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20話

──少し時間は遡り、トータが吹っ飛び倒れて起き上がった辺り。


「う、ぐ……ぉぉ」


何とか立ち上がるも酷く視界が揺れてフラフラと近場の木に手を着く。

まさか脳震盪ではあるまいが……


(今ので何割やられた……?二割くらいか……?)


ステータスを開いて確認してみれば生命力(VIT)は175/225。

木に衝突しただけで50持っていかれた。

攻撃自体に直撃していたら150は持っていかれたのではないのだろうか。


『大丈夫か!?』


霧に隠れていたアルフェが出てきてトータに何か魔法を掛け始めた。


「……っと!そうだ!クレハは!?」


『あっちで何とか耐えてるみたいだ!』


「すぐ加勢しねーと!魔法助かった!」


『あっ!おい!』


すぐさま駆け出すトータ。

丁度邪霊樹精(イビル・トレント)はトータに背を向けクレハを追い回しているので奇襲できる。


(俺の全力を叩き込む──!)


トータの筋力(STR)225に突進を加えた大上段からの一撃が振り下ろされる。


「ぉぉおおおおお────ッらァ!」


メキメキッ、と邪霊樹精(イビル・トレント)の背中の樹皮を裂いて進むトータの剣。

しかし──


「いや硬っった!?」


表皮を多少傷付けた程度であった。

と、同時に左右上からトータに襲い掛かる根。


「おわ!?」


大慌てで跳び下がり回避する。


「硬すぎんだろ!?」


嘆きつつトータも逃走を開始。

邪霊樹精(イビル・トレント)は更に根を三本追加。

これで八本の根が二人を襲う。


「うおおおお!?クソッタレぇぇぇぇ!!」


ドスドス、ドスドスとトータの背後に突き刺さる四本の根。


(──これ以上は無理か)


クレハは撤退を決意した。


「アルフェ!撤退だ!」


『了解!霧懸ける!』


邪霊樹精(イビル・トレント)の周囲を再度薄い霧が包み始めた。


(このまま逃げ切る)


そう考えていたクレハ。

だが──


ドスッ。


鈍い音。

視線を落とせば自らの胸を貫く根。

それは目の前の地面から生えていた。


「ご、はっ」


ごぷりと喉を駆け上がってきた鉄の味を吐き出す。

脊椎を駆け上がる様な鈍く鋭い痛みに顔を歪ませる。


「クレハ!?」


『ヤバイぞ逃げろ!』


耳鳴りの中僅かにトータ達の声が聞こえたが、最早落ちる目蓋と上向く瞳が、理解させる間も無くクレハの意識を黒く染めていた。

身体を動かしいていた力の感覚が無くなると同時にクレハは死んだのであった。




「うおおおい!?クレハ死んだ!?」


即座に濃霧の中に飛び込み撤退を敢行したトータはアルフェに事実確認。


『し、死んだ!多分!大丈夫なのかよあれ!?人間って死んだら死ぬんじゃなかったか!?』


「それはマジで生き返るから大丈夫!それよりアイテム回収だな。場所分かるか?」


『アイテムの場所は分かんない……でもさっきアイツが死んだ所は覚えてるから』


「オッケー。それじゃあ邪霊樹精(アイツ)があそこから移動したらコッソリ回収して街に帰還するぞ」




「────ぁあッ!?」


バッ、とクレハが飛び起きる。

息も荒らげ冷や汗が全身から噴き出していた。

場所は昨夜も宿泊した安宿の馬小屋、干し草の上。


「──はぁ……っ……なるほど、ここで……復活するのか……」


とりあえず呼吸を落ち着かせつつ先程貫かれた胸に手を当てる。

穴はない。服装は白いシャツ、黒いスラックス。つまり初期装備である。


(本当に、死んだのか……)


先刻の死を思い出す。

血の気が引くとはこの感覚であろう、クレハは思わず口元を抑えた。

ぶるり、と全身に悪寒がする。


(これは……二度と死にたくないな……)


ほう、と一息ついて多少落ち着くとトータにメッセージを送る。


『生き返った。場所は馬小屋』


『了解。アイテム回収して帰る』


取り敢えずあっちの方は問題なさそうだったので一安心ではあった。


(……最後のアレ、地面から出てた……)


あんなものどう避ければ良いというのだろうか。

第一根っこの数が多すぎる。

恐らくまだ増やせるだろうに八本であのザマだ。


(火属性と氷属性が弱点かあ)


後〈対鉄弱化〉なるモノもあった。


(鉄が弱点?)


その割にはトータの渾身の一撃も大してダメージを与えられなかった様だが。


(いや、それよりレベルだな。レベルが足りない)


何せコチラは15や16そこらだというのに向こうは35。

それだけでも戦力格差甚だしいのにあのアビリティの高さと異常な生命力だ。


(……あの〈フィールドボス補正〉ってやつのせいかな……)


可能性は高い。

複数人を相手にする事を想定されている──つまりボスは生命力が大幅に増強されるのではないか。

クレハはそう仮説立てた。


(……レベル上げは絶対として……それだけじゃ勝てないよなあ……)


アビリティの成長値が段違いだった。

恐らく種族による違い。

単純にこちらが35になっても向こうが上という事だ。

課題は山積みだ。


(……兎に角、今は少し休みたい……)


干し草に大の字に寝転んで屋根を見上げるクレハであった。

アルフェが掛けてたのは治癒魔法の類い

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