I シルヴィオ=アルスター
「三ヶ月ぶりかしら。あの夜はとっても刺激的だったわ。私のような良い女と夜を過ごして忘れられたのは何かの間違いだったと思うのだけれど。今、ここにはアナタの子供がいるの」
アリアンロッドはお腹を優しくさすりながらうっとりとした、どこか勝ち誇った表情をした。言われてみれば少しだけ膨らみがあるような気がするが、普段から女の人の首から下なんてまじまじと見ることがないのでわからない。
仕事場の近くだ。あまり悠長にはしていられない。
僕は本題に入る。
「残念だけど、僕は君のことなんか知らない。僕は踊り子、詐欺師、不備のある申請書類を持ってくる奴を悪の三柱と定め一切の関わりを断っている。しかし」
僕はここで言葉を切って、改めてアリアンロッドを見おろす。華やかな茶髪で作ってある二つのお団子。そこから伸びる細い何本もの三つ編み。そういえば、彼は茶髪の女の子が好きだと昔言っていたなと思い出した。
「髪飾り、左側じゃなかった?」
「え?」
「君は僕と同じこのエメラルドの髪飾りをした人物に会ったのだろう? 僕には五年前から行方不明になっている双子の兄が居る。彼は姿を消す前からこれを左側に付けていて、髪を長くしていることが多かった」
「確かに! このアイボリーの髪、あの夜はもっと長くて」
アリアンロッドは無遠慮に僕の髪の毛を触ろうとしてきて、僕は反射的に後ろに三歩下がった。
間違いない。シュトランだ。
やっと見つかったと思ったら、馬鹿な女に執着されて。仕方のない奴。
「僕はシルヴィオ=アルスター。ご存じのお取りこの街の役所の事務官をやっている。僕は踊り子なんて社会の底辺とは関わりたくないが、兄のシュトランのことは前から探したいと思っていたんだ」
ちょっと待ちなさいと目の前の女の眉毛が吊り上がる。
「さっきから黙って聞いてれば、踊り子に対して当たりが強くない? これでも舞台に立てばわーきゃー言われる人気職業なのよ! 踊り子への偏見持ちすぎでしょ」
僕は大きく溜息を付く。
「僕は新人の頃に踊り子に騙されて左遷されたんだ。警戒と侮蔑をして何が悪い」
ここに関しては海よりも深い怨念がある。確かにこの女は僕を騙した奴とコイツは違う人間かもしれないが、役所において踊り子――特に他の街からやって来た定住しない奴がどんなに迷惑を振り撒いていることか。
とにかく、僕は兄を探すため、このアリアンロッドと手を組む必要がある。
「シュトランと会った場所、教えてくれる?」




