ひろし、ドラゴンと対峙する
元自衛官の3人はドラゴンの周りに均等に広がると、一斉に矢を放った。
ドラゴンは、誰に攻撃して良いのか迷っている様子で頭をキョロキョロとさせて動揺した。
するとおじいさんは、その隙を見逃さずに勢いの乗った一球を放った。
シャァァアアアァァア………ズバン!
ギャォォオオオ!
おじいさんの石がドラゴンの首元へ命中すると、ドラゴンは大きく怯んだ。
しかしドラゴンは目を見開いて体勢を整えると、おじいさんに向かって炎を吐こうと大きく息を吸った。
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、 ドッ! ドッ! カン
しかしそれを防ぐように元自衛官3人がドラゴンの頭に矢を放ち、2本が命中した。
ギャァァオオオ!
矢を受けたドラゴンは大きく暴れると、振り回された尻尾の先が山口に当たってしまった。
ドガッ!
「くっ!」
山口は大きくHPを削られて戦線から離脱すると、残りの元自衛官の2人が山口とは反対方向へ走り込んで矢を放ち、ドラゴンの気を引いた。
そして山口が全回復薬を飲んでいる間に、尻尾の近くにいた哲夫と和代が毒の粉と痺れ粉を尻尾へ投げつけた。
バフッ! バフッ!
ギャャ……グォォオ
するとなんと、ドラゴンは麻痺して動けなくなり、頭の上に「毒」「麻痺」の表示が現れた。
それを見た山口が弓を構えて大声でいった。
「今だ、撃て! 総攻撃だ!」
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、 ドッ! ドッ! ドッ!
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、 ドッ! ドッ! ドッ!
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、 ドッ! ドッ! ドッ!
シャァァアアアァ………ズドン!
シャァァアアアア………ズガン!
動きが止まっているドラゴンを見て、哲夫と和代は、さらに毒の粉と痺れ粉を食らわせた。
グォォ……オ……
ドラゴンはしばらく動きを封じられていたが、なんと突然狂ったように暴れだした。
ギャァアオオオ! ギャァアオオオ!
「あぶない! 全員距離を取れ!!」
山口の声に全員一斉にドラゴンから離れた。
その時、おじいさんと元自衛官3人は目で申し合わせて頷くと、元自衛官の3人は集まってドラゴンの前に躍り出た。
「ドラゴン! わたしたちが相手だ!」
そして一斉に矢を放つと、ドラゴンが炎を吐こうと大きく息を吸った。しかし、その瞬間、
シャァァアアアァァア……、ズガン!!
おじいさんの石が横から一直線にドラゴンの頭を直撃した。
シャァァアアアァァア……、ガン!
そして追い打ちのトドメの一撃を食らわせると、ドラゴンは声も上げずにフラリと崩れ落ち、そのまま動かなくなった。
ドシャアァ!
「「やったー!!」」
みんなは、一斉に集まると抱き合って喜んだ。
「待ってください、まだ消滅していません!」
おじいさんが慌てて声を上げると、なんと倒れたドラゴンの尻尾がおじいさんたちに襲いかかった。
「あぶない!」
バシン!!
しかし思いもよらないドラゴンの攻撃に、全員が尻尾の攻撃を食らって部屋の角へ吹き飛ばされてしまった。
「「わぁぁああ!!」」
ズザァァアアア
なんとか全員助かったものの、全員HPがほとんど無くなってしまっていた。
「油断!」
山口が即座に起き上がって弓を構えたが、なんとドラゴンが床に倒れたまま口を開けて炎を吐こうとしていた。
おじいさんたちは部屋の角で身動きが取れず、おじいさんもポケットから石を取り出す時間も無かった。
その瞬間、
グ……グァアオオ……
なんと、ドラゴンがゆっくり消滅し始めた。
ドラゴンの上には「毒」の表示が点滅し、毒がトドメを刺したことがわかった。
『10ポイントのステータスポイントを獲得しました』
『メインクエスト 第一章 完』
「「やったー!!」
おじいさんたちは、みんなで抱き合うと大喜びで称え合った。
物陰から飛び出しそうになったNPCのヘルプ騎士は、頭を掻きながら物陰へ戻っていった。
「いやぁ、毒がなければやられていました!」
「みなさん、すばらしい攻撃でしたね!」
「強化薬も無かったら勝てたかどうか」
「これは、いいチームですな!」
「「ははははは」」
おじいさんたちは暫く喜び合うと、全回復薬を飲んでアンデッドモンスターに気をつけながら洞窟を脱出した。
そして、ピンデチまでみんなで楽しく喋りしながら歩いて帰っていった。
◆
おじいさんたちが時計台まで戻ってくると、もうすでに12時近くになっていた。
すると山口が慌ててみんなに言った。
「我々は午後からバスの運行がありますので、昼食をとりに一度帰ります。みなさん、良かったら明日もご一緒にメインクエストに行きませんか?」
それを聞いたおじいさんと哲夫と和代は笑顔で頷くと、おじいさんが言った。
「ぜひ、宜しくお願いします」
「我々は早朝6時に出発する予定ですが、いかがでしょうか」
「はい、大丈夫です」
「はい」
「おねがいします」
こうしておじいさんたちは明日も元自衛官の3人と一緒にメインクエストに行くことになった。
元自衛官の3人は昼食をとりにログアウトすると、和代が哲夫に言った。
「哲夫さん、わたしも一度戻りますね」
「和代、いつも手間をかけてすまんな」
「いいえ、お気になさらず。哲夫さんは店番をお願いしますね」
「ああ、わかった」
哲夫は和代に返事をすると、和代と一緒におじいさんに頭を下げた。
「今日は本当にありがとうございました。お手数をおかけしますが、また明日も宜しくお願いします」
「いえいえ、わたしはゲームの世界でたくさんの人に助けていただきました。まだまだ力不足ですが、お力添えできることが嬉しいんです」
おじいさんは、そう言って深々と頭を下げて続けた。
「では、わたしはG区画の家へ行きますので、また明日一緒に頑張りましょう」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
おじいさんは三輪自転車を出現させて笑顔でまたがると、哲夫と和代に手を振りながらその場を離れた。
「……早くお孫さんに会わせて差し上げたいなぁ」
おじいさんはふと呟くと、今日の戦いのことを思い出しながらG区画の家へと向かった。
◆
おじいさんがG区画の家に着くと、イリューシュが家の前の画面を操作していた。
「イリューシュさん、こんにちは」
おじいさんがイリューシュに声をかけると、イリューシュは笑顔で答えた。
「あら、ひろしさん、こんにちは。ちょうどいい所にいらっしゃいました」
「ちょうどいいところ、ですか?」
「ええ。昨日のドラゴンとの戦いで、ひろしさんのモービルが消滅してしまったので、どの車だったかと思って………」
「あ、この右端のコレです」
「これですね」
ボンッ!
イリューシュが画面を操作すると軽トラが現れた。
「ひろしさん、この車も前の車のデータを引き継ぎましたので、自由に使ってくださいね」
「ええ!? いいのですか?」
「もちろんです。逆にいつも運転していただいて助かります」
「イリューシュさん、いつもすみません。なんとお礼を言って良いやら………」
「いいえ、お礼を言いたいのは、わたしのほうなんですよ。毎日こんなに楽しく過ごせるなんて」
おじいさんとイリューシュは笑い合いながら家の中へと入っていった。




