ひろし、バイキング
軽トラで予選の塔へと向かう途中、軽トラの荷台では、めぐとアカネと黒ちゃんが話をしていた。
「ねぇアカネ。なんか運営、急にバトル・イベントはじめたよね。頂上決戦とか、社長のとかさ」
「だな。まぁ、あたしは強い敵と戦えるなら何でも歓迎だけどね!」
「なんか、もっと女子なイベントやらないかなぁ」
「え、めぐはイイじゃん。今度バンドイベントで歌うんだしさ」
「音源通ったらね。でも、なんていうのかなぁ、例えばスイーツ食べ放題とか、ファッションショーとか」
「あー、スイーツ食べ放題はあたしも行きたいなぁ」
「でしょ。いいよね。だって太らないし」
すると黒ちゃんが思い出したように言った。
「スイーツ食べ放題ならコーシャタにあるぞ」
「「ええ!?」」
2人は驚いて黒ちゃんを見た。
黒ちゃんは少し驚くと恥ずかしそうにしながら話した。
「いや、実はスイーツが好きで、よくコーシャタのスイーツ・パラライズに行くんだが……」
アカネはそれを聞くと満面の笑顔になった。
「まじか! おっし、予選が終わったらコーシャタのスイーツ・パラライズに行こうぜ!」
「「おー!」」
荷台ではテンションが上がっていた。
そんなことを話していると目の前に塔が見えてきて、たくさんの人だかりが見えてきた。
おじいさんたちは塔の前で軽トラから降りると、受付へと向かった。
◆
しかし、おじいさんたちが受付に到着すると「本日受付終了」の看板が出ていた。
それを見たアカネはガッカリして呟いた。
「なんだぁ、すぐ予選できると思ったのに」
肩を落としているアカネにめぐが言った。
「今日、初日だから混んでるんじゃない? 明日だったら空いてるかもよ」
「そっか。確かにそうだよな」
それを聞いていたイリューシュも頷いた。
「仕方ないですね。では明日また来ましょう」
すると急に黒ちゃんが嬉しそうに提案した。
「ではコーシャタへ行きませんか?」
それを聞いたアカネとめぐは嬉しそうに声をそろえた。
「「スイーツ・パラライズ!」」
こうして一行は、軽トラでコーシャタへと向かった。
ー コーシャタ スイーツ・パラライズ ー
おじいさんたちは入口で全ての物が食べたり飲んだりできる「おすすめバイキング」を選んだ。
そして、みんなは取り皿を手に取って奥へ進むと、めぐは店内広告を見て驚いた。
「え、すごい! バーケンダッツ食べ放題やってる! やった」
めぐは嬉しそうにしてバーゲンダッツのアイスクリームを皿に乗せ始めた。
おじいさんは洋菓子ばかりで何を食べようかと困っていると、黒ちゃんがおじいさんに提案した。
「ひろしさん、甘いものだけではなくて、こちらにカレーやサラダ、果物もありますよ」
「あぁ、それはいいですね!」
おじいさんは嬉しそうにサラダと果物を取りに行った。
しばらくして全員がテーブルにつくと、みんなは黒ちゃんとイリューシュの皿に驚いた。
黒ちゃんの皿は、その体格に似合わず、美しい配色のケーキが綺麗に並んでいて、果物もバランスよく置いてあった。
そして、イリューシュの皿はもはやアートな状態で、美しく飾られたバーケンダッツを中心に絵画のような一皿だった。
アカネは2人の皿を見ると目を丸くしながら驚いた。
「黒ちゃん、女子力高っ! ってか、イリューシュさんヤバ!」
すると黒ちゃんは、皿の左右に綺麗にナイフをフォークを並べ、紙ナプキンを二つ折りにして膝の上に敷きながら答えた。
「そうか?」
「いやいや、どんだけ上品なんだよ」
「我が家ではこうするのが当たり前だったのでな」
「え、何? 黒ちゃん家、貴族?」
「「ははははは」」
みんなが笑っていると、めぐが何らや手で操作をしていた。
めぐはスクリーンショットで二人の皿を写真に撮ると、何やらアップロードし始めた。
それを見たアカネがめぐに言った。
「あ! 今、二人の皿の写真撮ったでしょ! 自分の皿みたいにツイッタグラムに載せるんでしょ!」
「え? そ、そうなの、かな? ははは」
「「はははは」」
めぐが笑いながら誤魔化すと、みんなも笑いながらナイフとフォークを持った。
「「いただきまーす!」」
そしてみんなは笑顔でスイーツを食べ始めた。
「うま!」
「おいしー」
「あぁ、これは、なかなか」
「うん、うまいな!」
「あら、ちゃんとバーケンダッツですね」
すると、めぐが前から気になっていることをイリューシュに尋ねた。
「そういえばイリューシュさん、今までどんな職業をやって来たんですか?」
「ええと、最初は大地の魔法使いで、次が召喚士だったかしら。それから召喚魔導士に昇格して……」
イリューシュは上を向きながら少し考えると続けた。
「あ、それで賢者になって……、ええと、それから大弓使い? あ、氷の魔法使いはいつだったかしら」
「な、なるほど」
みんなは、とりあえずイリューシュさんは何でもできるということが分かった。
するとアカネは黒ちゃんにも聞いてみた。
「黒ちゃんは騎士一筋だよな!」
「あ、いや、最初は僧侶だったんだ」
「「ええーー!」」
「だれかを助けたいというのがあってな。だが、何というか性に合わなくてな」
「それ分かるよ。守るだけはチョットな」
「うむ、そうなんだ。だがお陰で防御魔法もできるんだ」
「いや、だって黒ちゃん防御しないじゃん!」
「ま、まぁ、そうだな」
「「はははは」」
みんなは楽しくお喋りしながらスイーツを楽しむと、お腹いっぱいになってG区画の家へ戻った。
そして、また明日お昼に会う約束をすると、みんなログアウトしていった。
おじいさんがVRグラスを外すと、おばあさんはまだゲームをやっていた。
「おばあさん、お店は上手くいっただろうか」
おじいさんはそう言いながら台所へ行くと、冷蔵庫を開けてレタスとプチトマトを取り出し、水で洗った。
そして皿に盛り付けると、キュウリを塩もみして丁寧に切って乗せた。
「これでよし」
おじいさんは、台所から戻ってくるとテーブルに座ってガイドブックを読み始めた。
「大福の食べ放題もあるのだろうか……」
おじいさんは好物の大福の食べ放題の店がないか探し始めた。
ー 現実世界 横浜の介護付きマンション ー
ゲームの中で祖父と会えた美咲はVRグラスを外して現実世界に戻っきた。
そして嬉しそうにしながらテーブルに座っている祖母に話しかけた。
「おばあちゃん、おじいちゃんと話したくない?」
「え、哲夫さんと?」
「うん! わたし今話してきたんだ。おじいちゃん喜んでた!」
「ええ、ほんとうに?」
「おじいちゃん、すごくゲーム上手で、すぐに歩けるようになったんだ」
「哲夫さんが? 歩く?」
「待ってて。ごめん、また3万円借りてもいい?」
「ええ。お金なんて、いくらでも使って!」
「ありがとう、ちょっと待ってて!」
美咲は玄関を飛び出していくと、向かいの家電量販店に行ってVR-GigBoxをもう一台買ってきた。
そして戻って急いで準備をすると、祖母に最初のチュートリアルやサーバーなどの説明をしてVRグラスを手渡した。
「おばあちゃん、わたしは先に行って待ってるから」
「ええ、わかったわ」
祖母がVRグラスをかけてコントローラーで操作を始めると、美咲もVRグラスをかけた。




