追憶のひとときよ慟哭せし今よ
むか〜し、むかし、あるところに、黄金色の毛並みを持つ妖狐がいたのじゃ。
妖狐は現世とあの世の狭間に住んでおり、よく、人里に下り、ちょっかいをかけて遊んでおったのじゃ。
そんなある日、狭間にて、生き倒れている男を見つけたではあらぬか。
妖狐は、その男をどうにも、見捨てられず、うんとこしょ、どっこいしょ、と重い男を何とか、家へと運び込んだのじゃ。
人が生き倒れているところなど初めてでの、妖狐はどうしたら良いのか分からず、ネギを口に突っ込むなど少々、お転婆な所もありながらも、一生懸命に看病をしたのじゃ。
その甲斐もあって、その男は徐々に回復していったのじゃ。
__________???年前___________
「うぅ…」
男は唸り声を上げながらも何とか体を起こす。
全身には包帯が巻かれており、なぜか口の中に青臭さが広がっている。
どうやら俺は助かった?ようだ。
ドタドタ
と何やら慌ただしい足音が聞こえる。
ガタ!
と襖が大きな音を立てながら開く。
襖から出てきたのは、なぜか頭に狐の耳を着けた女子だった。
「………」
沈黙が訪れる。
男にはこの空気が耐えられず、とりあえず話しかけてみる事にした。
「貴女が俺を助けてくれたのか?」
「………」
自分の声が木霊したかの様な錯覚を覚える、それほどに、この部屋は静まり返っていた。
「違うのか?」
狐耳を着けた女子は、ハッ?!と我に返る。
「…い…いや!わっちが生き倒れとるお主を、助けたのじゃ!」
「いやはや、それはありがたい、旅の飯を失くしてしまい、生き倒れてしまった、できれば、何か恵んでくれないか?」
女子に頼るのは少々気が引けるが生きていく為だ致し方ないと割り切る。
「お主、ここをすぐに出ていくつもりか?」
とおなごが聞いてくる。
「そのつもりだ、看病に物を恵んで貰っては、いつまでも居座る訳には行かないからな」
「その、傷だらけの身体でか?」
おなごの言う通り自分の身体には包帯で見えないが、まだ治りきっていない無数の傷が至る所にある。
「なに、飯を食えばこんな傷などすぐに治る」
グゥ~
と男の腹の虫が暴れだす。
クスwクスw
とおなごが笑う、少々恥ずかいな…。
「分った、とりあえずご飯にしょうかね」
そう言うとおなごは部屋から出て飯を作りに行った。
しばらくした後。
「はい、お待ちどうさん」
と、目の前お椀には出来立てのお粥に梅干しがのっている物が出された。
「熱いからゆっくりとお食べ」
自分は布団から起き上がり箸を持ち、お椀の中のお粥を勢い良く食べ始める。
米の甘味と梅の酸味が合わさり自分の食欲を更に刺激する。
ものの数秒でお椀の中のお粥を平らげる、残ったのは梅干しの種だけだ。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様じゃ」
男はお椀を置きそばにある刀を持ち立ち上がる。
「では、看病に飯を恵んでいただき感謝する」
「まて」
とおなごに止められる。
「わっちはタダで看病や飯をやった訳では無いぞ」
それもそうか、こんな時代にただ飯を頂ける訳ないか。
「ならば、何をすればいい、生憎と、今は一文無でお金は払えんが、身体は丈夫だから力仕事ならばできるぞ」
「ならば、庭の整備をしてくれ、此処に来てから庭は全く手を着けて来なかったせいで、荒れ果ておる。」
外を見れば辺りには森しかなく庭など見当たらない。
「どこにその庭があるんだ?」
おなごは何を言っているのだ、と言う表情をしている。
「お主の目の前に広がっているではないか」
この広大な森を整備するとなれば少なくとも1日では足りない、何ヶ月とかかるだろう。
「なに、整備している間は3食飯も出すし風呂も貸してやろう、これでどうじゃ」
おそらくこの子なりの配慮なのだろう、何ヶ月と此処に居れば傷は自然と治るし、庭の整備と言う名目できる、優しい子だな。
「分かった、しばらく此処で庭整備をしよう」
「そう言えば、まだ、名を名乗っていなかったな俺の名は山本 武だ、これから世話になる」
「わっちは椿ただの椿じゃ」
__________『現在』____________
薄れる自我の中、絶対に色褪せない記憶を抱え、今もなお、この怨念に抗い続ける、もうすでに混ざり合い助からない事など分かっている、それでも…
「はぁ~…」
目の前には顔を蛇で覆った男がいる、コイツが全ての元凶だ、俺に怨念を植え付け修羅とした者だ。
「お前が、もっと暴れてくれたら良かったのに、あの化け狐、余計な事をしてくれたな、被害0とか上になんて言われるか…」
「この変な術さえ無ければな〜」
と男がこちらに近づいてきた。
俺の体はすでに言うことを聞かず近づく者を無差別に襲う。
しかしなぜかこの男には刃が動かない。
男が俺の体を触れようとしたとき、
バッチッッ!!!
と男の腕を弾く。
「何でバリアなんか貼ってんだ?」
男の後ろから霧がかかる、そこから聞き慣れた声が聞こえる。
「それはお前を見つけるための結界じゃよ」
カッ カッ カッ
と下駄の音が響く。
「うげぇ…めんどいの出てきたな」
男は無数の蛇を放ち、逃げようとする。
椿は扇子を取り出し扇ぐ、すると強風が起こり蛇を散らす。
「次は…逃さんぞ!」




