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<準備は進んでいる?>

リピウスが霊力に目覚めてから、一年半が経過した。

社会ではいよいよ「能力者」の存在が無視できない話題となり始めていた。


そんなある日、デュークとヨルダ爺がリピウスのもとを訪れた。

いつも通りコーヒータイムを楽しんでいたが、やはり最近のニュースが気になる。リピウスはテレビをつけたままにし、報道番組を何とはなしに眺めながら二人に対応していた。


テレビでは、最近世界各地で発生している不可思議な現象や事件を取り上げていた。

人体発火現象、突発性の竜巻、局地的な水中爆発にビル崩壊、そして街中での大規模爆発。それらの多くは、既存の科学では説明のつかないものばかりだった。


映像を見ながら、三人の会話は必然的にその話題へと移っていく。


「最近、人間界でも増えているよな……。死神仲間の間でも、少し怖いって話が出てきてるぜ」

デュークが顔をしかめ、不安そうな表情で言い出した。


「うーむ。嘉助からも、世界各地で霊能力者絡みと思われる事件が頻発しだしているとは聞いておったがな。どうやらリピウスが言っていた通り、もう隠蔽できる段階ではなくなってしまったのかもしれんわい」


「おいらも東京で霊力爆発の現場近くを通ったんだ。その能力者は、そのまま死んじまったけどな」


「霊力爆発って怖いみたいだね。俺はスンナリ受け入れられたけど、いきなり霊力の封印が解けたりしたら、人によってはパニックにもなるよな」


「そうなんじゃよ。まあリピウスは特殊すぎるがの。普通はなかなか受け入れられんものじゃ」


「いや、俺だって最初、自分の霊気を感じ取った時には焦ったって。なんせ体全体から霊気が噴き出していたんだから」


「でもリピウスは、最初からすぐに霊気を感じ取れたからな。普通は感じ取れないまま能力が暴発して、パニックになるんだよ」


そんな話をしながらも、三人はテレビの内容に耳を傾けていた。画面の中では、コメンテーターたちが持論を展開している。


『――では、超常現象に詳しい科学者の轟先生は、どのようにお考えでしょうか?』

『はい。これは恐らく、地球規模の電磁波異常が関係しているのではと考えています。最近は太陽フレアの活動も活発化していますし、地球内の磁場異常も報告されていますからね』


「あははは! 磁場異常だってよ」

デュークは、真面目な顔をした科学者がなんでも科学的な理屈で解決しようとする姿が可笑しかったようだ。


『――ところで、超能力研究の第一人者である鹿間先生は、これらの現象をどう考えますか?』

『そうですね。私どもは轟先生のように、何でも科学的アプローチで解決しようとは考えません。今回の現象は、最近増えてきたと言われている一種の超能力に関連した「暴走現象」ではないかと考えていますよ』


「お、こいつは結構的を射たことを言ってるじゃん」

デュークは、本質に近い発言をする研究家に好感を持ったようだった。


「今のところ人間界では、最初の科学者が言うように『異常環境下における自然現象』として捉えていることが多いみたいだね。でも、後の研究者が言うように実際に超能力者も出現しているから、徐々にそっちの意見も増えているみたいだけど」

リピウスは最近ずっと関連ニュースを追跡していたため、人間界の反応を冷静に分析していた。


「ところで、霊界の監視員やERIってのは、その後どうしてるんだ?」

リピウスはテレビから目を離し、ヨルダ爺に問いかけた。


ヨルダ爺は、嘉助から聞いている範囲の話を始めた。

嘉助によれば、半年前のヨルダ爺からの指摘を受けてERIと協力者たちの話し合いが進展し、準備は着実に整いつつあるという。

現在ERIでは、協力者たちに対して霊力関連の指導を開始したそうだ。今後は彼らを中心に、新たな能力者たちの教育も推進していく方針だという。


「でも、協力者って霊界専属ってわけじゃないだろう。時間は取れるのか?」

「まあ、取れる者が優先的に受けているという状態じゃの。ただ、嘉助たちは裏で主要国の政府や軍部、警察組織にも接触を始めているそうじゃ。上手くいけば、協力者も動きやすくなるじゃろう」


「へぇ……。隠密主義の霊界にしては、意外な行動だね」

「うむ。嘉助はな、人間界に来て千年じゃからな。それなりの人脈も持っておるんじゃよ」


「「千年!!!」」

リピウスとデュークの声が重なった。


「ほっほっほ、何を驚いておるんじゃ。わしから見れば、あ奴も鼻たれ小僧じゃぞ」

「ヨルダ爺と一緒にすんなよ。その例えはおかしいだろ」

デュークが呆れたようにツッコミを入れる。


「まあ、上手くいっているなら良いけど。霊界の装置とかも提供できそうなのか?」

「とりあえず、能力無効化装置はなんとかなりそうらしいの」

「なあヨルダ爺。能力無効化装置って、普通は義体形態だよな?」


「うむ、霊界で使用しているのはそうじゃ。だが人間界の一般人には使えんから、ERIの研究員が人間用の装置を開発したんじゃよ」

「へぇ……おいらには見当もつかないな」

「何でも、首輪形式らしいがの」


「他にもあるのか?」

「難しいらしいのう。防犯用の結界装置と霊紋識別装置は検討中らしいがな」

「そんなものもあるのか」

リピウスは少し驚いた表情を見せた。

「あるにはあるが、とんでもなく高価な装置なんじゃよ」


「まだまだ難問が山積みのようだね」

「うむ。じゃが、少しずつでも進展はしておるからな。これからじゃて」

ヨルダ爺の表情は、意外なほど明るかった。

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