暗転
少し短めです。
【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)
【イベント1日目】
光が収まると俺は巨大な神殿のようなところにいた。
周りを見ると、豪華に装飾された壁に神々しい絵画などが見える。
日本ではまず見ることがない内装に思わず見入ってしまう。
いかにも歴史ある建造物って感じだ。
どうして俺はこんなところに居るんだろうか。
隣にはマーナさんが居る。
まだ状況をいまいち飲み込めない。
「ここはどこですか?」
『あるダンジョンの最奥だよ。用があるのはあそこの宝珠だ』
そう言われた方向を見ると、見るからに大事そうな水晶が祀られるように置いてあった。
色は禍々しい黒。この神殿にまるで封印されているみたいな雰囲気だ。
ヤバそうだなあ。
ここで{断罪}を克服できる? もし、言ったのがマーナさんじゃなかったら絶対なにかの罠だと思っただろう。
「これ本当に大丈夫なんですか」
『ふむ。古い伝承には、大天使に罰された者が唯一その呪いに打ち勝てる方法だと書かれていたよ』
「大天使? 呪い……ですか?」
大天使の呪いなのか? この{断罪}は。
マーナさんが何を言ってるのか全く分からない。
イベントに天使みたいなやつが居たのだろうか?
心当たりはないが、戦ったプレイヤーの中に居たのかもしれない。
『ん? その{断罪}は大天使が罪人を処するときに使うものだよ。伝承だとそうなった罪人は必ず死ぬと言われているが……流石だなサクヤ』
「あ、ありがとうございます」
必ず死ぬ……ね。
確かに俺は死んだ。そこは間違いない。
『後はその宝珠に己を捧げるだけだ。正直、私もどうなるかは保証できない。止めるなら今だぞ?』
マーナさんは確認するように聞いてきた。
その声には俺を心配する気持ちが確かに感じられる。
改めて考えてみても、この状況は明らかに異常だ。
ここはダンジョンの最奥らしいし、謎の状態異常{断罪}は大天使の呪いらしいし、宝珠は禍々しいし、マーナさんですら先を保証できないし。
リスクだけを考えると辞めたほうがいいのかもしれない。
しかし、だ。
恐らくこんな機会はこの先、二度とないレベルだと思う。
多分だが色々なことが奇跡的に重なってるだけだ。
実際、イベントで慢心して死んだだけでこんなところまで来てしまった。
そもそも天使って何だ? というレベルなのだ俺は。
そんな知識であれこれ考えるのは正直なところ無駄だし、決めるならより面白そうな方に決めるだけだ。
俺は最初からずっとそうだった。
「やります」
俺はマーナさんにそう答えた。
『サクヤならそう言うと思ったよ』
マーナさんは俺の答えを分かっていたようだ。
俺は禍々しい宝珠に近づいていった。
一歩、二歩と歩みを進める。
禍々しい宝珠まで残り十数メートルというところで、異変が起きた。
宝珠の周りの地面の一部分に魔法陣のようなものが現れたのだ。
大きさは人ひとり分ほど。魔法陣は光を放っている。
何だこれは。
俺まだ何もしてないよな?
よくある踏むと発動するブービートラップ的なやつだろうか。
確かに映画ならありそうだ。……これはゲームだった。
だとするとこれは侵入者に対する罠ってことだと思う。
どこでフラグを踏んだのかは知らないが。
俺の考えを肯定するように、光る魔法陣から何かが出てきた。
地面から生えるように人型のものが姿を現す。
「フッ、天使すぎるくらいに天使だな」
それは思わず笑ってしまうほど天使だった。
背中に真っ白な羽が生えており、純白の服に身を包んでいる。
イメージ通りの天使。10人が見たら10人が天使だと思うだろう。
特に防具はしていないが、手には大きな剣を持っていた。
「排除します」
無機質な声が聞こえた。
天使の顔は端麗だが、表情はなく目も無機質だ。
まるで人形だな。
俺がそう思った瞬間、魔法陣がもう一つ現れる。
大きさはさっきと一緒。これは……。
「排除します」
追加の天使が現れた。
一体目と姿も性別も何もかも一緒だ。
量産型天使。手抜きか?
『ふむ。昔はこんな仕掛けは無かったのだが』
俺が固まっているとマーナさんがそう言った。
昔か。何度かここに来たことがあるみたいだな。
それにしてもこの天使たちはどういう条件で出てきたんだろうか。
プレイヤーに対して出てくるというのが一番ありそうな説だが、何体出てくるのか。
というか《鑑定》したいな。
初めて見る天使のステータス……とても気になる。
と、そんなことを考えた瞬間。
天使が俺に向かって突進してきた。
速っ!
『《散れ》』
俺に向かって来たのであろう2体の天使が粉々になった。
まるで分解されたみたいに居なくなってしまったのだ。
マーナさんが助けてくれなければ、俺はたぶん死んでいただろう。
天使のステータスを舐めていた。
低下した俺のステータスでも回避くらいは出来ると思っていたが、実際は反応さえ出来なかった。
また慢心だな。
そろそろ慎重という考えをしっかり持った方がいいかもしれない。
新しく《危機感知》でも取ろうかな。
「マーナさん助かりました」
『最下級とはいえ天使だからな。今のサクヤには厳しいよ』
今ので最下級らしい。
さすが天使といったところ。やはりかなり強い部類みたいだ。
そしてそんな天使をワンパンで粉々にするマーナさん……。
当たり前だが、まだまだ上があるんだなあ。
気を取り直して宝珠に向かう。
近づけば近づくほど、宝珠の禍々しさがよく分かる。
如何にも闇って感じのオーラを纏っているし、マーナさんが宝珠に近寄らないのも怪しい。
マーナさんはずっと動いていない。
転移してきたときの場所にずっと居るのだ。
怖ぇー。
そう思いながらも俺は進んだ。
宝珠の目の前に来た。
宝珠の中には黒い何かが渦巻いている。まるで中に何かが封印されてるみたいだ。
もしこの宝珠を叩き割ったりしたら、中から魔王とかが出てくるかもしれない。
全然あり得そう。
そんなくだらないことを考えていると、目の前にウィンドウが表示された。
========================================
条件を満たしました。" ????の宝珠 " を使用可能です。
" ????の宝珠 " に身を捧げますか?
【YES】 or 【NO】
========================================
????の宝珠ね。
システムのウィンドウにも表示されないとは。
日和る気持ちを抑えて、俺はYESを押した。




