ナミ、即答する
ー ピンデチ スマイル道具店 ー
おばあさんが店番をしていると、バリードレから帰ってきた哲夫と和代がやってきた。
「あら洋子さん、今日はお早いですね」
「あら哲夫さん和代さん、おはようございます」
するとその時、和代はおばあさんの後ろのカウンターに小さいドラゴンが寝ているのを見つけた。
「あら、かわいいドラゴン。今日はドラゴンとお友達に?」
「え、ええ、そうなんですよ。付いてきちゃったっていうか。うふふ」
「あ、洋子さん、そうそう。今夜遅くなんですけど、お時間ありますか?」
「え!? ええ。一度昼寝すれば」
「実は、バリードレというところに悪い人たちが集まっているみたいで、孫の翠と一緒に退治しに行くんです」
「あら、格好良いですね」
「もし良かったら洋子さんにもお手伝いして頂けないかと思って」
「ええ、わたしがですか?」
すると黒猫がおばあさんに言った。
「洋子殿。もしお受けなさるのであれば、我とドラゴンが洋子殿をお守り致します。ご安心を」
「あら、猫ちゃん頼もしいわね。それならお手伝いさせてもらおうかしら」
「「ありがとうございます!」」
哲夫と和代はおばあさんにお礼をした。
こうして、おばあさんも深夜の戦いに参加することになった。
その頃、マユとメイとナミは3人だけのグループチャットで話していた。
ーーーーーーーーーー
マユ:起きてる?
メイ:起きてるよー どした?
ナミ:おきてる
マユ:なんか、大雨の音で早く起きちゃって
メイ:あたしも
ナミ:いま、ゲームやってる
マユ:え、そうなの?
メイ:じゃあ、うちらも行こうよ
マユ:いいね ナミ今どこ?
ナミ:ピンデチの森
マユ:おっけー、うちらも行くね
メイ:おし、薬草集めるか
ーーーーーーーーーー
マユとメイはVRグラスをかけてログインすると、歩いて森までやって来た。
すると入り口の近くでナミが待っていた。
「ナミおはよう」
「おはよー」
「ぉはよ」
3人は挨拶を交わすとナミがマユに言った。
「なんか、変なまほう使ぃいた」
「え? 変な魔法使い?」
「ぅん。うごかなぃから、プレイヤーじゃないとおもぅ」
「え、どこ?」
「こっち」
ナミは森の中を指差すと、森の中へと歩き出した。
マユとメイはナミに付いていった。
◆
3人は、今まで来た事もなかったような場所を進むと、木の蔦が階段のようになっている場所にやって来た。
ナミは木の蔦の階段を指差して言った。
「これ上がると、まほう使いがぃる」
「え、準備しなきゃ」
「ちょ、まって」
マユとメイは慌てて装備を整えると、魔法防御薬と攻撃強化薬を飲んだ。
そしてナミを先頭に3人で恐る恐る蔦の階段を上がると、立ったまま寝ている小柄な女性の魔法使いが居た。
それを見たマユが少し驚きながら言った。
「え? あの魔法使いの女の人、立ち寝してるんだけど」
「やば。すご」
「ぅん。ぅごかなぃ」
ナミたち3人は警戒しながら魔法使いに近づくと、魔法使いはゆっくりと目を覚ました。
「ふぁ~ぁ」
そして大きくあくびをすると、3人に話しかけてきた。
「あら、プレイヤーさんね。じゃぁ、私はまた寝ますね。おやすみなさい」
それを聞いた3人は魔法使いに言った。
「起こしてごめんなさい。おやすみなさい」
「おやすみなさい。お邪魔しました」
「ぉやすみ」
すると魔法使いはパチッと目を覚まして言った。
「本当に寝かせてくれるのね。驚いちゃったわ」
するとナミが魔法使いに尋ねた。
「まほう使いさん、ここでなにしてるの?」
「私? 私は主人になってくれる人を待ってるの」
「しゅじん?」
「わたしは、うさぎの魔法使い。敵を眠らせる魔法を使うの。ねぇ、あなた私の主人にならない?」
「ぅん。ぃいよ」
「では、質問させて」
「ぅん」
「性格の悪いお金持ち、性格の悪いイケメン。あたなはどちらを選びますか?」
「どっちも、ぃや」
「「ぷぷっ!」」
マユとメイはナミの即答に吹き出した。
すると魔法使いは、ナミの答えに動揺しながらも説明しようとした。
「あ、えっと、そうじゃなくて、どちらかを……」
「どっちも、ぃや。性格わるいの、ぃや」
『サイドクエスト、うさぎの魔法使いをクリアしました』
すると、うさぎの魔法使いは笑いながら言った。
「面白いわね。封印も解けてしまったわ。ぜひ私の主人になってくださいませんか? お願いします」
うさぎの魔法使いは頭を下げた。
「ぅん、ぃいよ」
ナミも頭を下げながら答えると、うさぎの魔法使いは、どんどん小さくなった。
そして、小さなうさぎの姿になるとナミに言った。
「ナミ様、必要な時はいつでも呼んでください。それまで私は寝ていますので……」
「ぅん、わかった」
「ふぁ~あ。では、おやすみやさい」
「ぅん、おやすみ」
うさぎはそのまま地面にうずくまると目をつむって寝てしまった。
ナミはそれを見ると、アイテム欄からウエストバッグを選んで腰に装着した。
そして、うさぎを抱き上げると、優しくウエストバッグに入れて半分チャックを閉めた。
それを見ていたメイがナミに聞いた。
「え? ちょっと良く分からないんだけど……え? どうゆうこと?」
するとマユが答えた。
「あれじゃない? 洋子ちゃんの猫と一緒なんじゃない?」
「あ、そうか! え? でも寝てるんだけど……」
「う~ん、寝てるね……」
「たぶん、洋子ちゃんの猫みたいに背中に乗って移動とかムリっぽいよね」
「だよね。……てか、どちらにしろ、うさぎの背中に乗って移動とかキツそうじゃない? 跳ねるよね」
「あ、そうか。それはやばいかも」
「「はははははは」」
3人は笑い合うと、森の外へと向かった。
ナミは歩きながらウエストバッグのチャックを開けて中を覗くと、白いうさぎがスヤスヤと寝ているのが見えた。
「かわぃい」
メイもバッグの中を覗き込むと不審そうに呟いた。
「このうさぎ、本当にナミが呼んだら起きるのかなぁ」
マユもうさぎを覗き込みながら首を傾げた。
「それだよね。けっこうしっかり寝てるよね、このうさぎ」
ピョコッ
「「わっ!」」
すると急にうさぎが顔を出した。
「呼ばれたら起きますよ。私は寝ながら聞いてますから。ふふ」
「あ、す、すみません」
「そ、そうなんだ。はは」
マユとメイが驚きながら返答すると、ナミがうさぎに尋ねた。
「うさぎさん、ぃつも眠いの?」
「私は寝ている間に魔力を蓄えるのです。ですから呼ばれるまでは寝ています。なので、私はまた寝ますので」
「ぅん、おやすみ」
「おやすみなさい、ナミ様」
うさぎは大きくあくびをすると、またウエストバッグに潜って寝始めた。
ナミは静かにチャックを半分くらい閉めると、隙間から指を入れてうさぎの頭を撫でた。
3人は森から出ると、マユがみんなに言った。
「ねぇ、ちょっと早いけどお店に行こうよ」
「そうだね」
「ぅん」
こうして3人はピンデチのお店へ向かった。




