【ウォーター・ウルフ作戦②(Operation Water Wolf)】
こうして8つの中国人民解放軍空軍基地がこの世から消滅した。
これまでの中国側の反撃はゼロ。
だがいつまでもゼロとはいかない。
基地が攻撃された以上、人民解放軍側も全力を挙げて我々を捜し、捜索はすぐに海中に及ぶはず。
随伴する2隻の呂型潜水艦がすぐに防水カプセルに覆われた空中ドローンとレーダー防空システムを海面に上げた。
このレーダー防空システムの核となるセンサーは優れもので、一見するとただ波間に漂っている太陽光パネルのようにしか見えないことが最大の特徴となる。
表面に突起がないのでレーダーには映らないうえに、表面が濃紺の低反射素材でできているので光の反射もないから、そこに有るということを教えてもらわない限り見つけることはできない。
伊400型のほうでも「茶柱」と呼ばれる分離型魚雷を発射した。
この「茶柱」とは1本の長魚雷に2基の「茶柱」を搭載したもので、長魚雷は60ノット(時速111キロ)の速度で最大60分航行し、「茶柱」2基を任意の位置で放出することができる。
茶柱とはその名の通り水面に立つ棒のようなもので、これは対潜哨戒機がソナーを投下する前にレーダーを使って捜索する潜水艦の潜望鏡を模したもので、その潜望鏡にはカメラと簡易的なレーダーや音響発生装置が組み込まれている。
これで敵の対潜哨戒機をかく乱し、その位置情報などを海中の有線ケーブルによって母船に伝える仕組み。
直接的な攻撃力はないが、そのデーターをもとに母艦からシースパローなどの艦対空ミサイルや、呂号型潜水艦がカプセルで海面まで上げた空中ドローンなどに指示を出し攻撃することもできる。
呂号型が海上に浮かべたレーダーパネルにより、人民解放軍のY-9 哨戒機がこの海域周辺に向かってきていることが分かった。
そこで一本目の「茶柱」を分離して立てることにして、魚雷室には対空魚雷の装填が指示された。
Y-9の哨戒能力は比較的高いとされていて、公開されているスペック通りであれば海上に突き出した潜水艦の潜望鏡を50km離れた位置から見つけ出すことができるはず。
「Y9 、距離35で茶柱1方向にルートを変更!」
「データー保存!」
「データー保存します!」
スペック通り距離50で茶柱を発見して距離35で飛行ルートを変えたのか、それとももっと接近して茶柱1に気がついて慌てて飛行ルートを変えたのかは分からない。
正確な探知距離をあらわにするためには、鹵獲するか、より多くのデーターを集めて比較分析するしかない。
「Y9 ソナーを投下しました」
「茶柱1、モーター音微弱で急速潜航!」
「茶柱1、モーター音微弱で急速潜航します!」
「対空魚雷発射準備よーし!」
「対空魚雷発射!」
魚雷室から対空魚雷準備完了の知らせが届き発射させた。
この魚雷は任意の位置で浮上して、開いた筒の上部からミサイルを水平方向に打ち出すのが特徴で、これによりミサイル発射位置が特定されにくくなる。
この魚雷も有線誘導によりコントロールできるうえに、敵機の位置などのデーターを発射した子ミサイルに届けることもできる。
「Y9 単魚雷を投下しました」
「対空魚雷浮上!最終データーを送信して発射!」
「対空魚雷浮上!」
「最終データーを子ミサイルに送信完了!」
「発射します!」
発射後はデーターをもとに敵機に接近して、あとはカメラの画像認識機能と赤外線ホーミングで敵機を追う。
「敵、短魚雷爆発!茶柱1通信断絶!」
「対空ミサイル爆発!レーダーより敵Y9の機影消えました!」
ほぼ同時に2つの異なる報告が艦橋に届けられた。
「本艦部隊は作戦を終え、これより帰投する!」
今回この部隊は敵水上艦艇と遭遇することはなく、連れてきた無人潜水艦波号を使用することはなかった。




