ひろし、イークラトへ行く
その頃バリードレからピンデチに戻ったおじいさんとアカネは、G区画の家に戻ってきた。
アカネは玄関のドアノブをつかむと大きな声で玄関の扉を開けた。
「たっだいまー!」
「「おかえり」」
家にいたイリューシュたちは笑顔で迎えると、黒ちゃんがアカネにメッセージの事を尋ねた。
「アカネ、もらったメッセージなんだが……」
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夜、悪いやつら倒そうぜ
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「え、なに?」
「なんというか、詳細が」
「あ、ごめんごめん。夜中の0時にベンドレって悪いヤツを倒しに行くんだって。みんな一緒に行こうよ」
「「ベンドレ!?」」
イリューシュと黒ちゃんは驚いて、イリューシュは思わず呟いた。
「ベンドレさんですか……。これは大変なことになりましたね」
「え? イリューシュさん、その人知ってるの?」
「ええ、前に所属していたチームのリーダーでしたから」
「「ええ!?」」
「ベンドレさんは良い人だったんですよ……。イークラトで他の人たちのクエストを手伝ってあげたりして。だから私もチームに入ったんです」
「そうなんすか? でもバリードレで悪者の親分やってるって」
「……実はある日、ベンドレさんがホワイトドラゴンのクエストを手伝って討伐したら、手伝ったプレイヤーたちに裏切られて倒され、ステータスポイントを奪われて……」
「ええ!? そりゃ酷すぎる!」
「ベンドレさんはステータスが回復した日に、そのプレイヤーたちを全員倒したんですけど、その日から無差別にプレイヤーを倒し続けたんです」
「あら~、キレちゃったんだな……」
「そうしたら、それを見ていたチームのメンバーも次々とプレイヤー殺しを始めてしまって……」
「なるほどなぁ、それで前のチーム辞めたんすね」
「ええ、そうなんです」
すると黒ちゃんはベンドレの噂話を思い出して呟いた。
「ベンドレは、他のプレイヤーから無視されるようになってイークラトを出ていったと聞いたが、バリードレにいたとは……」
それを聞いたアカネは黒ちゃんに言った。
「なんか、ベンドレのグループは人を増やしてるみたいだよ。だから、デッカくなるになる前に倒すんだって」
「そうか……。あいつは本当に強いからな。ホワイトドラゴンなど、数分で倒すだろう」
「まじか! そりゃ面白くなってきたな!!」
ズッ!
「アカネ、そう来るとは思わなかった。あぶなくズッコケるところだったぞ!」
「ふふふ、アカネさんらしいわね」
「「はははははは」」
するとイリューシュがみんなに提案した。
「もしみなさんが参加するなら、一緒にイークラトへ行きませんか? イークラトの防具は普通に購入できるものでも格段に性能が良くなるんです。今夜は敵が強そうですから」
家に居た全員はイリューシュに賛同すると、船に乗ってイークラトへと向かった。
ー イークラトの港 ー
船でイークラトに到着したおじいさんたちは、いつものように軽トラを出現させた。
ボワン
すると珍しくイリューシュが荷台に上がってみんなに言った。
「今回は、わたしが荷台に乗りますね」
それを聞いた黒ちゃんは片膝を突いてスタンバイをするとイリューシュに言った。
「それならわたしが補助をしましょう」
「黒ちゃんさん、助かります」
こうして今回は助手席に大熊笹が乗った。
おじいさんは全員が乗ったのを確認して軽トラを走らせると、すぐさまレッドドラゴンが現れた。
ギャォォオオオ!!
それを見たアカネが驚いて声をあげた。
「うわぁ! でかいなぁ!」
するとイリューシュは黒ちゃんがスタンバイした膝に自分の足を乗せた。
黒ちゃんはイリューシュの足首と膝を掴んで固定すると、イリューシュは後足を荷台の端にかけて下半身を固定した。
「黒ちゃんさん、完璧です!」
「ありがとうございます!」
イリューシュはオロチの弓を構えると空中にいるレッドドラゴンに向けて矢を放った。
ゴォーン
ズドドドドドドドド!
ギャァォオオ!!
イリューシュが放った矢は全てレッドドラゴンにヘッドショットを決め、レッドドラゴンはゆっくりと墜落していった。
ドサッ!
地面に落ちたレッドドラゴンにイリューシュが続けざまに矢を放った。
ゴォーン
ズドドドドドドドド!
ゴォーン
ズドドドドドドドド!
