10話
10/15 前回の話で一番最後の方の切り方が変だったので数行の文章を追加しています。
翌朝。
藁の上で寝るなど人生初の経験だったが存外に悪くはなかった。
宿屋の店主に礼を言いたかったがまだ起きていなかった様なので街の外に向かう。
朝食と向こうに持っていく食い物は……節約の為に我慢することとした。
驚いた事に守衛のオッサンは朝から門前に居た。
「そもそも衛兵が少ないからな」
とのことだった。
宿屋とギルドと魔法ババアの件で礼を言って森に向かう。
ソロで森に入るのは怖いが、レベルも上げたいし魔力による強化で試したい事もある。
平原を抜けて森へ。
途中で角兎が二匹程絡んで来たが最早敵にならない。
(角兎はLv,2とかなんだな)
加えて能力値がそもそも低い。
STRとQUIの成長値が9とか10とかで後の能力値は3とか5。
跳躍突進は掠りもしなかった。
ドロップは角一本に毛皮二枚、肉二塊。
(肉売らずに自分で焼いて食えば良くないか、これ)
そこら辺から薪を集めてくれば〈火属性魔法〉みたいな技能を覚えて火を着けられそうだ。
恐らくこっちの方が安上がり。
森に付いたクレハが行うのは魔力による強化のコツを掴む為の手立てである。
「〈自己解析〉」
まずは現在の魔力を確認。
MAG 68/70
「〈強化魔法〉」
昨日〈無属性魔法 Lv,3〉で覚えた魔法である。
想起される魔法陣と文字列、全身を駆け巡る魔力、そして──
「ぬぅお!?」
ギュン、と全身から何かが一気に抜けたような感覚。
その代わりに全身の肉に何かが流れ込んだかのような感覚。
「〈自己解析〉」
◆
クレハ Lv,7 男 人間
【称号】
〈御使い〉
【職業】
〈剣士〉
【能力値】
VIT:70/70(+0) (10)
MAG:36/70(+0) (10)
STR:70(+21) (10)
DUR:70(+21) (10)
QUI:70(+21) (10)
LUC:70(+0) (10)
AMP:70(+0) (10)
ATT:70(+0) (10)
…………
【付与効果】
〈身体強化 30%〉2:54
…………
◆
〈強化魔法〉。
魔力を30消費し三分間、筋力、耐久力、敏捷性を30%UP。
なかなかに強力だが──
(婆さんは魔力操作の延長として強化が出来るという口振りだった)
つまり術式、魔法陣や文字列の想起は必要ないということ。
それにこれは全身が強化されている。
(部分的に強化した方が効率的なんだろうな)
幸い、強化の感覚は分かりやすかった。
筋肉に魔力を流し込む感じである。
(3分勿体ないから早く敵見付けないと)
身体能力30%UPの効果は想像以上に高かった。
レベル7の素の身体能力でも明らかに現実の身体よりも高い。
それが更に突然向上し加減の仕方が少々難しい。
ものの──
「──ギャ?」
斥候の丸腰ゴブリンを発見。
ゴブリンの喉元に掴み掛かる。
そのままゴブリンを盾にしつつ、恐らく本隊が後続していると思しき茂みに突撃。
「──ギャ?!」「ギャギャギャ!」
案の定四匹程居た。
(剣、棍棒、弓二匹)
「ギャ!!」
二匹の弓持ちが矢をつがえ此方を狙う。
撃たれる前に近接一匹は潰しておきたい、所だがそれは欲張りと言うもの。
取り敢えず剣持ちの方が面倒なので蹴り跳ばしておいて、殴り掛かって来た棍棒持ちには手持ちの丸腰ゴブリンを盾に対応。
隙を見て棍棒ゴブリンの頭もがっしりホールド。
視界の端でキラリと光る矢尻。
クレハはしゃがみつつ丸腰ゴブリンと棍棒ゴブリンをクロスガードにし、二発の矢を受け止める。
勿論、動き出した剣持ちも忘れていない。
棍棒ゴブリンはもう必要ないので地面に叩き付けて踏みつけ固定。
