23話
ノった筆はいづこへ?
未来へ。
12/19 羽→翅に変更
「──と、まあ。こっちはこんな感じだった」
既に宿屋に帰って来ていたトータに一通り話終える。
「うーん。なるほどなぁ……こっちで聞いた話も迷宮が此処等じゃ一番難易度高くて……後は森の奥の奥に入ればそれなりに強いのが彷徨いてるかもしれない、って話だった。それ以上奥は山脈なんだと」
「山脈……アルフェが居たとこか?」
『アタシらが住んでたのは山に入るか入らないかって感じの所だよ。あそこたまにデカくて怖いのがウロウロしてるんだよねー』
「……それ、どのくらい──」
『強いかって?少なくとも今のじーちゃんよりヤバイと思う。ちなみに空飛ぶから出会っちゃったら終わりだよ~』
「「…………」」
だから間違っても行ける所じゃないぞ、と念を押してくるアルフェ。
「……まあ、レベル上げは当てが無いわけじゃないから置いとくとして……装備問題だ」
「だなー。俺もっとゴツいのが欲しいわ!後、盾!」
「俺ももう少し長めの武器が欲しい。流石にもう小剣は軽すぎる」
しかし金が足りない。
7万ぽっちで揃えられる物などたかが知れている。
「……三千万」
クレハがアルフェを見やる。
『ひっ!?お、おい!何考えてんだよ!やめろ!』
クレハの視線に怯えてトータの後頭部に隠れるアルフェ。
「おいおいクレハ……流石にそりゃあ……」
「冗談」
ホッとするのも束の間。
「半分はな」
クレハはそんなことを宣う。
「要はこのままだと勝負にもならなくて依頼達成できないからお前も金集めに協力してくれよって話」
『それでアタシに身体を売れって……?』
「それだと何か、アレだな……俺が言ってるのはお前の身体の方じゃなくて妖精の塵の方だ」
妖精の塵。アルフェの翅から出る、と魔法屋ババアが言っていた物だ。
『……ああ、粉々の事?そういやあの怖い人間が言ってたかも……』
「あの話しぶりからして結構売れる物だと思う。あれを売って資金の足しにしたいんだが……」
『んー、お前らそのカネってのが無いと強いブキとか手に入れられないんだろ?粉々くらいなら別にいいけど』
「助かる」
(恐らく)安定供給可能な収入源である。
しかしこれはあくまでも補助的な役割。
「──それに加えて迷宮にも篭る。取り敢えずLv,25くらいまでは……そこから先は森の奥地に賭けるしかない。山脈に居るっていうヤバイ奴は無理だろうが……」
「25よりちょっと上の奴らが居るのを願うしかねえか」
「……そこら辺はどんな感じなんだ?アルフェ」
『アタシらが住んでた所らへんは今のじーちゃんよりはヤバくないぞ。でもお前らの居た辺りよりはヤバめかも』
「なら期待できるな」
基本方針は決まった。
それでは早速──
と行きたい所ではあったが。
「そろそろ6時だから俺は一旦抜けるよ。風呂出たらまたやる」
とはクレハ。
「マジか!?もう6時かよ!?俺もそうするわ」
昼過ぎから始めてゲーム内で約三日。
リアルの方では6時間経つか経たないかといった所である。
『え?何の話?』
勿論アルフェには分かる筈もなく。
しかし説明しておかないと酷く混乱させる事になりそうであった。
「……えっとな……俺らこの後すぐ消えて一日くらいしたら、また出てくるから……」
『えっ?どゆこと?死ぬの?』
「いや……えっと……」
トータがちらっと目配せしてきたのでクレハが変わって説明することにした。
「簡単に言えば俺らの本体は別の世界にあって、そっちで飲み食いしないとならんから一回こっちの世界から消えないとならん。んでこっちの世界は向こうの世界の12倍くらい早く時間が流れるから、向こうで飲み食いしてる間にこっちだと一日くらい経つんだよ」
『……あー、妖精郷みたいな感じ?』
「なんだそれ。いや、まあいい。多分そんな感じ」
『へー、難儀だなぁ』
どうやら一応納得してくれたようなので良しとする。
「俺らが居なくなってる間に下手に動き回るなよ。見付かったらマジで標本にされるかもしれん」
『分かってる分かってるー。アタシはここで寛いでますよっと』
「……本当だろうな……」
そんなアルフェを横目に二人はログアウトした。
一階に降りると母親が夕飯の準備をしていたので炊飯器の中の白米をひっくり返すなり皿を並べるなりして適当に手伝う。
洗濯物を降ろし終わった辺りで父親が仕事から帰宅した。
暫くすると夕飯が出来たので二階の妹を呼んで、席について夕食を食べ始めた。
妹は大体10分遅れて席に着くので、ほぼ入れ替わりで風呂を沸かしに行く。
10分強は暇なのでリビングでソファーに座ってネットでも眺めているとトータが見付けたと思しき例の攻略情報サイトを見掛けた。
(……効率的なレベリング……金策……NPCとの会話……)
情報はあるものの内容としては要領を得なかったり、具体性が無かったり、今の暮羽のプラン程良さげではなかったり……。
(……情報は独占してこそ……)
スタートダッシュをいかに駆け抜けるか。
風呂が沸いたので入る。
湯船に浸かる前に体を洗ってよく流せ、白土家のルールである。
ちなみに暮羽は先に頭を洗って次に身体を洗う。
その後は湯船に浸かって物思いに耽るのだ。
(……アルフェ……あいつ、NPCだよな……)
あのゲームのNPCはおかしい。
明らかにプログラムとかAIの領域を超えているとしか思えない。
エキストラの役者でも雇っているのかと思う程、あまりにも会話が自然過ぎる。
(……まさかあんな説明まですることになるとは)
あそこまでリアルなら──。
「……やめよう」
あまり気分の良い考えではない。
湯船に浸かっているとアレコレ考えてしまうので今日は早めに上がる。
身体を拭いてダボッとした寝間着に着替えた後、歯を磨いて自室に引っ込んだ。
白土家の役割
父親…仕事(残業あり週休2日で特定の曜日が休みとかは決まってない)、洗濯、買い出し、夕飯の準備
母親…仕事(残業あり土日休み)、買い出し、夕飯の準備、メダカの世話
暮羽…洗濯、買い出し、風呂全般、夕飯の準備
妹…王




