【沖縄沖海戦①(Naval Battle off Okinawa)】
海上自衛隊の艦隊は第1護衛隊のミサイル護衛艦まやを敵ミサイルの進行方向先頭に横に、護衛艦むらさめ、いかづち、空母いずもと並び、同じく第6護衛隊もミサイル護衛艦きりしまを最右翼に配置し、護衛艦てるづき、たかなみ、おおなみ、海上訓練支援隊の支援艦くろべ、てんりゅうと敵ミサイルの進路を狭くさせるような陣形を取っていた。
「ミサイル多数、接近中! は、早い!あと2分で到達します!」
「SM-6発射! 相手は高速のYJ-91だ! 127mmとCIWSも射程に入り次第対応! Mk 36準備は?」
「いつでも撃てます!」
※(1)SM-6:SM-2(通称スタンダードミサイル)シリーズの最新型で2013年より配備されている。
※(2)127mm:オート・メラーラ 127 mm 砲のことで、有効射程は仰角により7000m~15000mであり、1分間に最大45発の砲弾が発射できる。
※(3)CIWS:近接防空システムで、海上自衛隊が採用しているのはM61「バルカン」20mm多銃身機銃とファランクスと呼ばれるシステムで構成されているCIWSとなる。
※(4)Mk 36:艦載用のデコイ発射装置で、ロックオンしたミサイルが艦に接近してきた場合、チャフによる偽目標へと引き離すことを目的とした装置。
マッハ3の猛スピードで突入してくるYJ-91ミサイルに対して、マッハ1程度のスピードを想定して作られたSM-6では全くといっていいほど歯が立たず40発放たれたYJ-91ミサイルのうち撃墜できたのは、わずかに2基だった。
しかもYJ-91ミサイルは母機からの発射後、高度20m前後でマッハ3の速度で巡航飛行を行い、終末段階ではさらに高度下げ7m以下に降下(最低可能飛行高度は1.2m)することで目標艦艇からの探知を避け、直前で亜音速まで速度を落とし正確に目標を決める。
現状の装備でYJ-91ミサイルと対峙した記録は一切なく、またSM-6艦対空ミサイルが2基しか撃ち落せなかったように、低空をマッハ3の速度で打ち落とすことを目的として開発されたミサイルは海上自衛隊にはない。
これを現装備で撃ち落とすとすれば、そのチャンスは速度を亜光速に落とした最終局面の数秒間しかしか残されていない。
「RUM-139 VLA発射用意! 信管は着水後1秒にセットし、目標は艦隊と敵ミサイルの軌道上10キロ!」
「艦長!RUM-139 VLAは、対潜水艦用ミサイルですが……」
「それ以外、対抗できるミサイルはあるのか!?」
「了解!RUM-139 VLA発射用意!」
「信管、着水後1秒にセット! 目標敵ミサイルの軌道上10キロ!」
「各艦の命運を祈る!」
「まや」と「きりしま」から20発ずつ、計40発のRUM-139 VLAが発射された。
RUM-139 VLAは高い空に舞い上がり、やがて垂直に海面へ落ちて行く。
レーダーでは中国海軍のYJ-91ミサイルは、もう12キロ先まで近づいてきていた。
「127mm砲射撃開始! 目標は敵ミサイル軌道上前方の水面!」
「目標敵ミサイル軌道上前方の水面で砲撃開始します!」
ちょうど15キロ先にはRUM-139 VLAの水中爆発で出来た、いくつもの水柱が高く上がっていた。
水柱の高さは約50~80m。
水は形を変えるのが苦手な物体で、水柱は数秒間、海上に柱として立ち続ける。
マッハ3の速度は1秒間に約1キロ進む。
どこで減速するのかは分からないが、この超音速でこの水柱にぶつかるのは、分厚いコンクリートにぶつかるのと同じ。
案の定水柱にぶつかったYJ-91ミサイルは次々に爆発していった。
爆発を逃れた物も、水を含んだ爆圧の影響で軌道を大きく反らす物や、コントロール不能に陥って自滅する物もいた。
それを見た艦内は大いに沸き上がる。
「気を緩めるな!1発当たったらおしまいだぞ!」
艦長が皆に喝を入れる。
1万トンにも満たないこの艦は、対艦ミサイル1発であっと言う間に艦は2つに折れ曲がって沈んでしまう。
そうなれば助かるものは、ほぼいない。




