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III 暴漢との戦い方



 僕達を取り囲んだのは、とてもではないが役所の申請時間に来ることの出来なさそうな連中であった。


(これが暴漢か……)


 前述の通り旅の踊り子は市民権がない。この街においては市民と非市民では法での保護が異なり、例えば非市民が手酷い暴行を受けたとしても受けられる医療も補償も雀の涙だ。


(まずいぞ)


 僕は肉体労働にとんと弱い。しかし、立場の弱いアリアンロッドだけでも逃がさなければ。身重であれば、なおさら。僕はアリアンロッドを守るように二、三歩前に出た。

 しかし、上半身裸のモヒカンの暴漢は僕に構わず、アリアンロッドへの怒りをぶつけていた。


「お前が高値で売りつけて来たマジックキノコの料金! 今日こそ返してもらうぞ!」

「嫌よ! 正当な価格に決まってるじゃない!」

「……は?」


 僕は振り返りアリアンロッドの顔を凝視した。



「なんで私を置いて行ったの!」

「置いていくに決まってるだろ!」


 僕は暴漢と言い争うアリアンロッドを置いて帰路に着こうとしていた。


「マジックキノコを摂取するのはこの街(ローズクォーツ)では違法だ。食べると多幸感に包まれて頭がおかしくなるらしいな。他の街では合法なものもあるらしいが、この街では重罪だ」

「もう全部売り切ったわよ」

「売った時点で犯罪なんだよ!」


 暴漢達はアリアンロッドを追いかけるつもりはないらしい。もし追いかけて来たとしても知るものか。


「私の前いたところでは痛みを緩和する治療薬として重宝されていたわ。私は困っている人に分けてあげただけ」


 アリアンロッドはあくまでもシラを切るつもりらしい。


「僕は役人だぞ。こんな犯罪者と行動を共にしていたらクビになるに決まっている」


 しかし、アリアンロッドは僕の腕を掴んだまま離さない。


「シュトランを探さなくていいの? このお腹にはアナタの甥っ子か姪っ子になる子が居るのに」

「僕はシュトラン兄さんが君の相手をしたなんて初めから信じていない。万が一シュトランの子だったら僕が責任を取ってもいいぐらいだ。それに兄さんには『精霊の微笑み』が掛けられているから君を選ぶことは絶対にない」

「『精霊の微笑み』?」

「兄さんは昔故郷の精霊を助けたことで祝福を掛けられているんだ。この先どんな困難があろうと彼を救う運命の相手を必ず用意する、と」

「運命の女! まぁ、それは私のことね!」

「絶対に違うだろ」


 こんな悪魔みたいな女が運命の相手だったらシュトランが可哀想すぎる。


(まぁ、いい)


 シュトランがこの街(ローズクォーツ)に居ることがわかっただけでも収穫だ。今までずっと探したくても探すことすら出来なかったのだから。

 アリアンロッドはフンと息を吐いてこう言い放った。


「良いわ、このお腹の子がシュトランの子だって証明する」


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