【沖縄沖海戦③(Naval Battle off Okinawa)】
「距離300!」
「各員、衝撃に備え何かに掴まれ‼」
「距離150!」
そのときM61 20mm多銃身機銃の唸り声が止まり、辺りは急に静かになった。
「M61、弾切れです!」
「距離50‼」
もう誰も何も話さない。
微かに艦が奏でる波の音が聞こえる。
ふと小学生の時の夏休みを思い出すと、居るはずもないセミの声が聞こえていた。
あの頃は暑くらしく騒々しいと思っていたのに、いまはとても懐かしい気持ちで耳に聞こえた。
近所の友達と遊んでいた、あのころの景色を思い出す。
ずっと死ぬのは怖いと思っていたが、人は最後にこう言うことを思い出すのかと思うと、なぜだか清々しい気持ちがした。
結局最後まで残った1発は、艦橋の直前を通り過ぎて行き「むらさめ」のCIWSが始末した。
127mm砲が上げた水柱に触れて微妙に進路が変わったのか、それとも20mm機銃弾が羽の一部を壊したのか、発射したデコイに釣られて進路を変えたのか……詳しいことは分からないが、とにかく300名の命は助かり艦隊も無傷のままだった。
空には万一の場合に備えて空母「いずも」から飛び立っていたF-35ステレス戦闘機10機が、青い空の上をまるで戦闘など知らない鳥のように悠々と飛んでいる。
海はさっきまでいくつもの水柱が上がっていたことが嘘のように、波も穏やかで静かだった。
戦闘後に開いた窓から、波の音と共に涼やかな潮風が高揚した肌の熱を冷やしてくれて心地よかった。
「被害は!?」
「艦内に怪我人はありません」
「艦隊は?」
「艦隊からも被害は報告されていません!」
どうやら、みな無事だったようだとホッとする。
なんとなく、もう20年以上も前にやめた煙草が久し振りに恋しくなった。
だが現実はそう安穏としていられなく、我々には次の脅威が迫っていた。
「距離400、対艦ミサイル32基こちらに向かってきます!」
「YJ-18か?」
「いえ、おそらくYJ-62Aかと思われます」
「Mk 36、127mm砲、20mm機銃弾の補給を急がせろ!」
「了解!」
YJ-18艦対艦ミサイルは、たったいま艦を襲ったYJ-91と同様に高速の対艦ミサイル。
違うのはYJ-91が海面上の低空をマッハ3で飛行して目標物の手前で亜光速に減速するのに対して、YJ-18は低空を亜光速で飛行して目標物の手前でポップアップしてマッハ3に加速する点で、この違いは射程距離を長くするために低速期間を長くとったもの。
さっきの攻撃は「水柱」という一か八かの障害物が我々を助けてくれたが、今度の高空からの攻撃では障害物は使えないばかりか、マッハ3で降下してくるミサイルに対して127mm砲にしても20mm機銃にしてせいぜい1基落とせるかどうかというところが限度だろう。
だがYJ-62Aと聞いて、少しは心に余裕ができた。
YJ-62Aは従来通りマッハ0.8程度の速度で飛行するから、我々が持つ対空兵器の想定内のミサイルとなる。
しかし先行している潜水艦「そうりゅう」の情報では敵フリーゲート艦はまだ20隻残っていたはずだが32基とは一体どういうことだ?
F-2戦闘機は8機で装備していた93式空対艦誘導弾は今回新型のF-3戦闘機が護衛に2機しかつかないということもあり、MAXで各機4発ずつ搭載できるところを2発に抑えてそのぶん対空装備を搭載していた。
発射したすべてのミサイルが当たることなど先ず無いだろうが、その16発すべてが当たったとしても中国海軍の駆逐艦はまだ4隻以上も残っているはず。
中国の055型フリーゲート艦(満載排水量13,000トン)は、垂直発射装置を112セルも装備している。
同型艦38隻もある052D型(満載排水量7,500トン)で、64セル。
同型艦42隻もあり満載排水量4,050トンと小型の054A型でも、垂直発射装置を32セルも持っている。
同型艦42隻もあり満載排水量4,050トンと小型の054A型でも、垂直発射装置を32セルも持っている。
ミサイルには用途別に「対艦」「対空」「対潜」と3タイプあり、それを均等に分けたとしても小型の054A型1隻で10発は一度に発射できる。
ということは、中国海軍の残存兵力に、これらのイージス型ミサイルフリーゲート艦は残っていないということになる。
そしてYJ-62艦対艦ミサイルを発射することができる艦は、052C型駆逐艦ということになるはず。
この艦にはYJ-62艦対艦ミサイル4連装発射機が2基搭載されているから、少なくともその4隻が全て発射したか、数隻が分けて発射したかのどちらか。
他のさらに古いタイプのフリーゲート艦は、我々のハープーンとほぼ同様の射程しかないYJ-83しか打てない。




