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十七年式歩兵銃の限界

 今の僕に、この邪悪な魔女に抗う手段は、銃を使ってできるかできないかといったところだ……!

 そのまま力を解放してくれ、十七年式歩兵銃!


「うあ゛あぁぁぁあぁぁぁーーっ!!!」


 アリベラーレが腹の底から叫んだその時、魔女の髪の毛にあまり絡み付かれていなかった彼の銃が弾かれたように持ち主の元へ飛んでいった。

 力を解放するのには銃を手で触っていなければならないのにも関わらずである。


 銃の力が解放されたのを感じる!


「こイッ!」


 無我夢中でフィトニに抵抗することだけを考えていた。銃をこちらに引き寄せ、銃の許容量ギリギリまで魔力を流し込む。銃は黄色に光りだした。


 引き金を引く。

 これが通用しなかったら僕になす術はもうないっ……


 彼がこんなにも強く願ったのは生まれて初めてだった。



 銃弾が纏っていた魔力は魔女の髪の毛でいとも簡単に引き剥がされ、ただの銃弾はその髪に弾き返された。




「ああ……あぁ……」




 体から力が抜けてしまった。生き物を遊び道具にするようなことがやっぱり許せなかったのだ。自分は正義なのだから、勝って当然だと、そう思っていたのだ。


「ッハハハハハ! アリベラーレ! なにしてるんだ?」


 自惚れていたことへの恥ずかしさと自分の全力が全く通用しなかった悔しさでなにも答えられない。


「だめじゃないか、感情のままに戦うなんて!」

「私にサカらっタナ? おマエから契ヤく名をイエ。」

「嫌だ……」


 首にフィトニの髪の毛が食い込む。銃はフィトニの髪に捕まったが、まだ抵抗しようと動いている。


 息ができない……!


「言わナけれバシんでシマウぞ?」

「ハハハ! 嫌がってるじゃないか、やめてやりなよ!」

「それナラオまえガ……契約メいをおしエろ……」


 僕の首に食い込んだ髪の毛が少し緩んだ。


「断る! お前なんかに教える義理はないね!」


 フィトニの髪が、今度はインセニレの首を絞め始めた。


「すぐ力で相手を思い通りにしようとする、そんなんだから封印されたのさ! ハハハハハ!」


 インセニレ……なぜそんなに笑っているんだ? 


「黙れェ!!! タマシイをすべて魔リョくに変エレバ……封イんを破るノに十分な量にナル!」


 フィトニはもう少女の形をしておらず、醜いヒト型の化け物になっていた。


「言ったな……やれるもんならやってみろ! 紙とペンを寄越しな!」


 やめろ!やめろインセニレ! 契約名を魔女に渡したら……君と契約した魂がどうなるかわかっているはずだ! 全部魔女の力に変えられてしまうんた!


 フィトニが髪の毛で紙と羽根ペンを探し出してインセニレに寄越す。インセニレは契約名を書いてフィトニに渡しながら言った。

「こう読むんだ……(いずみ)嬰螈(えいげん)


 フィトニはいつの間にか僕らの魂謄本を盗っていた。どちらがインセニレのものなのか彼女にはわからない。少し迷って二冊とも手に取って念じ始めた。


「わカる……ワカるゾ、タマシイの感触が!」


 フィトニが左手に持っていた魂謄本から細く黒い鎖が大量に出てきた。


「ヒュフフフフフ……おマエが私の力ニなるタマシイ第1号ダ……! あリガタく思うがイい!」


 フィトニはそう叫びながら右手に持っていた方……僕のを投げ捨てた。


 ふざけやがって……


 鎖が消えると、黒く大きな獣が飛び出してきた。



 グルルルゥゥ……



 それは唸ると、フィトニに襲いかかった。


「ギイィ! イダいっ! 痛イぃぃ」


 辺りに血が飛び散る。


(俺とあれだけ戦って封印されたのにまだ実体化できるのか……)

「アハハハハハハ! 俺は魂と対等な立場で契約を結ぶわけじゃない……必要な罰を与えるために、一方的に蹂躙して無理矢理契約を結ぶ」


「私ヲ騙したナア゛ア゛アあァァァ!」


 フィトニは必死に獣の牙を振りほどこうとしているが、牙は食い込むばかりだ。


「騙してなんかいないさ! お前が勝手に勘違いしただけだ、大方知ってる情報に弱い魂を扱う者たちのことしかなかったとかだろ。……そいつとは契約を結んでからまだそんなに時間が経ってねぇ。そいつの怒りはとんでもないだろうよ!」

「なゼワタしを襲ウノだ……!? オそウならアイツだろウ! こノ畜ショう!」

「そりゃ、今契約名を使っているのがお前だからさ!」


 バリィ


 嫌な音がして、フィトニは真っ二つになった。


 ギィヤアアアアアァァァ!!! 


 それでもフィトニは死ななかった。暴走して、ヒト型ですらなくなった。大量の触手の伸びた、蛸のような化け物になり、黒い獣と戦い始めた。

 その際に消耗していたアリベラーレに触手がぶつかった。


「ぁぐふっ……ッ」


 吹っ飛ばされて壁に叩きつけられ、意識を保てなくなった。

 それと同時に十七年式歩兵銃も力が封印され、床に落ちた。

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