ようこ、チャレンジする
その頃おばあさんはピンデチ近くの森でキノコと薬草の採集を終え、お店にやってきていた。
今日おばあさんは、マユたちに頼まれて、ピンデチのお店の商品の一部をシャームの2号店に持っていく事になっていた。
おばあさんは店のシャッターを開けて中に入ると、棚で寝ていたアルマジロたちが降りてきて、おばあさんのところへやってきた。
「はいはい、岩キノコですね。ちょっと待ってね」
おばあさんは岩キノコと小枝の束を店の外に置いてあげると、アルマジロたちは並んで店の外へ出ていった。
そして1匹が小さく火を吹いて焚き火を始めると、アルマジロたちは岩キノコを焼き始めた。
おばあさんは店の中に入ると、シャームの2号店に持っていく薬の数を考え始めた。
「そうねぇ、2号店は全回復薬がメインとしても普通の回復薬も売れるのかしら……。売れるとしても少なくていいわよね……」
「おはようございます」
すると一人の細身の男性が現れた。
「はい、いらっしゃいませ!」
「あ、僕、隣で店をやっているロビっていいます。はじめまして」
「あ、はじめまして、洋子です! ご挨拶が遅くなりまして……」
「いえいえ、僕の店は夜から午前中までなんでお会いできなくて。こちらこそ、ご挨拶が遅くなりました」
「「よろしくお願いします」」
ロビはおばあさんに深々と頭を下げると、おばあさんも深々と頭を下げた。
するとロビが店内を見て驚きながら言った。
「すごいですね、薬系は魔法回復薬以外すべてありますね!」
「よくご存知ですね! そうなんですよ、魔法回復薬だけはシャームの山にあるっていうキノコが必要で……」
「あ、魔キノコですよね。シャームの山岳地帯は広くて探すのが大変なのですが、マガイルーに行けば沢山生えてるんですよ」
「ええ!? マガイルーのことは名前しか知らなかったわ。たくさんあるならマガイルーがいいわね」
「はい。ただマガイルーに行くには、1人でしか戦えない大きなワニを倒さなければならないんです」
「まぁ、それは大変そうね……」
「はい。そのモンスターは10分間攻撃を耐えるか討伐すれば良いのですが、最初は苦戦するかもしれません……」
「まぁ……。ちなみに、そのモンスターはどこに居るのかしら」
「シャームの港から東に少し歩いたところに洞窟があって、そこの中に居るんです」
「あら、じゃあ、ちょっと行ってみようかしら」
「ええ!?」
「毒の粉と痺れ粉が新しい商品になったので、試してみたいんです。うふふ」
「は、はぁ、なるほど」
「貴重な情報をありがとうございます。今度お店を見させてくださいね」
「あ、はい。朝は10時頃までやっていますので。よろしくお願いします」
「あ、そうそう、よかったらフレンドになりませんか?」
「あ、はい、ぜひ!」
ロビはそう言ってフレンド交換をすると、笑顔で頭を下げながらログアウトしていった。
おばあさんはロビを見送ると、お腹いっぱいになって道で寝ていたアルマジロたちを抱えあげて、日当たりの良い店内の棚に移した。
そして、新商品の毒の粉と痺れ粉を紙で30個ずつ包んで、2号店用に用意した。
「よし、チャレンジね!」
おばあさんはそう言うとお店のシャッターを閉めてG区画の海岸まで行き、船を呼び出してシャームへと向かった。
ー シャーム ー
おばあさんはシャームの港に着くと、東の方角に洞窟があることに気づいた。
「あら。シャームの港の東って、あの洞窟じゃない。いままで全然気が付かなかったわ」
おばあさんは物怖じせずに洞窟へ向かい、中へ入ろうとすると「この先は1人しか入れません【入る】【戻る】」と表示された。
おばあさんは【入る】を押すと、慎重に通路を進んでいった。
洞窟の中は一本道が奥の部屋に繋がっていて、奥の部屋の真ん中には大きなワニがいた。
「あれね」
おばあさんは手に痺れ粉を持つと、ワニに近づいていった。
ガァァアアアア!
ワニが大きな口を開けておばあさんの方へ向かってくると、おばあさんは痺れ粉をワニに投げつけた。
バフッ
ガァ……ァ……
ワニは動きが止まった。
「やったわ!」
おばあさんは喜ぶと、すぐに詠唱を始めた。
「凍てつく氷の女神たちよ、我に冷血なる力を与えたまえ。凍る六花の結晶をもって嘆願する。あの者に絶対零度の裁きを!」
キー……ン
ズガガガガガン!
ガァァ!
ワニはダメージを食らって少し怯んだが、すぐに動けるようになって一直線に襲いかかってきた。
ガァァァアアアア!
おばあさんは咄嗟に横へ避けたが、それを見たワニは尻尾でおばあさんに攻撃した。
バチン!
「あ!」
おばあさんは一撃でHPを半分以上減らしてしまったが、今度は毒の粉を用意して投げつけた。
「これはどうかしら!」
バフッ
するとワニに「毒」の表示が現れた。
「あら、毒も効くみたいね。よし!」
おばあさんはそれを確認すると、入り口に向かって一目散に逃げ出した。
「ごめんなさいね、やっぱりあなた強かったわ!」
ワニはおばあさんを追いかけたが、おばあさんが洞窟の通路を半分くらい戻ると、突然立ち止まって奥へと戻っていった。
おばあさんはそれを見て回復薬を飲むと、奥に戻っていったワニを眺めながら少し考えた。
奥の部屋の真ん中に戻ったワニには、まだ「毒」の文字が表示されていた。
「あのワニ、外へ出てこれないのかしら。それなら……」
おばあさんは痺れ粉と毒の粉を両手に持つと洞窟の奥へ走っていった。
ガァァァアアアア!
そしてまた痺れ粉でワニ足を止めると毒の粉を食らわせ、小呪文を詠唱した。
「凍てつく氷の女神たちよ、あの者に絶対零度の裁きを!」
パーン!
するとまた、入り口に向かって一目散に逃げ出した。
ワニはおばあさんを追いかけたが、やはり通路を半分くらい戻ると静かに奥へ戻っていった。
「これだわ! うふふ」
おばあさんは遠くに見えるワニの「毒」の文字が消えるまで待つと、同じことを繰り返した。
そして12往復目、とうとうワニは毒のダメージで消滅していった。
『30ポイントのステータスポイントを獲得しました』
「やったわ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
すると、洞窟の奥の岩壁が崩れてマガイルーへの道が開いた。
おばあさんは洞窟を抜けると、今までに嗅いだことのないキノコの匂いに気づいた。
「きっと、この匂いね」
おばあさんは匂いを頼りに歩いていくと、日当たりの良い丘の上に、キノコが逆さまになったような形のキノコを見つけた。
「これだわ、魔キノコ!」
おばあさんは大喜びで収穫すると、匂いを頼りにどんどん魔キノコを集めていった。




