【ウォーター・ウルフ作戦④(Operation Water Wolf)】
捜索隊はライトを照らして生存者や原因を探していた。
「啊!(あっ!)」
カッターの上からライトを照らしていた人民解放軍の兵士の一人が、何かを見つけた。
「什么?!(なんだ!?)」
上官らしい士官が兵士に聞くと、兵士はライトで何かを照らした。
「啊!(あっ!)」
映し出されたのはまるでシャチの群れのように音もなく高速で通り過ぎて行く、黒い水中ドローンたち。
「数不胜数的水下无人机!(水中ドローン多数!)」
士官が慌てて無線で状況を伝える。
いくつものサーチライトが煌びやかに暗い海を照らし、停止していた各フリーゲート艦が出力を全開にしてスクリューが高回転で回り、黒い海に白い波を立てる。
だが一度停止した艦は、小型ボートのようにすぐには動いてくれない。
ドーン、ドーン、ドーン。
まだゆっくりとしか動かない各艦に、次々に水中ドローンが当たり暗い夜の世界を赤い炎が煌々と照らしていた。
海底には福建をはじめ、幾つものフリーゲート艦が沈んでいた。
福建は艦の中央部で二つに折れていた。
まるで船の墓場。
その中には先行していたはずの潜水艦も何隻もあった。
この海域の深度は500m程度、新型の潜水艦であれば十分に耐えられるはずなのに、ここにある潜水艦の残骸たちは激しく海底の岩に叩きつけられたように船体が壊れていた。
海底に他にあるのは数多くのコンテナのようなもの。
コンテナの上部はみな蓋が開いていた。
一匹の小魚がそのコンテナの開いた蓋の中に入って行った。
中には巨大なタンクが入っていて、日本語で「危険・液体水素」と書かれてあった。
液体水素の沸点は-252.6℃だから、この真空二重構造のタンクのバルブを開いて外に放出するだけで簡単に沸騰して気化する。
そして気化した体積は液体の800倍の泡となり、海面を目指す。
液化水素は、ほとんど水に溶けないからこの800倍に増えた体積は維持される。
船の構造で最も重要なのは水に浮くこと。
簡単に言えば船の水に触れる部分の体積が、水の体積よりも軽ければ船は水の上に浮くことができる。
水はふつう1リットルの体積で約1kgの重さになるが、この水の中に50パーセントの空気の泡が混じっていれば1リットルの重さは500gとなる。
つまり特殊工作部隊は人民解放軍海軍部隊の航路上に液体水素タンクを配置しておいて、彼らがここを通過するのを待ちバルブを一斉に開いた。
戦争をするために武器弾薬や航空機を満載した艦艇たちは、この水素の泡の立ち込める水域に入った途端、まるで魔のバミューダ―海域に吞み込まれるように海底へ沈んだ。
潜水艦の残骸が激しく損傷していたのは、それらが元々海の中に沈んでいたからで、ここで沈んだ艦艇たちよりも激しく海底へ落下して叩きつけられたからなのだろう。
液体水素によるバブル攻撃と、仲間の捜索のために止まったところを水中ドローンに狙い撃ちにされたことで中国人民解放軍海軍の戦力は元の三分の一まで減った。
そして彼らにはこれから最も過酷な運命が待っている。
それは、彼らを迎え撃つ自衛隊員たちにとっても同じものとなるだろう。




