7、仕事が終われば…
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陽が沈んだ夜の公園。
昼間は子供達が元気に遊んでいたその場所には静寂と、ベンチに座り込む一人の男。
暫く男が待っているとフードを深く被ったナタリアが隣に座った。
「…」
そしてナタリアは無言のまま大きな紙袋を男に渡す。
紙袋をの中身を見てみると、入っていたのは切り口がまだ新しい男の生首だった。
「…間違いありません。私の娘を嬲り、殺したのはこの男です」
「これで依頼は果たした」
「はい。これで少しは娘の魂も報われた筈です。自分を殺した奴らがのうのうと暮らしているだなんて、私だったら耐えられませんから」
笑顔を見せた依頼人とは対照的にナタリアの表情は真顔のまま全く微動だにしなかった。
「これ、言われていたものです」
渡された小包をそっと確認すると、直ぐにポケットの中にしまう。
「確かに受け取った。これで契約は全て終了だ」
「あの、本当にありがとうございました!」
「勘違いするな」
「え?」
「俺の仕事は誰かに感謝されるようなことじゃない」
ナタリアがその場を去り、次に向かったのは近くの路地裏を曲がった先にひっそりと構える小洒落た隠れ家風のバー。
古びた木製のドアを押し開けた瞬間、待っていたのは外の夜気とは違う、ほんのり甘く湿った空気。
天井から吊るされた古びたランプの明るすぎるず、暗過ぎないぼんやりとした光が自分時間をひっそりと楽しむ客達を静かに照らしている。
雰囲気漂うバーの中はまるで別世界。平等に流れる時間もここにいる時だけはゆっくり流れているみたい。
この店に来るとナタリアは決まってカウンターの一番奥に座る。
「…いらっしゃい」
マスターの落ち着いた渋い声が響く。
「いつものを今日は濃いめで」
「…あいよ」
すぐに注文を終えると、俺はポケットからタバコを取り出す。
異世界でも日本とよく似たタバコが存在する。何か違う点があるとすれば、日本より簡単に手に入る事と安い事くらい。流石は異世界、日本の常識など何一つ通じない。
「……あれ?」
ポケットの中をいくら探してもマッチが見当たらない。朝はあったと思うのだが、どこで落としてしまったのかもしれない。
本来エルフと呼ばれる種族は魔力が豊富で魔法に長けている種族らしい。
しかしエルフのくせに魔法を全く使えない俺にとってマッチ欠かせない必需品なのだ。そんなドジな俺を見かねてか、マスターは何も言わずマッチを差し出してくれた。
「助かる」
バーの店内にいる殆どの客がタバコを吸っている。その客全てがタバコには魔法で火を付けている。
静かに時間が流れる店内ではマッチを擦る音はとても目立つ。
ここでタバコを吸うと客の殆どが必ず俺の方を一度は振り向く。少し恥ずかしい気もするが、慣れればどうということはない。
「お待たせ」
目の前に置かれたグラスに、琥珀色の液体をとくとくと流し込む。注がれた液体からはほんのりとした甘い香りがふわりと漂う。
「ごゆっくりと」
一口でその強さが身に染みて伝わってくる。それでも今の俺には物足りなく感じてしまう。
元々、酒が強い方ではあったが、この世界に来てエルフになると更に酒が強くなった。強くなったどころかどんなに強い酒でも、全く酔う気がしないのだ。
ベロベロに酔っ払うのも考えものだが、全く酔えないというのも、それはそれでつまらない。
だけど不思議なもので酔えないと分かっていても、いつものように酒を頼んでしまう。酔えずともこの雰囲気を味わうことが、数少ない俺の生きがいなのだとつくづく思う。
そうしてじっくりと酒を嗜んでいると、いつの間にか店の中に残っている客は俺一人。
マスターは表の看板をしまい、代わりに〈closed〉と書かれた看板を掲げる。
店内に戻ってくると、自分の分の酒を酌み俺の前にやってくる。
途中ですが、この後は少々長くなりますので今回はここまで。次回をお楽しみに。
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