ひろし、豪速球
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
めぐは少しづつ迫ってくるドラガから逃れるように後ろに下がりながら、小呪文を放った。
しかし、ドラガにはあまり効いておらず、めぐは焦りながら後ろへ下がった。
イリューシュはいつもの弓に持ち換えると、ドラガに向けて矢を放った。
おじいさんもポケットから石を取り出して渾身の力で投げつけた。
ヒュッ、ヒュッ
シャァァアア……
しかし、ドラガは素早くステップすると、全て避けてしまった。
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁き……、あ、MPがない!」
めぐが慌てると、ドラガは無表情のまま剣をクロスさせて構えた。
「おじいちゃん!」
めぐが叫んだ瞬間、
ブォォォオオオオ、ズザァァァアア!
「とうっ! アカネ参上!!」
なんと、黒ちゃんのバイクのモービルが横滑りしながら間に入り、後ろに乗っていたアカネが飛び出した。
アカネはそのままドラガに走り込むと、それに反応したドラガは剣をクロスしたまま一気にアカネに飛び込んでいった。
ブワッ!
しかし、アカネをそれを前回り受身ですれ違うようにして避けると、ドラガは体を反転して剣を上から振り下ろした。
「そう来ると思ったぜ!」
アカネはニヤリと笑って一気に懐に入ると、剣を振り下ろした腕を掴んで一本背負いに持っていった。
「やぁぁああ!」
ブワッ!
ドラガの体は美しく宙を舞い、素早く地面に叩きつけられた。
ドガン!
「黒ちゃん!」
「おう!!!」
アカネは素早くドラガから離れると、黒ちゃんが炎を纏わせた両手剣をドラガに叩きつけた。
ドガン! ドガン!
しかし、その瞬間、
ドスッドスッドスッ!
ドラガの剣が黒ちゃんの体を何度も貫いた。
「それがどうしたぁぁあああ!」
ドガン! ドガン! ドガン!
黒ちゃんは左腕でドラガの突き刺した腕を握りしめると、右手で両手剣を叩きつけた。
ブワッ!
その時、めぐが毒の粉をドラガに当てると、HPを減らしていたドラガに毒属性が付いた。
「グォ……ォ……」
それを見たアカネが後ろからドラガに痺れ粉を投げつけると、弱っていたドラガは痺れて動けなくなった。
「グ……ゥ……」
しかし、黒ちゃんも痺れ粉を少し受けてしまい咄嗟にドラガから離れて叫んだ。
「だ、だれか、とどめを!」
その時、すでにおじいさんが投球フォームに入っていた。
おじいさんは左足を大きく踏み込むと、低い姿勢から腕をしならせて剛速球のストレートをお見舞いした。
シャァァアアアァァア……
ズバンッ!!
「グァァアアア!!」
おじいさんの一撃が唸りを上げながらドラガに命中すると、ドラガは眩く光り輝いて消滅していった。
『1000ポイントのステータスポイントを獲得しました』
「やったぁ!!」
めぐは大きな声を上げると、おじいさんのところへ走っていって抱きついた。
そこへアカネとイリューシュも走っていって抱きつくと黒ちゃんも軽く痺れながら抱きついて、みんなで一緒に喜んだ。
「「やったーー!」」
みんなは大笑いして喜ぶと、めぐは小さく跳びはねながらアカネに言った。
「アカネ、ほんとカッコよかったよ! アカネたちが来た時ヒーローが来たみたいだったもん」
「まじか! やったな黒ちゃん!」
ゴン!
