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46、俺はお前の敵だ

閲覧感謝です!


「お嬢様!!」


 エイラの護衛や残りの騎士団達が大勢会場内に流れ込んでくる。


 地面に倒れる仲間達、そして血の海に溺れるシキジマレンの亡骸。最悪な光景に一同は怒りを抑えきれない。


「キサマぁ!!」

「そこを動くな!」


 すぐさまナタリアは持っていた銃をエイラに突きつけ人質にする。


(悪いな。怪我はさせないからもう少し付き合ってもらうぞ……)


(それはいいけど、いいの?これだけの大勢に正体がバレたらもう……)


(気にするな。どうせいつかはバレることだ)


「おのれ、卑怯だぞ!!やはり鮮血の妖精《ブラッディフェアリー》も所詮はただの殺し屋か!」


「なんとでも言え。少しでも動けばコイツを殺す」


「ぐっ……」


 出入り口は完全に騎士団に包囲され、そこからの脱出はほぼ不可能だ。となると残された道はただ一つ。後はどうやってコイツらの注意を引くか……。


「師匠……!?」


「ちょっ、タクマ。危ないって……ウソ!?」


「あの人が鮮血の妖精《ブラッディフェアリー》!?どうりで強いわけだ……」


 大勢の護衛達を掻き分け、中から現れたのはサイハラタクマ達一向だった。


「どうしてお前達がここにいる……?」


「僕はシキジマさんから騎士団の方々と警護を共にして欲しいと仕事を頼まれたのでここに」


 戦力を増やすという意味なら冒険者を雇うのも頷けるが他に冒険者がいる様子はない。それになんでよりにもよってコイツらなんだ。


「それより、この状況は一体なんなんですか!師匠がブラッディフェアリーだって嘘ですよね!?」


(もしかして、最弱の勇者様と知り合いだったんですか?)


(コイツが勇者、だと!?……)


 なるほど。それが理由か。


(もしかして知らなかった?…)


(初耳だ。アイツが勇者だなんて夢にも思ってなかった)


「何か言ってください師匠!!」


「落ち着けタクマ。いくら強くなったからって敵う相手じゃない!」


「バンバの言う通りよ。あの人の強さはアンタが一番知ってるでしょ!」


 今にも掴みかからんとするタクマを二人が必死に止める。


「だから信じられないんだ。あの人が勇者殺しだなんてあり得ない。あの人は、僕の師匠なんだぞ……!」


「…いい加減にしろ」


 ナタリアの声とはとても思えないドスの効いた低い声が周囲を圧倒する。


「俺はお前の師匠なんかじゃない」


 これでも俺はちゃんと驚いている。今までの勇者と違ってコイツは顔見知りだ。戸惑いだってないわけじゃない。


「ウザいんだよ。勝手に呼ぶな」


 それでも俺は殺し屋だ。俺はこの仕事にプライドがあるし、それを譲るつもりもない。


「…はっきりさせよう」


 それはナタリアが自分自身に言い聞かせているようだった。


「俺はお前の敵だ」


「そんな……」


「お前も勇者なら、王女様くらい守ってみせろ」


 ナタリアは勢いよくエイラを突き飛ばす。


「キャッ!!」


「危ない!!」


 タクマはバンバ達を振り払い、吐き飛ばされたエイラ手を寸前の所で掴み、抱き寄せる。


「大丈夫ですか。お怪我は?…」


「え、ええ。なんともないですわ」


 初めて会った時は助けを呼ぶのがやっとで何もできなかったのにな。今じゃ頭より先に体が動いてる。それができるようになっただけ立派なもんだ。


「随分と成長したじゃないか」


 残りの騎士団達の視線が一斉に向こうに集まったその隙にナタリアは吹き抜けになった窓枠に足をかける。


「待ってください師匠!!」


「…今日は見逃してやる。だが次は殺す。必ずな」


 そう言い残すとナタリアは颯爽と窓を飛び越えると、外に待機していてたバシリッサに乗り込み走り去って行く。


「待て!!鮮血の妖精《ブラッディフェアリー》を逃がすな!!」


 騎士団達もすぐさまナタリアを追いかけようとするが、その姿は既に見えなくなっている。


「なんで……!なんでなんだ……!!」


「タクマ様……」


「くそぉぉぉっ!!!」


 心の底からの悲痛な叫び。その時タクマの耳に聞きなれない声が聞こえた。


 偶然か必然か。裏切りと絶望がタクマの中で固く閉ざされていた可能性の扉をこじ開けたのだ。


 〈レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました〉


 その声は絶え間なく聞こえ続ける。レベルという概念が存在しない世界で彼は初めてレベルアップを遂げた。


「ハハっ!私の推しがようやくお目覚めみたいね…真の主人公さん」


 天高くから艶やかな笑い声が聞こえた。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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