48、異世界系無双物語
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ギルド内の特訓場。
貸し切り状態の特訓場でタクマはひたすら訓練に没頭にしていた。
持てるようになった剣を振り、使えるようになった魔法を連発する。ようやく手にした自分の力を一刻も早く自らの力にしようと必死だった。
「タクマの奴、まだやってるのか?…」
「ええ。食事もせずにぶっ続け。こっちの話なんか耳に入らないみたい」
師匠と慕っていた者の裏切り。決して認められた関係では無かったが、タクマにとってそれは目標であり強くなるための糧でもあった。
だからこそナタリアの裏切りは到底許せるわけが無かった。
「あんなことがあったんだ。特訓に集中したい気持ちも分かるが、流石にこのままじゃいつかぶっ倒れるぞ」
「だったらバンバが止めてよ」
「お、オレがか?」
「そうよ。だって私じゃ何を言ってもダメなんだもん。ほら、やってよ」
「わ、分かった」
特訓場は完全にタクマ一人の空間。仲間といえど中に入るのはとても勇気がいる。
エンフィに急かされるようにバンバが恐る恐るタクマに近づく。
「タ、タクマ……ちょっといいか?」
そう声をかけた瞬間、タクマは振り返ると同時に持っていた剣をバンバの首元スレスレで止める。
「!!」
「バンバさん、いきなり現れないでください」
今の殺気。マジで殺されるかと思った……。あの時以来、タクマはまるで別人のようだ。
「一応、声は掛けたんけどな、驚かせてすまない」
「いいえ。で、なんですか?」
「特訓に精が出るのはいいことだ。でも、流石に無理をし過ぎだと思う」
「こんなのは無理じゃありません。そうでもしなきゃあの人を止められない」
「だとしてもだ!頼む、オレ達の為だと思って少しくらい休んでくれないか」
頭を下げるバンバの姿にタクマを剣をしまう。
「分かりました。でも休むのは用事を終えてからです」
「用事?」
そうしてタクマが向かったのはギルドの地下。厳重に固く閉ざされた扉を突き振り奥へと進んでいく。
「……ギルドに内緒でこんな場所入っても良かったの?」
「僕が一緒なら大丈夫な筈です」
「どうしてそう言い切れる。この先は明らかにヤバい予感がするんだが…」
「いいからついてきてください。二人には証人になってもらいたいので」
バンバやエンフィの疑問は何一つ解決しないまま、薄暗い階段を降りていくと、見えてきたのはギルド内部にそのままの状態で隠されていた秘密の祠。
「何ここ……」
「驚いた。ギルドの地下にこんなものがあったなんてな……」
殆ど人の出入りが無いせいか辺りには燭台なども無く、薄らとその影が確認できるだけ。なんだか気味が悪く、モンスターが沸いてきても不思議では無い。
「目的はこの奥です。ついてきてください」
タクマが指を鳴らすと、辺り一体が暖かい光に包まれ周囲を照らし出した。そしてタクマは戸惑うエンフィやバンバを待たず、足早に中へと向かっていってしまう。
「ねぇ、本当に大丈夫なんでしょうね……?」
「こうなったらついてくしかないだろ。行くぞ…」
「もう……」
エンフィ達もタクマに置いてかれまいと渋々追いかけることを決め、後をついていく。
内部は湿った石の匂いが香り、壁一面には古代文字が刻まれている。奥深くへと進んでいけば行くほどその気味の悪さは深まっていくばかり。
「……ねぇ、タクマ。私達って一体何処に向かってるのかって聞いてもいい感じだったりする?」
「もう聞いてるだろ」
「シッ!バンバは黙ってて!」
「はいはい」
騒がしいながらもいつも通り和気藹々とするエンフィ達のやり取り。少し前ならそれを見て笑うこともあったが、今のタクマにはその様子の欠片も感じられない。笑顔を見せることは無かったものの、内部に入ってから無言を貫いていたタクマは口を開いた。
「ここには聖剣が眠っています。僕はそれを抜きに来ました」
「聖剣って、あの伝説の聖剣のことか?」
「はい」
「勇者達にも抜けなかったって噂のあの聖剣でしょ」
「そうです」
この世界に暮らす人々なら一度は必ず耳にしたことのある伝説の聖剣の噂。
聖剣の名はアフロディアン。
女神の名を冠するその聖剣は世界を支配出来るほどの絶大な力を持つと噂をされる最強の剣。伝説ではその聖剣はこの世界が誕生した時には既に存在していて、自らを振るうに相応しい者を聖剣はずっと探しているらしい。
