16話
少し早めの昼食をモソモソと食べ終えたクレハとトータは迷宮へ向かう。
その際、昨日作った松明の燃料──つまり松脂の染みた樹皮を新しい物に取り替えておく。
「そういや次スケが出てきた時だけどさ」
トータから迷宮入り口の階段を降りる最中に提案された話である。
「またスケ一匹だったら暫く俺に斬り合いさせてくんねえ?」
「なぜ?」
「いや、昨日クレハがスケと斬り合ってるの見てて俺の剣術の拙さを実感したんだよ。ここらで鍛えとかねーとこの先もっと差が開いて追い付けなくなっちまう」
「成る程?確かにスケなら人型だし良い練習相手になるか」
「クレハの剣術スキルってどんくらいよ?」
「今は……片手も両手も2だな」
「俺1-2なんだよな」
「スケは3-2だったぞ」
「片手直剣じゃなくて片手半剣にしたら良かったかなぁ」
「それだと初期の筋力が足りなかったんじゃないか」
「あの凧型盾も欲しいんだよなぁ」
考えてみればトータの目指している壁役は大分金が掛かりそうではある。
武器に盾に鎧に……しかも盾や鎧は高性能な物にする必要があるだろう。
随分と大変な役割を選んだものだ。
「今日は真ん中にしようぜ!」
階段を降りた先にある三つの通路。
昨日は左、今日は真ん中を進むことになった。
通路の高さは変わらずトータが剣を大上段に構えて剣先が天井を突く程度。
松明の灯りを頼りに通路を進んでいく。
暫くするとカツ、カツ、と前から音がし始めた。
案の定骸骨である。
しかし──
「槍ぃ!?」
槍持ちの骸骨であった。
「骸骨槍使いLv,14らしい」
「剣以外も居るのかよ!」
これ見よがしに剣士などと付いていたのだからそれ以外が居ても当然ではあった。
トータはぼやきつつも戦る気はマンマンの様だ。
(この分だと弓スケルトンとかも居そうだなー)
一体なら良いが二体で片方遠距離持ちは怖い。
しかもあの硬さで。
やはり迷宮は一人で骸骨一体を倒せて最低限なのだろう。
「うお!うおっ!?」
槍の突きに対して何とか捌いているトータ。
(確かに“点”の攻撃は捌きにくそう)
骸骨の渾身の突き。
だがトータはそれを跳ね上げ大きく踏み込み──
「──っせい!」
乾坤一擲。
骸骨の腰に一撃。
やはり硬い。砕くに至らず。
骸骨はよろめいたのみで跳ね上げられた槍を再度振り下ろして来る。
両手で持った剣を横にして受けるトータ。
「うっ」
だが筋力の差でマトモに受けるのは堪えるようだった。
左に避けつつ受け流す。
更に骸骨に肉薄しつつ剣を左手に持ち替え、右手で槍を抑えつけた。
「食らえ!」
ガツッ!柄で頭蓋を殴り付けた。
骸骨の頭が大きく砕けた。
倒れ込む骸骨。
立ち上がろうとし始めたその首をトータの足が踏み抜いた。
「っしゃ──!勝った!」
「お見事。けど最後は剣術じゃなかったな」
「勝ちゃあ官軍よ!」
剣術スキル上げる目的だろうが、と苦笑いしつつ、消え行く骸骨を見ると──
「なんか落ちてるぞ」
「え?槍?」
「いやそれもだけど」
クレハが拾い上げたそれは青い結晶であった。
「なんだこれ?」
「なんだそれ」
大きさは指で摘まめる程度。
〈解析〉を使って調べる。
「……魔晶らしい」
「マナ?なんだそれ」
確か魔法ババアの話によると、生物が取り込んだ物を魔力、生物が取り込む前の自然な状態を魔素と呼んでいた筈だ。
マナと言うからには後者が固まったりした物なのだろうが、何故骸骨から取り込む前の物が固まって出てくるのか。
(骸骨は生物じゃないからとか?分からん)
「取り敢えず持っとけよ」
「おおさ」
トータは魔晶を仕舞うと戦利品の槍をまじまじ眺め──
「……これ鉄の部分少なすぎないか」
「取り外していくか。それ構えててくれ」
「え、こう?」
クレハが剣を大上段に構える。
トータが構えた槍の穂先。
木製部分に狙いを定め切り落とす。
「おおー」
トータは感嘆の声を上げ、槍の穂先──銅貨2枚くらいにはなりそうな屑鉄であったが──を大事に仕舞い込んでおく。
その後も二人は迷宮を進んでいく。
道中、二体の骸骨に同時に遭遇したが──
「──っと」
クレハが骸骨槍使いの脳天を、剣の柄でカチ割り倒す。
後ろの方ではトータと骸骨剣士が戦っている。
「おお!?うおあ!!」
なかなか大変そうであったので加勢する。
背後から骸骨の横腹に蹴脚。
壁に叩き付けられた骸骨の頭蓋を間髪入れず踏み潰した。
「た、助かった……」
尻餅を付いて息を吐くトータ。
「流石にキツいか」
「いやマージでヤバい。スキルレベル二つ上じゃ勝てんわこりゃ」
凌ぐのが限界といった所だろうか。
逆に槍はそんなに手こずらなかった。
間合いの内側に入ってしまえば後は容易い。
(間合いを上手く取られると面倒臭いんだろうな)
戦利品の槍から穂先を取り外し懐に入れておく。
魔晶は残念ながら落ちなかった。
「けど何か掴んだ気はする」
トータはこの程度でめげなかった。
ぶん、ぶん、と剣を素振っている。
「取り敢えず戦利品拾えよ」




