42、キッカケ
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(今回短めです)
「師匠!!……ってやっぱりいないか」
少しは成長した姿をナタリアに見せようと、冒険者ギルドへと探しに来たタクマ。しかし肝心のナタリアの姿は見つからず、分かりやすく肩を落とした。
「ナタリアさんなら今日も来てませんよ」
「そうみたいですね…」
落ち込むタクマにレズハは見かねて優しく声をかける。
「やっぱり寂しいですか?」
「そりゃあ、まあ……師匠に認められたい一心で強くなったのに、その肝心の師匠がどこにもいないんです。俺はこの先どうしたら……」
「そんなに落ち込まなくても……」
そういうレズハも久しくナタリアとは会えておらず寂しさが募っていた。
「…きっと本業が忙しいんですよ。でもナタリアさんのことですから、落ち着いたらその内ひょっこり帰ってきてくれるって私はそう信じてます」
「その本業ってなんなんです?」
「それは、私も知りたいくらいです……」
あれだけ強いナタリアさんが冒険者にもならずにやってる他の仕事って一体なんなんだろう…。いくら聞いてもナタリアさんはそのことだけは答えてくれなかった。
「まぁ、気長に待ってましょう。それにこの短期間でタクマさんがこれだけ成長したことを知ったらナタリアさんもきっと驚きますよ〜!」
それを聞いた途端、さっきまで死んだ魚のような目をしていたタクマが嘘のようにイキイキしだした。
「やっぱりそう思います!?」
「ええ。それはもう」
「それなら師匠も、俺のことをちゃんと弟子だって認めてくれますかね!?」
グイグイと詰め寄るタクマに若干引き気味のレズハ。
「それは私にはなんとも…でも、ナタリアさんってああ見えて優しいから。きっとタクマさんの成長だって認めてくれる筈ですよ」
「そうですよね!!やった!!」
お互いナタリアに想いを馳せるもの同士、気持ちを分かち合う二人。幾らかタクマの方がその熱が変な方向に向いている気もするが、それにはレズハも突っ込めなかった。
その時、そんなタクマの元に銀の甲冑を纏った兵士が姿を見せた。鎧には王国の紋章があり、この兵士は国を守る騎士団の一員だということが分かる。
「失礼します。貴方は最弱の勇者ことサイハラタクマ様でお間違いありませんか?」
「えっと、あ、はい…」
突然の出来事に戸惑いながら、タクマは少し座り方を直し背筋を伸ばす。
「サイハラタクマ様宛に王女エイラ様の婚約者であり、時期国王でも在らせられるシキジマレン様からお手紙を預かっております」
「シキジマさんから手紙?」
正直、シキジマさんや他の勇者の方々とはあまりいい思い出はない。
出会った当初はまだ話もできていたけど、与えられた能力が分かってきて、戦争が始まってからは殆ど話もしなくなった。
彼らと僕は同じ世界からやってきたのに、まるで別世界の人間の様だった。
僕がいてもいなくても何も変わらない。そう感じた僕は早々と彼らの元を抜け出した。それからは今まで聞こえていた女神様の声も聞こえなくなった。きっと女神様も他の勇者達の元を離れた使えない僕を見限ったのだろう。
もう二度と会うことも話すことも無いと思っていたのに、まさか手紙を貰うだなんて。
僕は騎士団の兵士やレズハさんに見守られながら、恐る恐る手紙の中身を確認したのであった。
◇◇◇◇◇◇
夜更け過ぎ。
暗闇の中、ステンドグラスに描かれた女神のイラストに向かって祈りを捧げるのはシキジマレンの姿がそこにはあった。
シキジマレンは一人、ぶつぶつと何かを呟き、暫くすると彼は満面の笑みを浮かべながら深く頷いた。
「…全ては愛するアフロディア様の仰せのままに」
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