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51、頂点との対峙

閲覧感謝です!


「ヒャッフゥー!!いけいけ!!」


「……」

 《……》


 先程までバシリッサの加速に悲鳴をあげていたアルレイシャだったが、今ではそれもすっかり乗り越えて、目的を忘れるほどに興奮していた。


「颯爽と風を切るこの感じ、最高に気持ちいいわーー!!」


 モンスター達が跋扈する王都を独走するバシリッサ。その道を塞ごうとするモンスター達も気にせず、目的地へ向かってひたすら前へと進んでいく。


「もっとよ、もっと飛ばして!私をスピードの向こう側に連れてって!!」


 呆れるほどのスピード狂。しかし、それに付き合ってる暇はない。


 バシリッサは突然急ブレーキをかける。


「ちょっ、なんで止まるのよ!?面白くなってきたところなのに」


 ナタリアが黙って指を指した方向にいたのは、屋根の上で一人、ケーキやクッキーを頬張るアンドウユウナの姿だった。


 《目的地に着きました》


「え、」


「そういうことだ。さっさと降りろ」


「はーい…ようやく面白くなってきたっていうのに……」


 楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。愕然と肩を落としながらアルレイシャは渋々バシリッサを降りた。


「今度また乗せてよね…?」


 《いいですよ》


「本当!?」


 《ええ。ナタリアがいいと言えばですが》


「そんなの簡単。相棒、いいわよね?」


「お前が俺を相棒と呼ばないならな」


「え〜〜無理〜〜!!」


 やれやれ、なんでそんなことが無理なのか俺にはさっぱり分かりやしない。


「いいから集中しろ。……来るぞ」


「ちぇっ…」


 ナタリアの一言で温かった空気が殺気が滲み出るように冷たくなる。


 右手の甲の白い薔薇の刺青。彼女がそれに優しく口付けを交わすと、刺青には赤いキスマークが。


「バシリッサは背後の警戒。何かあったら直ぐに知らせろ」


 《ラジャー。前は任せました》


「ああ」


 ナタリアは得意のベレッタ、アルレイシャは三日月宗近を構える。


「行ってらっしゃい」


 目の前には幾つものの渦巻く赤いゲートのようなものが出現。その中からゾロゾロと結果盛んなモンスター達が飛び出てきた。現れたモンスター達全てにはもれなく薔薇の刺青が入っている。


「俺がモンスター達の動きをコントロールする。アルレイシャ、お前が片っ端からトドメを刺していけ」


「いいの、そんなおいしいところばっか貰っちゃっても?」


「俺の目的はあくまでも勇者のあの女だけ。関係ない奴らを殺すつもりはない」


「じゃっ、有り難く小物は全部私がいただくことにするわ。これだけの数、全部売ったら一体いくらになるのやら!」


 意気揚々と飛び出たアルレイシャを見て、ナタリアも早速援護を開始。迫ってくるモンスター達を的確かつ、それぞれ最適な優先順位を決めて次々と動きを止めていく。


「まずは一枚!」


 先陣を切ったオークを斬り倒すと、その流れに乗るようにナタリアの援護で動きが止まったモンスター達を狙って次々と倒していく。


「コイツは五枚。コイツは十枚。そしてコイツは三十枚!ウハウハよ〜〜!!」


 アルレイシャの目に映るモンスターが全て金貨に見えて、モンスターを倒すたびにアルレイシャの耳には金貨が落ちる音が聞こえる。しかも、召喚されたモンスターはどれも希少な変異種やボス個体などばかり。

 当然、その価値に見合うだけの脅威的なモンスター達ばかりなのだが、ナタリアの援護とアルレイシャの実力があればこれはもはやボーナスステージ。苦戦する要素はこれっぽっちも無かった。


「アンタ達、期待以上にやってくれるじゃない。合格」


 召喚された大量のモンスター達はあっという間に淘汰された。その様子に満足げなアンドウユウナはモンスターの亡骸をクッション代わりにして飛び降りてくる。


「ようやく本番ね。面白くなってきた」


 そんなアンドウユウナの右手にはショートケーキ、左手にはチョコケーキが握られている。


「能力を使うと妙に甘いものが食べたくなるのよね〜良かったらアンタ達も食べる?」


「え、いいの?」


「おい」


 あからさまな罠に引っかかる寸前のアルレイシャを諫めるナタリア。


「遠慮する。甘い物は得意じゃないんでね」


 それに他人が手掴みしたケーキなど食べたくはない。


「つまり私と組む気はないってことかしら?」


「ああ」


「ふーん。結局アンタも同じってことか。どいつもコイツもあんな性悪女に唆されちゃってさ、本当バカみたい」


 するとアルレイシャは二つのケーキをぐちゃぐちゃに混ぜ合わせると、上品そうな見た目とは対照的に下品に喰らい付いている。


「うわっ……」


 ほら見ろ。あのアルレイシャを引かせるとはよっぽどだぞ。


「ぐちゃぐちゃのぐっちゃぐっちゃ」


 食べ物に同情するのもおかしいかもしれないが、なんだかケーキが可哀想に見えてくる。


「……あ〜〜満足、満足」


 二つのケーキを平らげると、手についたクリームもベロベロも舐め尽くす。


「一度やってみたかったのよね、人の目も気にせず好きなものを好きなように好きなだけ食べる。最後の晩餐にしてはちょっと甘すぎた気もするけど」


「覚悟は出来てるみたいだな」


「ええ。だけど、アナタの考えてる覚悟とはちょっと違うと思うわ」


「じゃあなんなんだ?……」


「私はアナタに殺されるつもりはないってこと」


 白い薔薇の刺青が怪しく輝きだし辺りの景色をどんよりとした曇り空で覆う。


「これが私の覚悟ってやつよ。いらっしゃい……バハムート!!!」


 曇天の中に黒雲が渦を巻き、景色は引き裂かれる。


 裂けた空間の奥に見えるは巨大な影。


「なによ、アレ……」


 次に見えたのは真紅の眼と曲がりくねった漆黒の角。世界を簡単に覆い尽くせそうな程の巨大な翼。


「そうか、これがあの女の言う覚悟の正体か……」


 最強。頂点。


 それらの称号を欲しいままにする絶対的存在。


「暴れなさい。そして全てを破壊し、あの女に一泡吹かせてやるのよバハムート!!」


「グオオオオ!!!」

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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