アカネが黒ちゃんの脇腹をパンチすると、なんと黒ちゃんが消滅し始めた。
「ええ!? 黒ちゃん!?」
黒ちゃんは消滅しながらアカネに言った。
「ドラガの攻撃で残りHPが1しかなかったのだ……」
「ええ! まじで!? ごめん黒ちゃん!」
黒ちゃんは微妙な表情で消滅していった。
『576ポイントのステータスポイントを獲得しました』
「うわわわわ、まじごめん黒ちゃん!! あぁ、まじかぁ……」
アカネはさすがに肩を落として落ち込んだ。
そこへ、SUVのモービルがやってきて中からリスポーンしていた社長が降りてきた。
「みなさん、本当に助かりました。社を代表してお礼を申し上げます!」
社長は深々と頭を下げると、みんなも一斉に頭を下げた。
するとアカネがイリューシュに聞いた。
「イリューシュさん、この人だれすか?」
「このゲームの会社の社長さんです」
「まじっすか!! ははー」
「「ははははは」」
アカネが深々と頭を下げると、みんなから笑い声が巻き起こった。
すると社長が笑顔で言った。
「みなさん、ピンデチの村までお送りします。どうぞ乗ってください」
みんなは社長のSUVに乗り込むと、バトルの話で盛り上がりながらピンデチに戻り、社長にお礼を言ってG区画の家へと帰っていった。
◆
おじいさんたちは時計台から坂を下ってG区画の家へ向かうと、家の前でリスポーンしていた黒ちゃんが待っていた。
黒ちゃんを見つけたアカネは慌てて走っていって、黒ちゃんに土下座した。
「黒ちゃん、ごめんよ。ほんとに知らなかったんだ。ほんとごめん」
黒ちゃんはアカネの腕を引っ張り上げながら言った。
「アカネやめてくれ。何も言わなかったわたしが悪いんだ。気を使わせて、すまない」
「いやいや黒ちゃん、あたしが……」
それを見た、めぐが言った。
「ほんと二人とも仲がいいよね~」
「え、いや、黒ちゃんからステータスポイント取ちゃったしさぁ、だからさぁ」
「アカネ、気にしないでくれ。お前が使ってくれたら、わたしも嬉しいんだ」
それを聞いたイリューシュはアカネに言った。
「ふふふ。アカネさん『ありがとう』って手を握って差し上げたらいかがでしょうか」
「え、ああ、ああ……。そうっすね。黒ちゃん、ありがとう」
アカネは笑顔でそう言うと、そっと黒ちゃんの手を握った。
べちゃぁ
「お、おお、おい! 黒ちゃん手汗がヤバイぞ!」
「す、すす、っすすまん! お礼を言われるなんて思ってもいなかったから、き、き、緊張してしまって」
「「ははははは」」
みんなは笑いながらG区画の家へ入り、しばらく和室でワイワイおしゃべりして、ログアウトしていった。
イリューシュはみんながログアウトしていくのを見送ると、テーブルの上で寝ていたピピちゃんを撫でながら呟いた。
「本当に、みなさんとお友達になれて良かったわ……。こんなに毎日たのしいなんて。ふふふ」
イリューシュは満面の笑顔になると、嬉しそうにログアウトしていった。
その頃、無事にバスを助け出したおばあさんたちはピンデチに戻って店へと向かっていた。
すると、誰かが後ろからおばあさんたちに話しかけてきた。
「すみません! 岩キノコ買ってくれるお店の人ですよね」
おばあさんが振り返ると若い男性がいた。
「え、ええ。はい、そうです」
「氷の魔法めっちゃカッコよかったです! バスから見てました!」
「え、あ、ありがとうございます」
すると女の子のグループがやってきてナミに話しかけた。
「弓の人ですよね! カッコよかったです! あ、アルマジロかわいい」
「キュウキュウ」
気づくと、おばあさんたちはバスに乗っていた人たちに囲まれていた。
「さっきの防御魔法すごかったですよ! あたしも僧侶なんです」
「え、ほんとに? 仲間だね!」
「サンドワームに片手剣で走り込んでいった姿は格好良かったよ! 惚れちゃうよ!」
「あ、はは。ありがとうございます」
するとバスの運転手の大槻もやってきて、敬礼して言った。
「大変助かりました! みなさんが居なかったら、どうなっていた事か!」
すると乗客だった男性がバスの運転手の大槻に言った。
「運転手さんもカッコよかったよ。おれ、あんなでっかいサンドワームが前に来たらバス置いて逃げちゃうよ」
「あ、いえ、使命感というか……」
すると他の乗客もやってきて大槻を取り囲んだ。
「運転手さん、最後まで運転してくれてありがとう!」
「また、バス乗るね!」
「うん! わたしも」
大槻はみんなの言葉に満面の笑顔になると、姿勢を正して敬礼をした。




