【沖縄沖海戦②(Naval Battle off Okinawa)】
水柱が邪魔をして一瞬レーダー画面から消えていたが、もうすぐ生き延びたミサイルたちが次々に現れることだろう。
おそらくミサイルのほうも一瞬消えた艦影を再度インプットするための作業に入るはず。
「Mk 36デコイ発射!」
レーダーかく乱用のデコイを発射すると、ほぼ同時に水間から生き残ったミサイルたちが次々にレーダーに現れた。
距離15キロから、127mm砲が速射を始める。
ミサイルがそのままの速度なら、艦に到達するまでに残された時間は15秒しかなかったが、おそらく敵のミサイルもそろそろ減速に入った頃だろうからまだ30秒前後の時間の猶予はあるはず。
乗員300名の命が、この僅か30秒ほどで決まってしまう。
127mm砲でミサイルを撃ち落とすことはできなくもないが、実写訓練で行ったのは自艦に向かってくるものではなく、横を通り過ぎて行く物。
海面すれすれを一直線に通り過ぎて行くミサイルはマッハ1前後速度でも、容易とは言えない。
なにしろマッハ1でも1秒間に進む距離は340m前後なのだから。
ところが艦の直前で上昇して上から襲ってくるタイプになると、命中率はぐっと下がる。
その主な理由は2つの速度差。
この127mm砲の初速は、1秒間に808m。
そしてこの速度は距離が進むごとに低くなる。
しかも速度の落ち具合は風向きだけではなく、波の状態や湿度、それに砲弾の個体差にも影響される。
迫ってくるミサイルがマッハ1で近付いて来るばあい、砲弾との相対速度はマッハ3を軽く超えるだろう。
マッハ3を超えると、お互いの距離は1秒間に1000mを超える。
この速度になると近接信管が作動して爆発する頃には、既にミサイルは通り過ぎていて127mm砲の爆発による影響下から離れてしまう。
つまり直接向かってくるミサイルに対しては、実際に砲弾を当てるしか手がないのだ。
しかも浅くあたったのでは信管が作動しない場合もある。
そこで当てるのではなく、ミサイルの進路上に水柱を上げる作戦をつかった。
対潜水艦用ミサイルであるRUM-139 VLは約45㎏の高性能炸薬だったから大きな水柱が上がり、それなりの効果はあったが質量の小さい127mm砲で同じ効果が得られるかどうかはわからない。
ただ一つ言えるのは、的を外れた砲弾は一瞬で通り過ぎてしまうが、水柱は一定時間ミサイルの進路を邪魔してくれるということ。
そしてその小さな水柱にでも、マッハと呼ばれるスピードで当たればただでは済まないということだ。
RUM-139 VLの時ほど効果はなかったが、それでも2基のミサイルの無力化に成功した。
距離1500mからはCIWSに制御されたM61 20mm多銃身機銃に託す。
これが最後の砦。
毎秒50-75発の発射速度を誇り、1550発の20mm弾を30秒以内で使い果たす。
銃弾の補充には30分以上はかかるので、この30秒に我々300人の乗組員の生死が掛かっている。
127mm砲による防御の壁を抜けてきた敵のミサイルは3発。
着弾迄の残り時間はわずか20秒。
M61 20mm多銃身機銃が射撃を始め、ボーっという低い振動音が響く。
発射速度が早過ぎて、この様な音になる。
CIWSの能力は非常に高く、レーダーで捕らえた目標であるミサイルの軌道に照準を合わせるだけでなく、M61 20mm多銃身機銃が実際に飛翔する弾道を正確に捉え逐一その補正値を修正しながら撃ち続け最終的にミサイルに数発当てていく。
撃ち始めて7秒で1発目のミサイルを爆破した。
このペースなら3発すべて撃ち落とすことはできる!
ところが1発目のミサイルの爆発による影響で、自慢の弾道計算がしにくい時間帯が出来たらしく、2発目のミサイルにはなかなか有効弾を与えられなくて海面に小さな水柱を上げるばかり。
それでも12秒後には2発目のミサイルも見事に撃ち落とした。
のこるミサイルは1発。
2発目と同じように爆発の影響でなかなか当たらない。




