8話
2024/02/04 脱字修正。
ログアウトしたクレハだったが妙な現象を発見した。
空腹感が無い。
先程の腹が鳴るような空腹感がなかった。
勿論夕方5時過ぎなので多少軽食を食べたい気はするが。
(つまりあれはゲーム内のアバターが感じている空腹感だったのか)
何とも恐るべき再現性である。
クレハが夕食を食べた後、風呂から上がってきたのが9時前。
調べたい事があるのでまたログインする。
取り敢えず(アバターの)腹が減っているのでそこらの店で食べ物を買うことにした。
「まいどあり」
兎肉の串焼き、一本150リル。
それを二本買ったので300リル。
残金8190リル。
なかなかデカイ串焼きなので満足した。
素材を見てもらう為にドワーフ爺の鍛冶屋に向かう。
店内に入るとドワーフ爺は見当たらない。
「誰かいないかー?この素材が使えるか教えて欲しいんだがー」
と、呼び掛けると、店の奥からドワーフ爺が出てきた。
何とも面倒臭そうな表情で。
「……ああ、あの御使いか」
「この毛皮について聞きたい」
「影狼の毛皮か。ふん……見せろ」
クレハから受け取った毛皮を広げてしげしげと眺めるドワーフ爺。
「……レベル7の影狼か。……悪くない。あの森で取るなら最高級の素材だ」
「何に使える?」
「防具だ。外套でもいい」
「頼んで良いか?いくら要る?」
「……鉄板を入れないなら大銀貨6枚。入れるなら8枚でやってやる」
「なるほど……」
最低6万リル。
いや、トータに渡す予定なので鉄板は必須。
つまり8万リル。
圧倒的に金が足りない。
「……俺が使うんじゃなくて仲間に使ってもらおうと思ってる。俺より一回りデカイ奴なんだが、値段は変わるか?」
「一回り程度なら変わらん」
「分かった。金が貯まったらまた来る」
そう言うとそそくさと店を出た。
あまりにも金が足りない。
金策を練る必要がある。
次は魔法ババアの所だ。
今思えば恐らくあそこが守衛から聞いたスキア魔法店なる場所だったのだろう。
「すみませーん」
店内に入り例の如く呼び掛ける。
やはり奥から婆さんは面倒臭そうな顔をしていた。
「……あの妙な魔力操作の御使いかい、何の用だい。今日はもう店じまいだよ」
「いえ魔法を教えて貰いに来たんですが。守衛の人に聞いたらここで教えて貰えばいいって」
「チッ、エダルトんとこの長男坊かい。全く余計な話を……」
「勿論今度は金も払いますよ。前教えて貰いましたし銀貨3枚でどうです?」
「……ふん、座りな」
守衛のオッサンも魔法店の婆さんも『魔力の操作』と言っていた。
魔法とは何が違うのだろう。
もう一度〈自己解析〉を使ってみろ、と言われたので使ってみせると──
「やっぱりアンタの魔力操作はおかしい」
などと言われた。
曰く「魔力の流れが単調過ぎる」らしい。
ババアの話によると大気中に漂っている魔素を取り込んで体内で変換した物が魔力らしい。
魔法は術式という現実改編式の内容を魔力を使って再現する技術らしい。
「アンタと話して合点がいったよ。アンタ、自分で魔力を操作してないね。魔法に呼応して勝手に魔力が動いてんのさ」
ババアが言うには魔力を先に動かして魔法が発動するのが普通。クレハのような魔法を発動しようと思ったら勝手に魔力が動く、というような現象は不可解極まれり、らしい。
「まずは魔力の動かし方を学びな。術式……魔法を覚えるのはそれからだよ」
魔力の操作を覚えれば魔法など使わずとも身体能力を強化したり、なんなら魔力の塊を飛ばして攻撃も出来るらしい。
幸いクレハは〈自己解析〉を使えば勝手に魔力が動く。
その感覚を掴んで操作すれば後は技量の問題らしい。
「他の魔法はどうやったら使えるようになるんです?」
「魔法スキルのレベルが上がれば一段階上の魔導文字に触れることが許される。けどそれは魔力を扱えるようになってからだよ」
その後婆さんに3000リルを渡して店を出た。
想像以上の収穫である。
(魔法スキルのレベルを上げる……)
クレハは〈無属性魔法 Lv,1〉なるスキルを既に覚えていた。
それを上げれば魔法が更に使えるようになるのだろう。
そしてSPなる謎のポイントが貯まっている。
現在レベル7なので700ポイント。
恐らくこれはスキルのレベルを上げたりするポイントなのだろう。
(……後で試してみるか)
取り敢えずこれは後回しにして冒険者ギルドに向かう。
目的は有害度に応じた報酬を調べること。
(少しでも足しになればいいけど)
結論から言えば。
それなりだった。
小鬼はLv,5以下なら一匹100リル。
影狼はLv,10以下なら一匹1000リル。
昨日の16匹の小鬼の内、クレハが仕留めたのは10匹。
これに影狼が一匹足されて2000リルの収益となった。
これにて残金7190リル。
なんとも飢じい。
そこでクレハは遂にクエストを受けることにした。
「薬草の採取」というクエストである。
薬草一本300リル。
質によっては色も付けてくれるというクエストだ。
(金策になる、といいな……)
今は藁にも縋り付きたい。
(……取り敢えず、今日は休みたい)
疲労感が酷い。
空腹感が再現されているくらいなので恐らく休養も必要なのではないだろうか。
守衛のオッサンが言っていた安い宿屋に行きたい所だが金があまりにも無い。
(……いや、幾らで泊まれるか確認するくらいはしておいた方が良いだろう)
そんな事を思いつつ宿屋に向かった。




