53、残された希望
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「こっちだ!」
「皆さん落ち着いて避難して!絶対に大丈夫ですから!」
冒険者と騎士団は仲が悪い。それは誰もが知る有名な話。しかしこんな状況下ではそうも言ってられず、エイラの呼びかけもあってモンスター溢れる王都内を兵士や冒険者達がそれぞれ避難誘導に当たっていた。
「にしても、大変なことになっちまったな…まさか最後の勇者が裏切るだなんてよ…」
「愚痴を言っても仕方がない。今、私達がやるべきことは一人でも多くの人達を助けることだ」
「立派だね…だけどそんなことは言われなくたって俺も分かってんだよ兵隊さん」
しかしモンスターの相手をしながら人も助けるってのは中々大変だ。しかもこの数だ。いくら倒してもキリがないし、終わる気配もない。
「その為にもまずは俺達が気兼ねなく戦える状況にしなくちゃな!」
「だからこうして避難誘導を優先に進めてるんだろ。一々言わないでいい!」
「それは悪かったな。こっちほ疲れすぎて、イライラしてんだよ…!」
彼らも戦闘の連続で疲弊の色が隠せずにいた。それもその筈。相手にするモンスターはどれも変異種や特殊個体といった強敵ばかり。正直、これだけの少ない戦力差でよくここまで戦えているものだ。
「ママ…怖いよ…」
建物の陰で涙を流しながら蹲る一人の少女を見つける。
「母親と逸れたのか…おいそこの兵隊!」
「どうした冒険者。もう限界か?」
「なわけあるか。とにかくここは頼んだぞ!」
「おい!勝手に行くな!」
残りの避難誘導を兵士に押し付けると、冒険者は少女の元へと急ぐ。
「ママ…たすけて…!」
「もう大丈夫だ」
「おじさん、ダレ?…」
「おじさんって、まぁいいか。俺が必ず君をまたママに合わせてみせる。」
「ほんと?」
「本当だ。だからもう泣くな。そんな顔じゃせっかくのかわいい顔も台無しだぜ」
持っていたハンカチで少女の涙を拭ってやる。
「立てるか?」
「さっき、ころんじゃって…」
「なら、ちゃんと俺に捕まってろ。いいな?」
「うん」
冒険者は少女を背中におぶると、急いでそこから逃げようとした矢先、獲物を見つけた巨大な腹をすかしたオークが目の前に立ち塞がった。
「ブモォォォオ!」
「くそッ、いつの間に…。こうなったら強引にでも、、しまった。これじゃ剣が握れねぇじゃねぇか!」
オークも冒険者が攻撃をしてこないと分かると、余裕の笑みを浮かべ、持っていた棍棒を振り下ろした。
少女を抱えてでは回避行動もままならない。もうなす術はない、そう察した瞬間自然と瞼が閉じて離れなくなった。
「………?」
衝撃も無ければ痛くもない。そうか、痛みも感じない程に叩き潰されたのか。そうに決まってる。あの状況で生きてるわけがない。あの子にも悪いことをしたな。母親に会わせるって約束をしたのに、全然守れなかった。
「勝手に行くなと行っただろ!」
なんであの男の声が聞こえるんだ?俺は死んだというのに…。
「おじさん!」
「だから俺はおじさんじゃないって!…あれ?なんで喋れるんだ?」
さっきまで固くくっついていた筈の瞼をゆっくりと開く。
「呑気に夢を見てる場合か?冒険者!」
次に目の当たりにしたのは、あの兵士の男が命を張って巨大な盾で俺達を守ろうとしている後ろ姿だった。
「アンタ、どうして…!?」
「勘違いするなよ。モンスターを倒すのが冒険者の仕事なら、人を守るのが騎士団の仕事。私はその役目を果たしているまでだ」
「アンタ、カッコいいな、それ…!」
「そんなこと言ってる場合か!さっさと逃げろ!」
「そうさせてもらう!」
だが、既にもう一体のオークが唯一の逃げ道を塞いでいた。
「ダメだ!これじゃ逃げられない!」
「くそッ、もうここまでか……」
掴みかけた最後の希望も、無慈悲にその手から逃げようとしていたその瞬間。
「伏せて!」
その声が聞こえた途端、二体のオークは真っ二つに切り裂かれ、吹き出た血液は花びらに変わり辺りを散りゆく。
「わ〜〜!!」
「これは…」
この出来事こそが夢を見てるようだった。
「アナタは…!!」
「そういやもう一人いたな…」
だって目の前にいるそれは最弱と呼ばれていたから。
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