうね。ちょっと話があるから一緒に来てもらえる?」


え・・・呼び出し?もしかしてこのまま体育館裏とかに連れて行かれて「テメェー生意気なんだよ」とかやられるパターンか・・・


ちょっとビビリながら答えた。


「・・・ここじゃだめ?」


「そうね。ここだといろいろ問題ありそうだから一緒に来て。」


俺は翔太に「ちょっと行ってくる」と言って立ち上がり席を離れようとしたら翔太に呼び止められた。


「蒼、俺の一緒に行こうか?」


そう聞かれて不安だった俺が一緒に来てと言おうとする前に花咲さんに答えられてしまった。


「速水くん、悪いんだけど一応女同士の話になるから遠慮してもらえる?」


そう言われた翔太は、「あ、あぁ」と答えて沈黙してしまった。


翔太もう少しがんばれよ・・・と心の中で思いながらも、「翔太、大丈夫だよ。一人で行ってくるよ。」と答えて花咲さんと一緒に教室を出た。

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