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IX 【シルヴィオ視点】 レイニーを探せ!


【シルヴィオ視点】


「レイニーが居ない?」


 村長さんの葬儀の準備を行う中、レイニーの両親が僕にレイニーを見ていないか声をかけて来た。レイニーの両親はこの村の教会の牧師とシスターである。朝から探しているが見当たらないのだという。


「行き先に心当たりがあるとすれば……精霊のところ?」


 そもそもレイニーはシュトランの運命の人論争でこの村に帰ることを提案していた。一人で先走る理由は特にないが、村の中に居ないのであれば一番可能性が高い。

 顔見知りの村人がこんなことを教えてくれた。


「君達は(ローズクォーツ)に行っていたから知らないだろうが、今は精霊の森に行く道にはアルラウネの亜種が住み着いているんだ」


 このアルラウネは植物の魔物だ。この辺りの種族は丈夫でしなやかな蔦で人々を翻弄し、絡め取った獲物の血を吸い取るという。


「レイニーが危ない。助けに行かなきゃ」

「これを使いなさい。息子が持っていた」


 僕が狩猟用の短剣を手に取ると、レイニーの父がとあるものを手渡して来た。見せられた刀身が銀に光る。持ち手に彫られた蔦模様にも見覚えがある。


「これは……シュトランの剣では。僕には扱えない」


 これは代々村の守り手を務めることが多かったアルスター家に伝わる由緒正しい剣だ。僕もアルスターの血を引いているが、僕は身体能力が全く伸びなかったはず。


(……? 伸びなかったはず?)


 僕は何故か自分で思ったことに違和感を覚えた。


(それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 シュトランの荷物は行方不明になったシュトラン自身が持っている筈だ。レイニーが持っているのはおかしい。僕は少しの頭痛にこめかみを抑えた。しかし、レイニーの父は堅い表情のまま剣を差し出す。深い皺が刻まれた目元だった。


「問題ない。持っていきなさい」



 シュトランの服は文官の僕が好む服と異なり、動きやすさを重要視した素材で出来ている。黒の手袋は不思議と手に馴染んだ。

 精霊の元へ向かう森の中で、アリアンロッドは僕に問うた。


「あのレイニーって糸目男、ヴィーの何なの?」

「幼馴染さ。僕達兄弟と年が近くてよく一緒に遊んでいたんだ。といっても、レイニーはあまり体力に自信がないから僕とはあまり遊んでいなくて――?」


 何故だろう。レイニーと僕はよく遊んでいた筈なのに、浮かんでくるのはレイニーと他の誰かが座って遊んでいるところばかりだ。


(頭が痛い)


 森に入ってからだろうか、何かがおかしいように感じる。


「ねぇ、大丈夫?」

「!」


 そんな僕のモヤを払ったのはアリアンロッドの手だった。


(しっかりしなければ)


 僕は気を取り直して森を進む。このままなら正午までには辿り着ける筈だ。


「大丈夫だ。それより何で着いて来たんだ」


 アリアンロッドは妊婦のはずだ。こんな僕でさえ無傷で帰れるかわからないところに来る必要性が全くない。


「精霊だかなんだか知らないけど、ちゃんと私がシュトランの運命の女だって認めてもらわないと困るからよ」

「兄さんにそこまで執着する理由がわからない」

「? だって私――」


 アリアンロッドが何を言ったのかは聞こえなかった。アリアンロッドの顔を見ようと振り返った視界の端に植物の蔓が見え、()()()()()()()()()()()()()()()()()。アリアンロッドの首に巻きつこうとしていた人の腕くらいある蔦を瞬時に切り落とし、足を引っ掛けようとしてきた細い蔦を切り刻んだ。


 こんなことは出来るはずがないのに、不思議と身体が動いた。剣を持つ腕だって、重さは感じない。


 アリアンロッドを伏せさせて、三方向から同時にやってくる蔦を順番に斬り伏せていく。周囲の木影から投げられた謎の実を刀身で防ぐと、地中で蠢いていた根を切り刻んだ。


 周囲に魔物の気配を感じなくなったところでアリアンロッドに声を掛ける。


「無事か!?」


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