ようこ、お土産を買う
おばあさんは夢中で魔キノコを集めると、あっという間に30個以上集まった。
「やったわ、これでまた看板商品が増えるわね!」
おばあさんが丘の上で満足そうにしていると、急に何かが地面から飛び出してきた。
ゴゴゴ
「あら?」
ボコボコボコ
「あらあらあら!」
なんとそれは、ボロボロのローブを着た骸骨の魔法使いだった。
しかし、足には木の根が絡みつき、少し弱っているようにも見えた。
おばあさんは慌てて杖を構えると、骸骨の魔法使いがおばあさんに話しかけてきた。
「魔法の国マガイルーへようこそ。我はモンスターではありません。ご安心を」
「え? あ、そうなんですね。はじめまして、洋子です」
「我は黒猫の魔法使い。名はありません。あなたは暗黒魔法を手に入れたくはないですか?」
「え? なんだか怖そうな名前だけれど……」
「暗黒魔法は、闇の力を操る上級魔法です。いかがですか?」
「そうねぇ、わたしには必要なさそうね。美味しいものを出せる魔法なら歓迎だけれども。うふふ」
「洋子殿、あなたは面白いお方ですね」
「あら、ありがとうございます。ところで、あなたはプレイヤーさんなのかしら?」
「いえ、我は時としてプレイヤーを喰らう者。プレイヤーではありません」
それを聞いたおばあさんが再び杖を構えると、魔法使いは跪いて話を続けた。
「我は、あなたのような無欲な方に出会ったのは初めてです」
「あら、そんな事ないわよ。わたしだって欲はあるわ」
すると魔法使いは頭を下げながら言った。
「洋子殿、お願いがあります。どうか我を眷属にしてくださいませんか」
「けんぞく……、って何かしら」
「眷属とは、主人に従う者。洋子殿の命令に服従する者です」
「ええ? そんなの嫌よ。じゃあ、お友達になりましょう」
すると突然おばあさんの視界にメッセージが現れた。
『サイドクエスト、黒猫の魔法使いをクリアしました』
「え? これは何かしら」
「まさか暗黒魔法を欲さず、眷属になる事も拒否する者が現れるとは……。お陰で封印が解かれました」
魔法使いはそう言うと、足に絡みついていた木の根が消滅した。
「まぁ、ずっと動けなかったのね。大変だったわね……」
「これも洋子殿のお陰。ぜひお供させて頂きたいのです」
魔法使いはそう言うと黒猫に姿を変えた。
「あら、可愛いわね!」
「我は、この姿のほうが動きやすいのです」
「あら、いいわね。ぷっくりしていて可愛いわ」
「え、あ、はい」
魔法使いは驚きながらも嬉しそうに答えた。
こうして暗黒の魔法使いはおばあさんとお友達になったが、魔法使いはおばあさんを主人と決めた。
サイドクエストをクリアしたおばあさんは少しマガイルーを歩いてみた。すると遠くに町が見えた。
「ねぇ、猫ちゃん。あの町には美味しいものがあるかしら」
「ふむ……。我も町の中へは行ったことがないので分かりません」
「じゃあ、行ってみましょうか」
「はい」
おばあさんと黒猫は一緒に町へ向かった。
その途中おばあさんは黒猫に尋ねた。
「そういえば猫ちゃん、あなたは魔法使いなのよね」
「はい」
「どんな魔法が使えるのかしら?」
「我は暗黒魔法の使い手。敵の心臓を潰したり、血を沸騰させたり、切り刻んだり、呼吸を止めたり……」
「あらあらあら、何だか怖い魔法ね」
「はい、我の魔法はプレイヤーには鋭い痛みと苦痛を与えます」
「ええ!? そんなのダメよ。プレイヤーさんに絶対そんな魔法は使っちゃダメよ!」
「……はい、洋子殿」
こうして黒猫は、主人のおばあさんによって暗黒魔法を殆ど封印されてしまった。
そんな事を話しているうちにおばあさんたちはマガイルーの町にたどり着いた。
「ふぅ、けっこう遠かったわね」
「はい」
おばあさんは黒猫と一緒にマガイルーの町に入ると、お土産物店に「魔法陣せんべい」が売っているのを見つけた。
「あら、これなんか美味しそうじゃない?」
「そうですね、洋子殿」
すると、お土産物店の店主が、せんべいを一枚おばあさんに渡して言った。
「あなた、あまり見ない顔ね。ぜひ食べてもらって美味しかったら買っていってね」
「まぁ、ありがとうございます」
おばあさんはせんべいを割ると、小さいかけらを黒猫にあげた。
そしておばあさんがせんべいを一口食べると、
「あああら! とっておも美味しいわ!」
「ふむ。ふむふむ」
黒猫も喜ぶと店主が言った。
「初めてのお客様は10枚サービスしちゃうよ!」
「あら! じゃあ、ええと、70枚ください」
「はい! じゃあ、サービスで80枚ね」
「ありがとうございます」
おばあさんは80枚のせんべいを買うと、黒猫に言った。
「ねぇ、猫ちゃん。あなたに10枚あげたいんだけど、どうやったら良いのかしら」
「なんと! 我に10枚もくださるのですか?」
「もちろんよ。あなたが7人目の友達だもの。私も含めて、みんな10枚ずつよ」
「……洋子殿。……では、そこに置いてくだされば」
それを聞いたおばあさんは黒猫の前にせんべいを10枚置くと、黒猫は魔法でせんべいを取り込んだ。
「洋子殿、ありがとうございます。これでいつでも食べられます」
「あら、良かったわ。また買いに来ましょうね」
「はい」
おばあさんと黒猫はマガイルーの町を後にすると、シャームの2号店へ向かった。
◆
2人はゆっくりと歩いてシャームへ向かっていると黒猫がおばあさんに提案した。
「洋子殿。私に乗っていただければ高速に移動ができますが」
「あらあら、そんな小さい猫ちゃんに乗れないわよ」
ボン!
すると、黒猫は小馬くらいの大きさになった。
「まあまあ!」
おばあさんが驚いていると黒猫は静かに伏せた。
「洋子殿、背中に乗ってください」
「ええ!?」
おばあさんは戸惑いながらも黒猫の背中に乗ると、黒猫は立ち上がって体を低くした。
「洋子殿、我の背中の毛をしっかりと掴んでください」
「あ、はい」
おばあさんが背中の毛をギュッと掴むと、黒猫は一気に走り出した。
シュタッ! シュタタタタ……
「あらあらあら、ははははは!」
黒猫は走り出すと一気に洞窟を通り抜けてシャームの町まで走っていった。
「猫ちゃん、すごいじゃない!」
「洋子殿に喜んでいただけるとは嬉しい限りです」
ブワッ!
……シュゥゥゥ
黒猫はシャームの入り口まで一瞬でたどり着くと、黒猫は元の大きさに戻った。
おばあさんは黒猫に笑顔で言った。
「猫ちゃん、助かったわ。すごいわね!」
「いえ、洋子殿がお喜びいただけたのが何よりです」
おばあさんは黒猫を撫でると一緒に歩いて2号店へと向かった。