空いた手で小剣を抜き、棍棒ゴブリンの眉間に突き刺す。
弓矢二匹が面倒だが、こっちは近付けば即座に二匹とも切り捨てられる自信がある。
面倒なのはやはり剣持ち。
クレハは弓矢二匹に向かって駆け出しつつ向かってくる剣持ちに丸腰ゴブリンを投擲。
てんやわんやしている内に斬撃二閃の下、弓持ち二匹を切り捨てる。
一匹は頚を薙いで、もう一匹は返す刀で頚を突く。
(これで一騎討ち)
丸腰ゴブリンはズルズル這って逃げようとしているが背中の結構ヤバそうな所に矢が刺さっているので遠くまで逃げることはできなさそうだ。
飛び掛かってくる剣持ちゴブリン。
ゴブリンは身長が低いので必然的に足元をよく攻撃してくる。
ハッキリ言ってそうなると面倒なので上から来ている今仕留めたい。
(──慣れてきた)
容易い。
剣は受けずに避ける。
強化された反応速度が剣の軌道を捉えていた。
すれ違い様にゴブリンの首を切り裂く。
その後必死に逃げようとしていた丸腰ゴブリンの背中に二度程剣を突き立てて仕留めた。
(強いな身体強化)
術式に依らない魔力操作による身体強化がどの程度になるかは分からないが器用貧乏能力値を補う事は出来そうだ。
(もうそろそろ3分だな)
これが切れたら次は魔力操作による身体強化を試す番である。
その前に剣持ちゴブリンからドロップした剣。
前回はあまりに錆と刃こぼれが酷いのでスルーしていたのだが──
(使い捨てくらいには出来るか)
切断は出来ないだろうが刺したり殴ったりはまだ出来る。
最悪投げ付ければいいので拾っておく。
結局午前中の狩果は角兎2匹、小鬼15匹、影狼2匹。
影狼からは爪、牙が落ちたがこれは売れないらしいのでスルー。
毛皮は1枚しか落ちなかった。
だがクレハのレベルは10にアップ。
これにてSPが500まで貯まったので〈火属性魔法 Lv,1〉〈無属性魔法 Lv,4〉を覚えた。
これできっかり0ポイント。
使えるようになった魔法は火属性〈発火〉、無属性〈魔力障壁〉〈隠蔽〉。
〈火属性魔法 Lv,2〉では〈火矢〉、〈無属性魔法 Lv,5〉では〈魔力弾頭〉が覚えられる。
(両方一旦保留だな)
攻撃手段を増やすには些か基礎が足りない。
まずは慣れるのが先である。
その為にも、昼食だ。
「〈発火〉」
集めた薪に着火。
少し魔力が抜けた感じがした。
〈解析〉より気持ち多いくらい。
角兎の肉塊に角兎の角を串代わりにぶっ刺して焼く。
(この角燃えたりしないよな)
生物から生えてる限り有機物なのだろうが、角質の塊というには硬い気がするので何とかなりそうではある。
それより肉塊をそのまま焼いているので中まで火が通るかが心配だ。
少し焼きすぎてる程度まで焼けたのでかぶり付く。
一応火は通っている……気がする。
不味くはない。
だがパサパサしている。
(水飲みたい)
気付けば殆ど水分を摂れていない。
(水属性魔法覚えりゃ良かった)
火、水、氷辺りは覚えておいた方が良いのかもしれない。
と、その時。
がさり、と茂みが揺れた。
「──!」
クレハは半焦げ肉を左手に持ち替え、小剣を抜いて構える。
今は森の一角にある少し開けた場所に居る。
囲まれると不味い。
半焦げ肉で片手が潰されているのも不味い。
──しかし、予想に反して茂みを掻き分け現れたのは──
「……っわぁ!?」
男性だった。
年の頃は20代程だろうか。
驚いて槍を構えている。
「……ってに、人間?」
「人間だよ。……もしかしてプレイヤー?」
「というと、君もプレイヤー?」
男はプレイヤーだった。
早く戦闘したくて武器を買ったらすぐにフィールドに出てきたらしい。
軽く話した後彼は一足先に森の奥へ消えていった。
(もう一つ焼くか)
次話投稿は超未定




