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◆致死率96%■  作者: 湖灯


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【ウォーター・ウルフ作戦①(Operation Water Wolf)】

 中国沿岸から僅か100キロ前後の位置に進入した垂直ミサイル発射管を搭載した第二次世界大戦とは全く違う伊400型潜水艦8隻。

 彼らは伊400型を旗艦として、小型で飛行型ドローンを多数装備運用する呂型潜水艦2隻と、無人潜水艦波号十数隻を伴い8つのグループに分かれて行動していた。


 そしてその8つのうち東シナ海方面軍(東海艦隊)の拠点となる寧波ねいは基地、上海基地、福州基地方面に進出する部隊には特殊工作潜水艦3隻が同行している。


 彼らの役目は中国人民解放軍の戦力を、戦いになる前に無力化すること。

 そして特殊工作船部隊は、彼らが動き出したときに最大限彼らを搾取することだ。




 AM05:00、8つの部隊はそれぞれ異なる攻撃目標に対して同時に作戦が実行される位置から行動を起こす。


 最初の攻撃は伊400型潜水艦より中国人民解放軍飛行場に対して、超低空から侵入する科学爆弾Aの発射。

 数発の科学爆弾Aと呼ばれるミサイルが1秒おきに海中から放たれた。

 伊400型の垂直発射管は、垂直と銘打ちながらも実際は斜め30度に傾斜している。

 打ち出されたミサイルは斜め30度のまま海中を進み、海上に出るとすぐに水兵を保ちレーダーに見つからないように海面すれすれの高度で目的地へと進む。


 そうりゅう型より大型の、この伊400型潜水艦は各種ミサイルによる敵基地攻撃能力を持つことが大きな特徴。

 そしてこの位置からの発射は、一撃必殺の手。


 洋上5~10mをマッハ2で飛翔するこのミサイルは、距離100㎞から打ち出されて150秒で目標に着弾する。

 しかもこのミサイルは通常の円柱型構造の物とは異なり、断面が三角形になったステレス構造を持っている。


 通常のミサイルであっても、中国人民解放軍の防空システムでは、目標物を捕らえることができないのは米軍によるヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領拘束作戦や、イラン攻撃でも明らかになったとおり。

 おそらく人民解放軍はミサイルが目標地点直前で垂直上昇を始めるまで気がつかないだろう。



 急に何かが高い空に向かって上昇する姿を、呆気に取られて見ている人民解放軍の航空整備員。

 そのすぐあとから急に耳に届いた轟音に、ただ事ではないと大声を上げながら防空格納庫に向けて走り出す。

 他の者たちも轟音を聞いて、作業の手を止めて空を見つめたあと、基地に向かって垂直に降りて来るミサイルを見て慌てて逃げ出す。

 空港の管制塔から外の様子を見ていた下級将校が、慌てて走り出した兵士たちを不思議な面持ちで眺めていた。


 そのとき急にレーダー員が悲痛な声を上げて叫んだ。


「直上にミサイル確認!!」


 レーダー員の声に、慌てて管制塔から逃げ出す将校や隊員たち。

 かろうじて残った数人が、地下の防空司令部に連絡を行う。

 しかし誰も連絡に応じない。

 防空司令部も、管制塔と同じ時間に同じようにパニックに陥っていたのだった。



 次々に襲い来るミサイル。

 ドーン、ドーンと地上に落ちた途端に轟音が響き、地下の司令部ではまるで地上で爆発に吹き飛ばされて死にゆく者たちの断末魔の声がその振動の中に聞こえるように感じた。


「ミ、ミサイル防空システムは?」

 第一波の攻撃を防ぐことができなかった防空システムの状況について、管制塔に残っていた将校の一人が部下に確認させた。


「着弾後、システムが反応していていません!」

「地上は、全滅ということか……」


 将校が悔しがり拳をきつく握る。


「む、無傷、です……」

 オペレーターの一人が呆気にとられたように、気の抜けた声で答えた。


 管制塔に残った者たちが、そのオペレーターの所に集まりモニターを囲む。

 なんとそこに映っている画像は粉々に砕け散ったミサイルの残骸がいくつもあるだけだった。


 地上の整備員やパイロットたちが不思議そうにその残骸に集まり、中には部品を蹴飛ばしている者たちもいた。


「ハ、ハハ、ハハハハハ!全部、全部不発弾だと!? そんなことが実際にあるのか?さすが小日本!」

 将校が笑い出すと、他の者たちも「小日本!小日本!」と叫びながら笑っていた。


 しかし、その笑いもすぐに止む。

「ミサイルの第2波来ます!」


「今度は撃ち落とせ!」

 将校が言った。


 緊急対応班の努力によりミサイル防空システムの一部だけは、かろうじて使える状況になったがオペレーターは迎撃不能だと言った。

「なぜ無理なのだ!?」

「こんどのミサイルはマッハ3以上で垂直落下していますので、現システムでは対応できません!」


 あとは不発を祈るだけ。

 しかし希望はあった。

 第1波の攻撃がすべて不発弾だったのだから。

 しかも今度のミサイルは、たった2基しか落ちて来ない。



 ドーン、ドーン。

 立て続けに2発のミサイルが着弾する。


 しかし今度も大爆発は起きないし、炎も上がらない。

 ただ地上に陽炎かげろうが揺らいでいるだけ。


 しかし今度は誰も動かない。

 管制塔でも、地下の司令部でも誰も笑わない。

 2つのミサイルによって起きた化学反応で起こった熱は一瞬にして周囲を数億℃の世界に変えた。


 ミサイルの着弾に時間差があったことで、その反応は地下の司令部にも及んだ。

 航空燃料や爆弾やミサイルに含まれる爆薬は燃えたり爆発したりする前に、既に蒸発してしまった。

 そしてそれは、それを扱う人間たちにとっても同じだった。


 一瞬の爆発のあと、急な熱変化によって強風が起こり、石灰化したコンクリート構造物を砂のように吹き飛ばしていく。


 表面近くにあった細い鉄筋や剥き出しの鉄骨も砂鉄のように風に運ばれて、わずかに残った歪んだ数本の鉄骨だけが突然できた砂漠の中にまるで墓標のように立っていた。

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