47、勇者のくせに
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数年前、女神によって勇者達はこの世界に召喚された。歳も違えば、学生や社会人と職業もまばら。なんの共通点も無い彼らがどういうわけか異世界に集められた。
突然の出来事に彼らも最初は戸惑っていた。
しかし、どういうわけかこの世界に召喚され日本人は異世界召喚や異世界転生などに一定の理解を示す者も多く、混乱は直ぐに収まり、この世界に順応して行く。
やがて明らかになっていく彼らだけに与えられた特殊な力。それらの力を彼らは口を揃えてチート能力と言って喜んだ。
たった一人を除いては。
異世界召喚に巻き込まれたというサイハラタクマだけは、彼らに平等に与えられていたチート能力を授かっていなかったからだ。今までは同郷同士仲良くやっていたのに、それが分かった途端彼らの態度は一変した。力無き者は力ある者に淘汰される。
サイハラタクマはそれをその身で思い知った。
いつか強くなってみせる。密かに胸に誓い、サイハラタクマはたった一人で飛び出した。
そして時を同じくして、残った勇者達の運命もその日を境に動き出す。
この世界に魔王はいない。拍子抜けなそんな世界で国王達が勇者に与えた使命は戦うことだった。
早い段階から女神によって与えられた規格外の力に目をつけた王国は、召喚されて間も無く騎士団達と共にに能力を使いこなす為の特訓を命じる。
特訓の成果が身を結び勇者達が力をある程度使いこなせるようになると、勇者達を筆頭に他国への進行を開始。
彼らは勇者という名の最強の兵器を武器に戦争を始めたのだ。
当然、他国も応戦するが、規格外の力を持つ彼らに敵うわけが無く、呆気ない程にあっさりと戦争は終結。華々しい勝利を収めた。
人々は彼らを国の英雄として祭り上げた人々は彼らのことを誇らし気に勇者と呼ぶようになった。
その日をきっかけにして勇者達はこれまでの自分に別れを告げた。
圧倒的な力で王国を大勝に導いた勇者達の勢いは止まることを知らず、現在までに王国を十の国を統治する大国家へと躍進させた。
戦争が終わり英雄としての地位を欲しいままにした勇者達は、女神に与えられた力を活かしたいとそれぞれの道を歩み出した。
それが全ての始まり。
そして今、彼ら物語は仕向けられた運命に従うように着実に終わりへと向かっていた。
◇◇◇◇◇◇
騒動の翌日。
新聞の一面には鮮血の妖精の正体が大々的に報じられた。
それと比例するようにナタリアにかけられた懸賞金は大幅に増大。多くの賞金稼ぎ達が今までの仕事も忘れ、一斉にナタリアの首を狙うようになった。
「鮮血の妖精……」
そしてここにもナタリアのことを快く思わない女がここに一人。彼女の名はアンドウユウナ。またの名を召喚の勇者。
既に新聞はビリビリに破かれ、部屋の中で盛大に散乱している。
「エイジのバカ。何勝手に死んでんのよ……!」
愚痴を溢すユウナの瞳は既に涙で腫れている。涙を拭う手の甲には白い薔薇の刺青が入っているのが見える。
シキジマレンが殺される前日。深夜、彼女は呼び出され二人で会っていた時のことを思い出していた。
――
「式の前日。こんな夜中に元カノを呼びつけてなんの用かしら?」
「そうやって呼ばれるのも久々だな。みんなと一緒の時はいつも他人行儀だったから」
「バレたく無かったのよ。私がアナタにフラれた翌日、一緒にこの世界に転生しただなんて。バレたら死にたくなる」
理由は些細な喧嘩。私がちょっと浮気を疑ったらすぐに愛想をつかれた。しつこい女は嫌われる。そんなの私だって分かってた筈なのにさ……。みんなに念話を広めたのもそれが理由。それ以降、レンと面と向かって話すのはなんだか気まづかったから。
「…それで話ってなんなの?わざわざ会わなきゃならないような大切な話なんでしょうね?…」
「ああ。どうしてもユウナに伝えておきたいことがあって」
「何よ改まって、気持ち悪い…」
なんかイヤな感じ。レンがこういう顔をする時はいつも碌なことが起こらない。昔レンが真剣にデートプランを考えたって時もそうよ。久しぶりのデートってことも楽しみにしてたのに、そんな時に限って台風直撃。それでもとレンの家に集まったはいいけれど、停電で中は真っ暗だし、家族は帰ってくるしで、本当に最悪だった。
「明日の婚姻の儀、もしも僕の身に何かあったらその時は、」
「やめてよ。縁起じゃない……」
「その時は僕の仇をユウナに討ってほしい」
予感は当たった。
「なんで私なのよ……」
「もう他に頼める勇者がいないんだ。それにユウナが力だけなら僕達の中では一番強いだろ」
「だからやめてよそういうの……私はフラれてんのよ。こういう時ばっか、私は都合のいい女になったつもりはないわ」
しかし、レンの変わらない真っ直ぐな姿勢に私は最後まで断れなかった。だから都合のいい女だっていうのよね。
「……分かったわ。もしもの時は私がなんとかする。それでいいんでしょ!」
「ありがとう。助かるよ」
「一応聞くけどさ、これって本当にレンの意思なのよね?」
「もちろん」
「本当に本当?」
「当たり前だろ。あの方の意思は僕の意思だ」
レンはそう言い切った。
「ユウナには先にこれを渡しておくよ」
「何これ……?」
「明日、婚姻の記念に配る金の女神像だ。よく出来てるだろ?きっとアフロディア様お喜びになる筈だ!」
「全然似てないわよ……」
もう私の知るレンはこの世界にはいないのかも知れない。
――
こんなの私は認めない。
「全部あの女のせいよ……」
結局、私達はあの女のおもちゃでしかないってこと?…ふざけんな!!あの女の思う通りになんて私がさせない。
「そこで黙って見てるのね……アンタが与えたこの力で私が全てをぶっ壊してやる!」
ユウナの目に前には粉々に砕け散った金の女神像の破片が散らばってきた。
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