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遠きこの地から祈る(???視点)

久しぶりのお飾りです。読んでくださっている方々、ありがとうございます。






 我が国の王太子殿下のご婚約が決まったと国中が喜びに満ち溢れている。お相手のご令嬢の名を耳にした時は心底安堵したものだ。


 わたくし…ううん、今は貴族でも何でもないしね。改めて、あたしはリアナ。以前は伯爵夫人として社交界にいた人間だ。

 元々は商家の家に産まれ、ごく普通…ではないか。裕福な商家に産まれ、何不自由なく育った───までは良かったのだけど。


 あたしの父はどんどん家を大きくしていっただけのことはあって野心家だった。そこに目をつけたのが家柄だけはいい没落貴族のボルト伯爵。

 よくある話、見栄だけはご立派の伯爵は金遣いが荒く、見た目とは裏腹に困窮していたのだ。


 父はあたしを嬉々として伯爵と結婚させた。伯爵は持参金はもちろんのこと、これからも援助をしてもらえることで有頂天だったことだと思う。

 父は父で、貴族との繋がりが出来たことに満足していた。


 だけど…。『金で得た伯爵夫人の座』……そんな噂が飛び交う社交界でのあたしが幸せでなかったことは言うまでもない。

 ───そんな時だった。社交界に出入りするようになった殿下と出会ったのは。


「ああ、あなたがボルト伯爵自慢のご夫人ですか。なるほど自慢されるのも納得の美しさですね」


 いつものように貴婦人たちから嫌味を浴びせられ、うんざりしていた時に涼やかな声が耳に届いた。

 それが、彼との出会い。王妃さまがあたしの状態に気づいて差し向けてくれたらしいのだけれど、母上に感謝しなければな、と貴婦人たちが去ったあと笑顔で話してくれたのだ。


 あたしたちが惹かれあうのにさほど時間はかからなかった。夫のある身でいけないと自分に言い聞かせながらも、心は彼に向かっていた。そう、心だけは。


 しかし夫が日頃の不摂生から急逝したとき、その関係は変化した。歯止めを失ったあたしたちは、深い仲となってしまった……期間限定の恋だと分かっていたのに…。


「あの…リアナさま」


 ある時、殿下との逢瀬に何かと協力してくださるマリアリアさまが不安そうにあたしを見つめてきた。


「もう少しだけ、お待ちください。そのうちに公爵令嬢のエリーザさま、そしてわたしが社交界を出入りする頃にはきっと居心地のいいものに変えてみせますから!」

「あ、ありがとうございます…とても心強いですわ…」


 礼を言いつつも、あたしは信じられない思いでマリアリアさまを見つめた。どうしてなのだろう。マリアリアさまも特別な想いを殿下に抱いているはずなのに。


「よかった…リアナさまには感謝してるんです。殿下があんなに幸せそうに笑っているから」

「……どうしてそんな…」

「え?」


 なぜそんなに笑顔でいられるのだろう。あたしは少しでも長くこの恋にしがみつこうとしているのに。彼女が願えば、あたしなんていつでも殿下から引き離すことができるのに、むしろ好意的に協力してくれるのが不思議で仕方なかった。


「マリアリアさまも殿下のことがお好きなんでしょう?なのに……」

「えーっと…詳しいことは申し上げられませんが…」


 今にも泣き出してしまいそうなあたしに焦ったのか、その時マリアリアさまは優しく背を撫でてくれた。


「幼い頃に殿下に救っていただいたことがありまして。だから幸せになってもらおうかと…それに初恋は叶わないって本当ですよね。リアナさまもそうだったらしいと殿下に聞いています」


 ───それは幼馴染みのことだった。ボルト伯爵に嫁ぐ時に一緒に逃げようと手を差し出してくれた彼……大好きだった。大好きだったからこそ、父の圧力が彼に及ぶのを恐れて…その手を受けとることができなかったのだ。


 ───あの頃のあたしが今の姿を見たら情けなく思うだろうなと思った。ただ我が身かわいさに守ってくれる殿下にしがみついている自分……。


 そして、その後の殿下の一言であたしの心は決まった。


「王位継承権を捨てようと思う」

「え?いま、なんて…」

「王位継承権を失えば、あなたと添い遂げることができる」


 その一言をもらえただけで…もう、十分だと思った。こんなあたしを心から愛してくれていることが分かる一言だ。

 だけど、殿下は立派な王となれる方……きっとマリアリアさまもそれを願っていることだろう。


 そうして、あたしはようやくこの恋を手離す決断をしたのだ。




 ───それから、あたしは故郷に帰った。これからは一人で生きていくことになるだろうと覚悟して。


「おかえり、リアナ」


 でも、やっぱり神さまはいるのかな。故郷に帰って幼馴染みにすぐ再会した。あたしを見つけるや、力強く抱き締めてくれて。さらに大泣きしてくれた彼につられて大泣きしてしまった。


 彼は結婚もせず、ずっとあたしを待っていてくれた。感謝してもしきれない。

 そして、今。この身には新しい命が宿っている。もちろん父親は幼馴染みの彼だ。


 もう二度と会えることはないだろうけれど、殿下とマリアリアさまにもどうか幸せになってほしい。遠く離れた地から、祈っている───。






ようやく元カノ視点の話を書くことができました……。何だかもうホッと一息です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 元カノもイロイロ考えられるええこや(´;ω;`)ブワッ
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