ギャァォオオ……
レッドドラゴンはそのまま消滅していった。
「「おおー!!」」
「さすがイリューシュさん!」
「いつも素晴らしいですね」
「ありがとうございます」
黒ちゃんはイリューシュの足を掴んだまま称賛した。
「さすがイリューシュさん。動くモービルから正確に射抜きましたね」
「は、はい。ふふふ」
イリューシュが愛想笑いをすると、アカネが黒ちゃんの脇腹にアカネ・パンチを炸裂させた。
ドスッ!
「ゔっ」
「いつまでイリューシュさんの足掴んでんだよっ!」
黒ちゃんは慌てて手を離した。
「お、おお……。しかしアカネ、なんだかパンチが威力が増してるな……」
「そりゃそうだよ攻撃力上がってんだから。アカネ・キックも試してみる?」
「いやいや、勘弁してくれ」
「「ははははは」」
そんな事を話しているうちに軽トラはイークラトの町の入り口に到着した。
ー ピンデチ スマイル道具店 ー
その頃、おばあさんたちが店番をしているピンデチのスマイル道具店に、森から帰ってきたマユとメイとナミがやってきた。
「「おはようございまーす」」
「「おはようございます」」
挨拶を交わすとおばあさんが笑顔でマユたちに言った。
「みなさん、今日は早いわね」
すると3人が答えた。
「うん、今日日曜でオンライン授業無いのに、朝から大雨の音で目が覚めちゃって」
「それでみんなで森に行ったら、うさぎ見つけて」
「ぅん」
ナミはウエストバッグのうさぎをみんなに見せた。
「あら、寝てるのね」
「かわいいわねぇ」
「小さくて可愛いなぁ」
するとナミがカウンターで寝ているドラゴンを見つけて言った。
「ぁ、小さいドラゴン。かわぃぃ」
「さっき、お友達になったんです。うふふ」
マユたちはドラゴンまじまじと見ると驚いた。
「あ、生きてるんだ! 寝てる」
「ほんとだ、可愛い」
「ぅん」
マユはドラゴンの尻尾を触りながらおばあさんに尋ねた。
「洋子ちゃん、このドラゴンの名前あるの?」
「あら、そういえば。今はドラゴンちゃんって呼んでるわ。そういえば猫ちゃんも猫ちゃんね」
カウンターで丸まっていた黒猫は、スッと立ち上がっておばあさんに言った。
「洋子殿。我は猫ちゃんで構いません。そのほうが周りの人も警戒しませんので」
「あら、いいの?」
すると突然、ナミがドラゴンを指差しながら言った。
「ドラちゃん」
「ドラちゃん! いいね」
「かわいい名前」
おばあさんも笑いながら言った。
「あら、ドラちゃん良いわね。ドラちゃんにしましょう」
ナミはウエストバッグの隙間からうさぎを撫でながら呟いた。
「じゃぁ、ウサちゃんね」
うさぎは耳を動かして少しだけ体を震わせた。
「おはようございます」
そこへ美咲がやってきた。
「「おはようございます」」
すると哲夫が和代と目を合わせて頷き、哲夫が美咲に言った。
「美咲ちゃん、手伝ってもらいたいことがあるのだけれど、いいかな」
「うん。どうしたの?」
「実は、さっき翠ちゃんと会ってな。今夜一緒に強い敵たちを倒しに行くことになったんだよ」
「え、お姉ちゃんに会ったの?」
「そうなんだ。それでな、美咲ちゃんにも手伝ってほしいんだ」
「え、わたしが行っても大丈夫なの? お姉ちゃん怒ってるでしょ」
「翠ちゃんが、美咲ちゃんもお願い、って」
「え? ……そう。うん、わかった」
美咲は少しだけ嬉しそうにすると、下を向いた。
すると美咲は思い出したように哲夫と和代に言った。
「おじいちゃん、おばあちゃん、船って乗れるようになった?」
「え? ああ」
「あ、それならイークラトに行こうよ。敵が強いんでしょ? イークラトなら防御力の高い防具買えるんだ」
それを聞いたおばあさんも言った。
「それは良い考えね! 実はわたしもこのローブはイークラトなんです」
すると突然、カウンターから高笑いが聞こえてきた。
「はっはっは! そうなのです、みなさん! そして洋子様は私と出会ったのです!」
「「ええ!?」」
みんなが驚くと小さいドラゴンがカウンターの上で「えっへん」としていた。




