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ベリド公爵家の天使(エリーザ視点)






 わたくし、エリーザ・ベリドが完璧な令嬢と言われるようになったのはひとえに妹のような存在であるマリアリア…かわいいマリーのおかげでしょう。


「エリーザさま、すごいです!」


 何をしてもいつもキラキラした目で尊敬をこめた眼差しを向けてくれるのが嬉しくて、どんな努力も苦になりませんでしたわ。

 そして亡きお母さまもそれをわかっていらした。


「あなたは本当にマリーちゃんがかわいいのね」

「はい、お母さま。マリーはどんなことでも頑張ると感心してくれるので、もっと頑張ろうと思えるのです」

「ふふ、マリーちゃんには感謝しかないわ。内気だったあなたをこんなふうに変えてくれたんだもの」


 そう、今では誰も信じてくださらないけれど…わたくしは内気な性格をしていたのです。それは華やかな兄の存在があったから…。


 兄は子どもの頃から目立つ存在でした。容姿もさることながら王太子殿下の側近候補として将来を有望視され、一緒にいるわたくしなどは目にも入らぬ存在となっていましたの。


 ある日、ますます後ろ向きになっていくわたくしを、どういうわけかお父さまは兄と一緒に王宮に連れ出しました。


「リーデンス侯爵令嬢のマリアリアちゃんだよ」


 そうして紹介されたのがもうすぐ10歳になろうかというマリー。黒髪に紫の瞳という落ち着いた印象を受ける容姿なのに、その場が明るくなるようなとても愛らしい笑顔を浮かべていました。心なしかお父さまも表情を緩めていらっしゃっていて。


「よろしく、俺はロディアス。殿下から噂は聞いているよ」


 先にお兄さまが人好きのする笑顔で挨拶をしました。

 ───ああ、このかわいい少女ももうお兄さましか目に入らないだろうと諦めの思いでその様子を見ていたのですが…。


「よろしくお願いいたします」


 お兄さまへ丁寧な挨拶をすると、くるっとわたくしに身体を向けました。


「え…?」


 その瞳を輝かせて嬉しそうに兄ではなくわたくしを見つめてくるマリーのことを、一生忘れることはないでしょう。


「おじさまのおっしゃるとおり、とても素敵な方ですね!仲良くしてくださると嬉しいです」

「うん、うん。自慢の娘なんだよ。マリーちゃんなら、この娘の良さをわかってくれると思ってた」

「ええ!?他の方には分からないんですか?将来、社交界の華になること間違いなしですよ!」

「マリーちゃん…そこまで言ってくれるのか…おじさん、嬉しいよ」


 二人のやりとりに呆気にとられて言葉も出ないわたくしを、お兄さまは優しく肩を叩いて微笑んでいました。


「あ~、一応将来有望視されている俺もいるんだけど?」

「おまえはかわいくない」

「あ、おじさまに似ていて親近感湧きます」


 マリーの言葉に途端に表情を歪める二人。似ているといえば、髪と瞳の色かしらとは思うのだけれど…何だかおかしくなってきて、わたくしはつい笑っていました。


「エリーザが楽しそうに笑ってる!」

「超絶美少女の笑顔!」

「…親父がマリアリア嬢と仲のいい理由が何となくわかった…」


 それからベリド公爵家とマリーの付き合いが始まりました。

 わたくしはマリーが褒め称えてくれるのが嬉しくて、あらゆるものを身につけ…気がついたら公爵令嬢を名乗るのにふさわしいと言われるまでになっていたのです。


 我が家にとっては幸運を運ぶ天使のような存在のマリー。

 マリーはわたくしに更なる幸せも運んでくれたのですけれど、それはまた別のお話…。






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