6、最弱と呼ばれた男
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街に戻ったタクマ達はいつもより緊張した面持ちで冒険者ギルドに来ていた。
「あの、依頼の報告をしたいんですけど…」
「おかえりなさいませタクマさん。無事で何よりです」
「た、ただいまです…」
どこか浮かない様子のタクマ達。
「揃いも揃って皆さんどうしたんです?そんな顔して、らしくないですよ」
「色々あって、僕達も何がなんやら……」
「はい?まぁ生きてればなんでもいいんです。それでは確認の為、冒険者ライセンスをご提示いただけますか?」
三人を代表してタクマの冒険者ライセンスを受け取ると、レズハはカウンター横に置いてある水晶に翳す。
すると、受けていた依頼の詳細が浮き出てくる。
「リトルオーク三体の討伐ですね。確認取れました。それでは、依頼達成の証となる物を見せていただけますか?」
「それが……」
様子のおかしい三人を見て、レズハは何も言わずに水晶を弄り、受けていた依頼の記録を消す。
「あの、」
「大丈夫ですよ。いつも通り上手くやっておきますから。また頑張ってください」
「いや、そうじゃなくて、実はこの依頼じゃなくて他の依頼をクリアしちゃったんです」
「他の依頼?」
するとエンフィが気まずそうに一枚の依頼書を渡す。
「これってクラウンコングの討伐依頼?」
「はい…」
これはA本来ランク以上の冒険者に向けた高難易度の依頼だ。幾ら彼等に伸び代があっても、とても今の実力で適うような相手じゃない。
だけど、この感じ、なんか懐かしい気がする。
「な、なんでこんな所に!?」
「一体誰だ!!こんな街中にクラウンコングの死体を置き去りにしたのは!!」
「クラウンコング!?」
ギルドの外での騒ぎを聞きつけ、レズハ達も慌てて外に出る。
「これって……」
レズハが目の当たりにしたのは、正真正銘クラウンコングの死体だった。
しかもここに転がってる死体はただのクラウンコングじゃない。この大きさ、珍しい黒色の毛皮。間違い無い。これは数万匹に一匹、百年に一度産まれ、種族を束ねると噂される幻のボス個体だ。
「まさかこれってボス個体!?」
「だけど一体誰がやったって言うんだ?」
「こんなことが出来るのは勇者に決まってる」
「でも、その勇者って誰だよ?」
「それは……」
周囲にいた人々達もそれに気づき始め、騒然となっている。
「タクマさん。これはまさかアナタ達が……?」
「それは……まぁ、はい。成り行きで」
嘘を吐くのが余り得意ではないタクマ。かといって本当のことを話すわけにもいかず、恐ろしい程に態度がしどろもどろになっている。
「嘘だろ!?コイツらが!?」
「あそこのバンバとエンフィはBランクだから、まだ分かるとしてだ。その隣のアイツは……」
「アイツって、最近よく噂になってる奴だよな?」
「最低な仇名を付けられては陰で笑われてる。それじゃあ折角の称号も台無しだ」
周囲の反応も次々と騒がしくなっていく。
「タクマさん。余り疑いたくはありませんが、これは本当にアナタ達が?」
「も、も、もちろんででひゅ!…」
大事な所で噛んでしまうダメダメっぷりにエンフィ達も助け舟を出す。
「そんなの当然、私達に決まってるじゃないですか〜!!ね、バンバ?」
「そ、そうだ。仮に俺達じゃなかったとして、こんな大きな手柄を誰かに譲るなんてあり得ないだろ!」
声を大にして精一杯の虚勢を張るバンバ達。
「まぁ、確かに」
「それもそうだな」
「する奴がいたらソイツはただのバカだよな」
周囲の否定的な声も多かったが、バンバの一言により風向きが変わった。
「(本当、あの女はバカよ。手柄は捨てて金だけ欲しいなんて本当に変わってる)」
「(バカだよな。手柄も金も、俺だったらどっちも欲しい。それに手柄を立てればモテるかもしれないし)」
「(確かにバカだ。僕だったらそんなことは出来ない。でも、不思議と悪い人じゃない気がする)」
口に出さずとも三人は同じことを考えていた。
「そこまで言うなら、分かりました。そういうことにしましょう」
「てことは?」
「特例ではありますが、クラウンコング、及びボス個体の討伐を正式に認めます。但しこれからは事後報告などはしないように。いいですね?」
「「「は、はい!!!」」」
三人は揃って頷くと、レズハは手の空いてる冒険者達を呼び、クラウンコングの死体を裏へと持って行かせる。
その時、運ばれていくクラウンコングの死体を見て何かが引っかかりレズハは冒険者達を呼び止めた。
「あ、ちょっと待って!」
再生してるみたいだけど、腕や足には僅かに傷が残ってる。それに、何かに貫かれたような額の傷跡。恐らくこれが致命傷。
「(この傷って、あの時と同じだ…)」
他に致命傷になるような傷は見当たらない。つまりクラウンコングをほぼ一撃で仕留めたということだ。こんな芸当、最強と呼ばれる勇者達でも無理。
私が知る中で、こんなことができる人物は一人しかいない。
「どうしたレズハ嬢?なんか気なることでもあったか?」
「いいえ、気のせいだったみたいです。運んで下さい」
「あいよ。お前ら運ぶぞー!!」
人一倍声の大きい男が声をかけると、今度こそクラウンコングはあっという間に裏へと運ばれていった。
「流石はウチの秘密兵器。案外、お人好しなんだから…」
ギルドへの報告を終えたタクマ達は、一同安心した様子でベンチに座り込んだ。
「取り敢えず、なんとかなったみたいね……」
「ああ。一瞬、タクマのせいでバレるかと思ったけどな」
「ごめんなさい。つい、緊張しちゃって」
「そういえば肝心の報酬はどうするんだ?レズハさんの話だと清算まで時間がかかるって言ってたけど」
「あの女もここに来たらすぐいなくなっちゃったしね。どうやって報酬を私達から受け取るつもりだったのかしら?」
ーーギルドに到着して、気づいた時には既にあの人の姿は無かった。この世界では珍しい銃を持った女性。まるで海外映画のヒロインのようだったら。一体、何者なのだろうか?
「最弱の勇者様!!」
すると、一人の元気な男の子がタクマ達を見つけて駆け出してくる。
「え、最弱って、僕のこと?」
「アンタ以外いないでしょ。そんな恥ずかしい称号の勇者は!」
「僕ってそんな名前で呼ばれてるんだ……」
今まで知らなかった自分の呼び名に少々内心は穏やかではないものの、決して間違ってもおらずぐうの音も出なかった。
「…それでボク、どうしたんだい?」
「あのね、キレイなお姉さんがお兄さんにこれを渡して欲しいって言われたんだ。ハイ」
男の子から一枚の手紙を受け取る。
「ねぇ、そのキレイなお姉さんって誰か分かるかな?」
「えっとね、あそこにね、あれ?いなくなっちゃった…」
自分の言いたいことだけ言ったら、すぐに姿を消す。それってもしかして…。
「とにかくぼくは渡したからね!バイバイ!!」
「うん。ありがとう!」
颯爽と駆け出しいく男の子を手を振って送ると、早速貰った手紙を開けてみる。
手紙には〈報酬は全額、宿屋キャンビーの女将に、一年分前払いだと伝えて渡しておいてくれ〉と、殴り書きで一方的に書かれていた。
「なんだこれ…?」
「変な人だとは思ってたけど、手紙の内容までおかしね」
「…だけど、面白い人だよ」
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