59、アニバーサリー
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「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
上空から聞こえる聞き覚えのある声。その声の主は遥か高くから飛び降りてくる。
「アルレイシャ…!」
「死にたくなかったら退きなさい。そこは相棒が通る道よ!」
「なっ!?」
既にアルレイシャはやる気全開。放たれた斬撃と共に強烈な風が巻き上がる。斬撃が到達する前に風が目の前の障害を吹き飛ばし、道筋を作る。
「ぐっ……!!」
必死に耐えるバンバやエンフィ。他にも騎士団の兵士や殺し屋狩り達なども地面にしがみつくように伏せている。
「ぐあああ!!」
しかしその影響は凄まじく、たった一撃でその場にいた半数以上がどこか彼方へと飛んでいき、姿を消した。
「開け〜ゴマ!!」
そう呪文を唱えると、時間差で到達した斬撃が鋼鉄の門を斬り飛ばした。着地早々、ナタリアに抱きつくアルレイシャ。
「お、おい…」
「全部聞こえてた」
軽くあしらおうとするナタリアだったが、アルレイシャは中々離れようとしない。
「なんの話だ?…」
「私も相棒のことを信じてるってこと。託されてきたその気持ち、私にも繋げさせてよ」
恥ずかしい。本当に全部じゃないか。
「…だったら離してくれ。これじゃまともに歩けそうにもない」
「おっと、それもそうね。ごめん。こうやって話すのも久々な気がして、つい」
アルレイシャも我に戻り、ようやくその手を離した。
「なんだアイツは…」
「冒険者みたいに見えるけど、これ程の実力ならもっと有名でもいい筈。あんなのどこにいたのよ!」
「はぁ!?私のこと知らないの!?泣く子も黙る平和殺し〈ピースキラー〉と言ったら私のことよ!」
その場にいた全員が首を傾げた。
「なんなのよそれ!!…いいわ。だったら私の名前をその身に刻んでやるわ!」
「仕事じゃないんだ。余計な殺しは」
「分かってるわよ。殺さない。だって殺しちゃったら名前を名乗った意味がないもの」
人間相手なら殺して当然、そう言っていたアルレイシャが殺しを躊躇するとはな。理由はアレだが、それもまた成長か。
「せっかくの奇襲のチャンス。殺すつもりなら最初の一撃でとっくに殺してるわ」
わざわざ叫んだのも、派手に風を巻き起こしたのも全部その為だったということか。
「私だってちゃんと考えてるんだから。ちょっとは私のこと見直してくれた?」
「…まぁな。だが、俺の相棒を名乗るならこのくらい出来て当然だ」
「あったりまえでしょ。だって私は相棒なんだから!………って、相棒!?え、私が!?」
余りにも信じられないと言った様子で二度見、三度見を繰り返すアルレイシャ。頬をつねってもちゃんと痛みは感じる。
「私が相棒?いやいや、どうせ私の早とちり。聞き間違いか何かに決まってる。ねぇ、もう一回、今の言って!」
「言うか」
呆れた様子の塩対応。だが、その塩対応が逆に現実味を帯びさせた。
「ウソ……ちょっと照れてる」
「そんなことで照れるか」
「じゃあやっぱり本当なんだ……ようやく私は相棒に認められたんだーー!!!」
目の前のバンバ達を完全に置いてけぼりにして、思いっきり天にガッツポーズをあげる。
「……で、ここは任せていいんだよな?」
ナタリアは咳払いと共に、落ち着いた声で冷静に問いかける。その一言が緩みきっていた空間に再び緊張感を持たせる。
「勿論。だけどその前に渡しておくものがあるの」
するとアルレイシャはポケットをがさごそと漁る。中からは飴やお菓子など必要ない物ばかりが出てくる。
「えっと、これじゃなくて、こっちでもなくて、あれ〜、あ、あった!ほら!」
アルレイシャが投げ渡したのは、見たことのない虹色の魔弾だった。
「私とマスターからの選別よ。一発しかないから大事に使ってよね?」
「これは……」
「作るの結構大変だったんだから。お陰で体はずっとダルいしで、三日は魔法が使えなくなっちゃったわ」
アルレイシャは文句たらたらに、ナタリアにこっそりと耳打ちする。
「ほう…またとんでもない物を渡してくれたな」
「私もマスターもアナタにはどんな形であれ、生きててほしいってことよ」
文字通り、切り札だな。これは。
「バシリッサ」
〈やっと走れますわ〉
待ちくたびれた様子だったバシリッサも、ようやくの出番に再びエンジンに火がつく。
「ねぇ相棒」
「……なんだ?」
「最後に一言いい?」
「……」
「いい?一回しか言わないからね。ちゃんと聞きなさい」
「……」
「言うわよ」
「……」
「本当に言っちゃうわよ!」
「早く言え」
そんなに勿体振るような内容なんだろうな……?
「じゃあ、勝ってきなさい!」
「え、それだけか……?」
「以上!」
なんだそんなことか。待って損した……。よくある台詞。だが、なんか新鮮だ。一周回って気持ちがいい。
「…当たり前だ。じゃなきゃここに立ってない」
目的はこの先だ。ようやくリベンジができる。そう思ったら体が熱くなってきた。アドレナリンってやつかな…今ならなんでもできる気がする。
「さぁ、ここは私に任せて先に行きなさい」
その台詞は死神を呼び寄せる。だが、そう言われればこう返すしかないじゃないか。
「死ぬなよ、相棒」
「ふふっ。死ぬわけないでしょ?だって今日は記念日だもの」
バシリッサのエンジンが吹き、猛スピードで前を突き抜けていく。
「まだダメだ…!鮮血の妖精〈ブラッディフェアリー〉を止めろ!!」
騎士団の兵士や殺し屋狩り達も慌ててナタリアの前を塞ぐが、簡単に追い越されてしまう。
「まだよ!私が止める!」
エンフィが杖を掲げ、魔法を唱える。ナタリアの前に巨大な土壁が現れてその行手を阻もうとする。しかしその瞬間だった。
「え…」
杖は真っ二つに切り裂かれ、魔法は不発に終わった。それと同時に土壁も崩れ落ち、砂に戻る。バシリッサはその隙に彼らを背後にして門の先へと抜けていく。
「邪魔しないでよ。今、いいところなんだからさ」
追おうとするエンフィ達の前を阻むように、彼らの前を飛び越える。
「…お前ぇぇ!!」
「だからピースキラー〈平和殺し〉だってば。アンタ達の相手は私がしてあげる。あと、いい加減名前を覚えてよね?」
第二部はこれにて完結。
ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。
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次回からは第三部がスタート!
本来なら再会する筈の無かった妹と出会った事で明かされるヒミツ。
兄として姫乃皐月として、共に向き合った先には何が待っているのか?
そしてそのヒミツはやがて誰かの因縁と過去を出会わせる事になる!…のかもしれない。
次回からもお付き合い頂ければ嬉しい限りです。
勝手に祈って待ってますね。




