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23、私が本当に信じたいもの〜そして〜

閲覧感謝です!


『俺は殺し屋だ』


 その単純明快な一言がさっきからずっと頭の中をぐるぐると駆け回っている。


 ナタリアさんは冒険者じゃなかった。

 ずっと冗談だと思ってたことも実は本当で、私はナタリアさんにずっと嘘を吐かれてた。


「おーい」


 それにナタリアさんは人間じゃなくて、エルフだったし。


「聞こえてるだろ?」


 やっぱり最初からナタリアさんは私に嘘を吐いていた。最初からナタリアさんは悪い人だったんだ。


「ビアンナ!!」


 耳元で響く怒号が迷える私を現実に無理矢理連れ戻した。


「え、ま、ママ!?」


「何をぼさっとしてるんだい?さっさと手を動かして肉を切りな。そんなにたらたらしてると、夕食の時間までに間に合わないよ!」


「ごめんなさい。すぐやる」


 しかし、心ここにあらずといった様子をアマンダを見逃さなかった。


「もしかして、ナタリアの所で何かやらかしたかい?」


「な、なんで分かるの!?何も言ってないのに!」


「娘の考えていることなんてね、手に取るように分かるさ。母親を舐めんじゃないよ」


「ママってやっぱり凄いんだね…」


「言われなくたって分かってるよ」


 ビアンナは手を動かしながら呟いた。


「…あのね、ナタリアさんが私に言ったの。自分は殺し屋だって。それってナタリアさんって悪い人ってことだよね?」


「さあね。私にはよく分からないが、お前が思うよりもあの子がまともじゃないのは確かかもしれないね」


 アマンダは驚く様子も無く、ビアンナ同様、夕食の準備を進めながら耳を傾ける。


「じゃあやっぱり。ナタリアさんは……」


「だけどねビアンナ。それを最後に決めるのはアンタだよ」


「私?」


「ソイツがどんな奴だろうと信じるも疑うもお前の好きにすればいいんだ。自分がした選択を信じて信じ抜きな。私はそれができる子にお前を育てた筈だよ」


 ナタリアさんは悪い人だ。自分がそう言ってたんだから間違いない。だけど私はそれがなんだか信じられなかった。その気持ちに嘘をついているような気がして。


 それでもやっぱりナタリアさんはいい人じゃないと思う。だけど、他の悪い人とは何かが違う気がする。それが私の今の気持ち。だからその気持ちを私は信じることにする。


「私、あやまらないと。そうだ!私買い物に行ってくる!」


「買い物?もう日も暮れる。今日はよしな」


「前にナタリアさん、ママが作ったシチューが美味しいって言ってたの。だからその材料を買ってきたいの。ママ、いいよね!?」


「……仕方がない子だね。でも寄り道せずに直ぐに帰ってくるんだよ!いいね?」


「うん。分かった!」


「ったく、突拍子も無い子だね。誰に似たんだか……」


 アマンダは首にかけたペンダントをそっと手に取った。


「本当昔のアンタにそっくりだよ」


 そしてアマンダは再び、一人で夕食の準備を進める。勿論、シチュー用の鍋も用意して。


 しかし、ビアンナが買い物を終えて帰ってくることは無かった。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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