現在に至るまで多くの人々がその聖剣を手にしようとしてきたが、誰一人聖剣のお眼鏡にかなうことは無く、ずっと祠で眠り続けたまま。
「…聖剣の噂は知ってたが、まさかそんな聖剣がこんな近くに隠されてただなんてな」
「そうそう。私もてっきり山奥とか秘境とかにあるものだって勝手に思ってた」
「大昔はそうだったらしいですよ。しかし時代が進み、聖剣が眠る祠を国が管理するようになった。その管理のために建てられたのがこのギルドだったわけです」
「冒険者ギルドなら腕の立つ者も見つけやすい。管理と選定を同時に行えるってわけか、えっと、こういうのなんて言うんだっけか?」
「一石二鳥。この世界でそう言うかは僕も知りませんけど」
当然、タクマ達もこの世界に召喚されてから間も無く、この祠には訪れている。王国側も女神によって力を授かった者達なら女神の名を冠する聖剣も認める筈だとそう考えたのだ。
聖剣はずっとこの時を待っていた。勇者達が召喚され、そこにいた誰しもがそう確信した。しかし結果はそう思うようにはいかなかった。
召喚された十人全てがその聖剣を抜くことができなかったのだ。
女神によって選ばれた者達でもその聖剣が彼ら選ぶことはなかった。では、いったい誰なら聖剣が選ぶのか。謎は謎を呼んだまま、それ以降その祠に続く道は再び塞がれた。
「見えてきました。アレです」
祠の奥にポツンと突き刺さる一本の剣。その周りには幾つものの青い結晶が不規則に並んでいる。
「あれが聖剣……」
「想像してたよりは、って感じね……」
確かに目の前に見える聖剣は想像していたより遥かに普通で、神々しいオーラのようなものも感じられなかった。
「エンフィさん達はそこで見ていてください」
タクマは一人でゆっくりと聖剣へと近づいていく。
一度目は無理だった。でも、今の僕は昔とは違う。
近づく度に空気が変わり、胸がざわつく。剣がまるで自分を見定めているよう。そんな感覚、一度目は感じなかった。確かな手ごたえと共にんその手でいざ、聖剣を掴んだ。
その瞬間、聖剣が少しずつ輝き始め、周囲の結晶もそれに共鳴するように光り輝いた。大きな音と共に祠は揺れ、空気が唸る。
遠くでタクマを見守っていたエンフィ達も立っていることが出来ずにいる。
そんな状況の中、タクマは顔色一つ変えず、その手に力を込める。光は鼓動するように脈を打ち、少しずつその姿を真の聖剣へと変えていく。
その時、タクマにだけ声が聞こえた。
『アナタはなーんだ?』
その声は前にも聞いたことがある。その声は僕に同じことを聞いてきた。
あの時は咄嗟のことで意味も分からず、何も答えることはできなかった。だけど今なら、自信を持って答えることができる。
「僕は、」
『僕は?』
「いや、僕だけが勇者だ!!」
『そうよ。アナタだけが本物の勇者』
溢れ出す光と共に全身に膨大な力が流れ込む。
「うおおおおお!!」
タクマを雄叫びを上げながら力一杯聖剣を引き抜いた。
引き抜いた聖剣は聖剣の名に相応しい真の姿に進化を遂げていた。
『聖剣アフロディアン。これは私の力の一部。それを使ってアナタは役目を果たしなさい』
たった僅かな力の片鱗。しかし、その絶大な力はタクマのレベルを急激に増加させ、直ぐに人間の限界へと達させるには十分過ぎた力であった。
「凄い、本当にタクマが聖剣を引き抜いた……」
「なんて力だ…遠くからでも凄まじい覇気が伝わってくるようだ…」
今にも溢れ出そうとするその力をタクマは冷静に抑え支配する。
「……この力で、僕が鮮血の妖精〈ブラッディフェアリー〉を止める!」
聖剣を掲げるその姿はまごうことなき勇者の姿であった。
――
一方、その様子を天高くから見守るとある一室。
『ずっと私はこの時を待っていました。やっとここまできた…私が見たかったのはこういう展開よ!!』
テーブルには飲みかけのコーラやポップコーン。後ろの棚には大量の漫画やライトノベルが無造作に並んでいる。
『…例えるなら、〈無能だと追い出された最弱の勇者が伝説の聖剣に選ばれたので無双します〉って感じかしらね。王道だけど、こういうのが私はだーいすき!!』
大きなソファーの上でダラダラと寝転がりながら、テレビに映るタクマの姿を見て興奮を抑えきれない女神だった。
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