古墳15 埴輪VS須恵器
レンは、パソコンの画面を見つめ、探し続けていた。
アリスが送ってきた写真に写っていた古墳。
あの古墳は、一体どこなのか?
パソコン画面には、全国の古墳の写真が並んでいる。
古墳と言っても、前方後円墳以外にも、円墳、方墳と色々ある。
どれも似ているようで、少しずつ違う。
レンはアリスの写真を横に表示し、一つずつ見比べる。
前方後円墳に絞ってしまえば、大きさ、形で、特定できると思っていたが、中々上手くいかない。
古墳を白く覆う葺石も、三段に重なる斜面も、赤い線のように並ぶ埴輪も、一五〇〇年もの時を経て、自然がその特徴を覆い隠してしまっている。
最初は、奈良県の箸墓古墳かと考えた。
「卑弥呼の墓ではないか」と推測されることもある、奈良県の有名な前方後円墳だ。
全長280メートルもの大きさであれば、アリスの説明と一致する。
卑弥呼の墓であれば、アリスはまさにその邪馬台国にいた可能性が高いわけだから、十分に場所としてはあり得る。
ただ、アリスの話から、大王の墓のようでもあるし、そうであれば逆に的外れだ。
次に、日本最大の前方後円墳である大阪府の大仙古墳を開く。
画面を見比べる。
似ている。
だが、似ているだけだ。
まさか、この有名な古墳が、アリスの目の前にあるとは思えない。
これなら、箸墓古墳の方が可能性はある。
レンは画面をスクロールした。
確信が欲しかった。
どれもこれも、決定的ではない。
レンは首を振る。
きっと、特定できるはずだ。
古墳は、古墳時代から未来へ残されたタイムカプセルだ。
あのアリスの写真の古墳が、どこの古墳か分かれば、それだけで。
……アリスが今、どこにいるかわかる。
レンの心臓が、ぐっと冷える。
たった、それだけだった。
アリスのいる場所。
それだけの情報、だ。
場所が分かったからといって、アリスに会えるわけじゃない。
アリスと、レンの間には、場所だけではない、一五〇〇年という、時間の壁があった。
場所がわかったって、助けに行けるわけではないのだ。
それでも、レンはアリスがいる場所を特定したかった。
一五〇〇年前のアリスの居場所。
もし、それが分かれば、古墳の情報からアリスに伝えられる事があるかもしれない。
もう別の世界線だろうが、構わない。
あまりにも自分が無力で、苦しくて、何かせずにはいられなかった。
その時、スマホが震えた。
レンは顔を上げる。
アリスから、ではなく、父だった。
……いや、実家にいるアリスからだった。
【アリス】いつ帰ってくるの?
【アリス】早くお兄様をボッコボコにしたいよ〜
レンは、つい舌打ちした。
こっちのアリスは、何故かあれからカードゲームに夢中らしい。
昔は良くやったが、今は時々実家に帰った時の暇つぶし程度の娯楽のはずなのに。
女の子らしい趣味くらい、いい加減持った方がいいのにと、レンはため息を吐く。
次の週末には、一度帰ってみよう。
やはり、気になるのだ。
前回、アリスに感じた違和感が。
「ん?」
レンはまたスマホが震えたのに気づく。
どっちのアリスかと見れば、母の紫からだ。
【紫】相談にのって。こっそりがいい。
え?
レンはスマホを凝視する。
一体なんだ?
【レン】どうしたの?
直ぐに返事を返したはずなのに、何故か既読はつかなかった。
そして、それきり紫から返事が来ることはなかった。
◇
渡来人の村の、須恵器を作る工房では、激しい口論が起きていた。
ハニャさんが太い腕を振り回し、その横では奥さんも土を握ったまま、鋭い目で何かを訴えている。
向かい合う渡来人の職人達も、一歩も引かない。
その中心で、おじいちゃんだけが長い髭を撫でながら、じっと土を見つめていた。
「え、えぇ……?」
アリスはその場の空気に押され、完全に固まっていた。
予想外な事態に、アリスは隣の少年を見る。
少年も、アリスを見ると困ったようにプルプルと首を振った。
「ーーーーー!!!」
「ハニャ! ハニャハニャ!!!」
……これ、ケンカじゃないよね???
ケンカじゃない! これはディスカッションだ!
伊太郎があたしに逆らう時に言う言葉を、ふと思い出した。




